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覚書7

2006年03月09日 22:41

彼の家に行って、インターフォンを鳴らしても彼は出なかった。ノブを捻れば鍵は開いてて、とりあえず部屋に入った。
彼はベッドのすぐ脇の床に座って、ビール煙草を持ってた。明らかに荒んだ表情で、あたしが入っていっても表情一つ変えなかった。一瞬視線をくれただけ。こんな態度は初めてだった。

恐る恐る隣に座ってみた。「大丈夫?」って言ったら、ただ無言で睨まれた。それも当然だったと思う、状況からいったら。
「疲れた顔してる」って言った。怖かったけど彼の肩に触れた。そしたら振り払われた。「今踏み込んでくるな」って、手の力とは逆に、すごく弱い声で。
でもその時のあたしは、今じゃなきゃ彼の心に届かないって、そう思ってた。
だから無理矢理手を伸ばした。
支えになりたかった、彼の苦しみをちょっとでも和らげたかった。
でも、それはあたしの奢りだった。彼は泣きそうになって、「もううんざり。好きにさせろ」って部屋を出て行った。どこ行くのかわかんなくてあたしが止めたら、シャワーを浴びる、って。
多分、風呂場で泣いてたんだと思う。出てきた後、目が赤かった。

戻ってきた彼はこっちを見てくれなかった。やっぱり駄目なんだ、って思った瞬間、あたしは無理矢理彼にキスしてた。
鳩尾を蹴られた。口に指を突っ込まれて声も出なかった。その指を噛んだら、あたしの上から彼が退いて、部屋から出て行った。
その後、メールが届いた。
「俺のいない間にさっさと帰って」
結局あたしは、彼の気持ちを引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、何もできなかったんだなと思ったら涙が出た。
その時、彼のレポート用紙をちぎって、手紙を書いて帰った。これを読まなくても、読んでも、彼の気持ち次第だと思いながら。

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