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哀しみは雪のように

2011年04月02日 22:33

友人の話し
停電で憔悴した翌日から 小学4年の子供が 
節制・節約生活 (燃料・食料の確保もままならない所以)
お菓子が欲しい 学校へゆきたい(臨時休校)と駄々をこね

地震報道以外のテレビ番組も入るようになった頃
AC提供のメッセージが繰り返し 流れるのをみて
ストレスが溜まってきたであろう子供が
「毎日 同じのばっかりで超飽きたし 面白くない!」と 
被災の報道を茶化し始めたのをみて
初めて 彼の頬をぶったと言ってきた
我が子とはいえ 人を叩くなんてあり得ないと思ってた・・・

後悔でも 武勇伝でもなく ただ 我慢できなかった
とも言った
「正しい!大丈夫 わかってくれる」と 私は言った
(子供が世間の理屈や大人の良識を理解できないのは
 仕方がないけれど あの子 性根は曲がっていないから) 



岩手の避難場所で 父親が見つかっていないと 
淡々と語る長髪の美少女の映像が忘れられない
彼女は 父親の話しのときにはみせなかった涙を 
次の会話で流し始めた

「いままで 自分がどんなに幸せだったのかを 知りました。
 普通に洋服を着られて 温かいご飯が出てきて 家族が一緒で・・・
 私が今までが幸せだったことを こうなって初めて知りました」

正当な要求をして(と信じて) 優しい親にビンタされた子は
いつしか 母の手と心の痛みを知るだろう
今は 自分で精一杯
自分しか 居ない世界なのだろうけれど
本当は 誰しも 生かされていたことに 気がつく



ほぼ実害のなかった秋田に住む 従兄弟の話し
あの日 11日は子供の卒業式
終了とともに 母子は打ち上げ
暇になった午後に 有名チェーン店パチンコをしていたそうだ

と 激しい揺れ
でも 遊戯の最中なので 皆 顔を見合わせて 手を止めない
そのうち 台ごとグラグラしてきて 女性客
「キャーキャー」叫びながら 立ちあがるのを呆然とみていたら
ブチっという不気味な音とともに 派手な電飾が消え 
店員の誘導で店外に
折りしも 晴れていた朝と同じ日と思えないほどの 吹雪
見れば 隣の電気屋も 向かいのスーパーも灯りがなく
広範囲での停電なのだと気がつく
「こりゃ 長引きそうだぞ・・・」
彼は その時点では 近県があんな悲惨な天災に襲われていたなんて 
予想だにしていなかった

あまりの寒さに 取り敢えず車に戻り エンジンをかけて暖を取る
どうせ 1円パチで5000玉くらいしか貯玉もないし 
このまま帰ろうか・・・と思いながらも どこか半端な思いもあり 
かれこれ30分ぼ~と考えていると 運転席の窓ガラスがノックされ
掃除員のような格好の女性が 舞い散る雪の中 立っている

「。。。?」 窓を開けると 彼女が尋ねてきた

「済みません。○ハンで遊戯していた人ですよね?」
彼がうなづくと
停電の様子がわからないので 今日はお引きとり願うため 
中で処理してます。 お店に入ってくれますか?」
彼が了承すると 彼女は隣の車に回りこんでいる
どうやら 車を全て 周る仕事のようだ


言われて 店内に戻ると 長蛇の列
しかも整然としておらず 何がどうなって何故いま並んでいるのかを 
皆が焦り 惑い ついには怒りになってゆくその瞬間に
最後尾についてしまった

並んでどうなるのか
この先が見えない列のてっぺんでは何がなされているのか
何の説明もない 暗く寒い店
電飾もなければ 耳をつんざく派手な音楽もない
店はただのベニヤ小屋で 安っぽく淋しい処

列は 気がついたら 三つに分けられていて 
店員に自分が席を立った台の番号を教えているだけのようだった
それにしても 遅々として 一向に進まない
「何やってんだ~」「いつまで待たせんのや!」
集団が 牙をむき出す

やっと前が見え出した頃 隣の列の爺さんが喚きだす
「おい!おめだ 何してるなや!
もっとテキパキできねか!責任者だせ!先ず説明ないのか!」
慌てて 聞き込みをしていた店員が駆け寄る

そうして その列はまた作業が進まなくなる

そうこうしている内に 問題の爺さんの番になった
スッチーのような格好をしたお姉さんが ニコニコ話しかける
「お待たせしました~」
待ってましたといわんばかりに爺さんは 自分がいくらお金を使って 
いまどんな状態でこうなって待たされているのかを クドクド語る
お姉さんは「そうなんですか~はい 済みません~」の繰り返し

