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サイボーグの憂鬱

2017年03月20日 21:23

生まれたのは、400年以上も前の事だ。
人間の永遠の夢、究極の願望とも言える「不老不死」の研究の過程で産み出された半人半機、
それがサイボーグと呼ばれる存在である僕だ。
最初は人工臓器の実験体だった。貧しい家庭に多臓器不全で生まれた僕が実験に提供された。
両親の顔は覚えていない。物心ついた時には、身体のあらゆる臓器は人工物で出来ていた。
外見は普通の人間と変わりないから、大学院まで通った。
日常生活における問題の有無を20年かけて調べたわけだ。
僕としては他の人間と接すること、社会を知る良い機会だった。
その後、人工臓器等の研究は進み、人間の生活が変わり始めた。
病人や怪我人治療に始まり、やがて若返りの手段として普及していった。
僕の利用目的は、この時期から変わり始めた。
社会の貧富の差が広がり続け、世界人口の1%の富める人間と、99%の飢える人間に分かれていた。
そして、飢える人間たちの爆発的な人口増加が進み、地球という星が衰弱しているようだった。
富める人間は、火星への移住を計画した。この計画は400年前にもあったのだが実現できていなかった。
この時代の計画は、第一次入植にサイボーグが選ばれた。
様々な環境に耐えられる僕たちサイボーグを先に入植させ、環境つくりをするのだ。
サイボーグ耐久性を増すために、人工物で出来た身体にさらに改造が加えられた。機械化だ。
火星でのトラブルに備えて部品を変えるだけで活動を継続できる身体に変えられた。
外見は人工皮膚で見た目は人間だが、既に脳さえも演算装置記憶装置に置き換えられて、
データとして僕の記憶が記録されている。このデータは国の中央電子センターにバックアップされている。
もはや人間ではない。人間が作り出した鋼の傀儡だ。
火星での入植活動は、人間が生きるための水、食料、資材を産み出す環境を整える事だった。
特に水は苦労した、結局は循環型の巨大な施設を作り、光→光合成→酸素 これに水素を化合して水を作った。
この施設が実用レベルに達するのに100年近く掛かった。
地球の状況は酷くなる一方だった。地球コンピュータアクセスして社会状況を調べると、
酷い管理社会になっていた。99%人間が高性能AIを載せたアンドロイドに管理され農作業を強制される。
1%の人間は、中世貴族のような暮らしを毎日送っていた。
地球からは、火星環境の地球化の催促が多くなった。何か悪いことが起きているのだろうか。
結局、火星が小さな地球になるのに200年掛かった。
だが、その頃になると地球コンピュータアクセスできなくなった。
地球からの指示も来なくなった。
僕らは火星の環境を変える為の設備しかなく、地球に帰る事はできない。
火星は僕らサイボーグが住まう星になった。
生殖機能を持たないサイボーグは数が増えることは無い。
新しい身体を作る事はできるが、新しい命を作ることができない。
2名以上の記憶を合成しても新しい命にはならないのだ、一つの身体に二つの自我を押し込むに過ぎない。
僕らサイボーグは、当初の命令を延々と続けることにした。
砂漠だった火星は、今では草原と森林に変わった。
人間が居ない世界には、戦争が起きないのだろうか。静かに日々が過ぎていく。

このデジログへのコメント

  • mina.n 2017年03月21日 07:28

    人間がいなければ戦争は起きないでしょう。弱肉強食ではあるかもしれないですけど。
    サイボーグ同士も争わない気がしますね。

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