色香が勝つかと思いきや 爺さん マジ切れを始める

「はいはいで済ませるな!客を舐めてんだか!
 フルスペックってどういうんかアンタ知ってるのか!」

姉さん ただ愛想笑い

やっと 地震から二時間 自分の番が来て
暗闇の中 台を確認して 手続きを終える
どんな保証があるのか いつ遊戯が再開されるのかも 説明なし

やれやれ 仕方ない
パチがバレないうちに帰るか・・・


彼は発進してすぐさま 実は大変なことになっていると
ラジオから情報を得る
渋滞は 信号消滅のせいだ
遊んでいる場合ではなかった 
気持ちは焦るが 家路は遠い

家のそばのコンビニに 親子が入ってゆく
もうすぐ家なので 安堵のついでに寄ってみると 
暗い店内は とぐろ巻きの列で
皆がパンやカップ麺を手にしている
慌てて 彼もスープと一個だけ置いてあったカップ麺を手にする
携帯を片手に ワーワー話している人が多い
そういえば 妻子はカラオケ店でどうしただろう。。。。
携帯。。通話はおろかメールさえも送信できない
順が進むと 林檎ジュースが目にはいる
子供の顔を思い それも抱きかかえレジを目指した

コンビニを出た頃には もう17時を回っている
異様な疲れを感じて やっと帰宅すれば
パパー!」と 悲鳴に近い声が
薄暗いリビングの隅っこで子供と毛布をかぶって震えていたのは
いつも気丈な妻の見た事のない表情だった

不安な思いをさせたことを後悔し 
急いで 反射式のストーブを小屋から出し
懐中電灯を二つ 予備の電池をズラっとテーブルに並べる

腰を据えてラジオを聞くと 
宮城岩手は壊滅のようなことを報道している
携帯の電池が少なく しかも 何処へかけても通じない

誰とも連絡がつかず
落ち着かない暗闇の中 じっとしているだけ


漠然と思った


パチンコ屋で 激怒していた爺さん
便乗して 文句を垂れていた若者数名

彼らは 
自分の玉の保証がどうのこうの 責任がどうだの 
寒いだ 時間を無駄にしただの


死者・行方不明者 万を越える 
戦後最悪の哀しみごとに遭って
あんな 喚き方をした自分が 恥ずかしくないだろうか
知らなかったとはいえ あの醜態を取り戻したくないだろうか


同じ穴の狢なのに 彼らの懺悔を憂ってしまった
俺も 一緒だった奴らも いい死にかたはしないな・・・

彼は 漠然と それだけ想ったという





燃料と人力不足
被災地自治体では 一部 土葬に切り替えたと新聞で読んだ
とても よく知っている私の国 日本の報道とは信じられなかった
遺体をそのままにはしておけない 早く埋葬してあげたい
でも 身元確認も進まない
水を飲んで泥をかぶって 苦しんだ方々に敬意を払いたいのに
肉体も魂も 美しく逝かせてあげられない
不眠不休で 現地で走り回っている人たちの
ジレンマと疲労は計り知れない


人並みの募金はできても ただそれだけ
タレントのような 億や何千万の規模の義援金は用意できない

歌で 絵画で メッセージを送れる人はいい
想いを 熱く広く 伝えられる

何もできない 
ただ 祈るだけ

復旧を
復興
皆さんの 起き上がりを



多賀城に住む友人は 建てて5年にもならない家が 流されてゆくのを
高台からみていた

仙台で 女一人 頑張っている友人は アパートが壊滅寸前で
部屋の中は 冷蔵庫が倒れ 中身が氾濫
ライフラインが戻った一週間後 卵や割れた調味料を拭き取り
壊れた家具で 足を怪我しながら 住めるレベルまで戻れるよう
連休を費やしたという


「全部 失ったけれど なんとか生きてるよ~」

多賀城の友人と電話が繋がったときの 第一声だった

東北人は 厳しい寒さに耐えている分 何でも我慢できる?
辛抱強いので 乗り切れる?
一緒の人間に そんな括りは有り得ない。。。。。
寒い 辛い しんどいに 軽重がある訳がない


家族を 
住居・車を 
職場や学校 思い出の全てをなくしても
頑張って 立とうとしている被災地の人たち

引きかえ
保存食に紙製品 ガソリン灯油などの燃料を買占め
無駄な噂に惑わされ 自分とその家族の保身のため
その行為が被災地への援助を遅らせ 日本全体の汚点となり
跳ね返ってくる無用だった波
それが分からない人もおる
頭で理解したとしても 
隣人が並ぶのを見た日には きっと我慢できない

いま
満たされている人が 買占めに走り

色々失くしてしまった身一つの方々は 
歯を喰いしばって祈るだけとは・・・・・

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