いちまんごせん

バイトが終わり、帰路を辿っていたときのことでした。
大通り沿いに自転車を走らせていたのですが、前方にある店の前に数人がたむろしています。
そこに近づくにつれ、様子がだんだんと鮮明になってきます。
座り込んでる女性二人と、その前に立つ男性が一人。
背にしているのはスナックだかパブだかよくわかりませんが、そんなような店でした。
よく見れば二人の女性は水商売っぽい格好をしています。
男性のほうはおじさんですが紳士というわけではなく、かなり野暮ったい印象で、女子高生の前に突き出したら「キモイ」とか「ゲロ」とかの罵詈雑言を際限なく浴びせられそうな印象です。

明らかに妙ちくりんな光景です。
お店中ならば異空間なのでそんな組み合わせでも違和感はないのですが、店外でそれは考えがたい。
いったい何をやっているのか興味のわいた俺は速度を落として、やり取りを覗こうとしました。

男性が二人の女性にケータイを開いて見せています。そして、
「お願いします！」
「いくら？」
この二言を狂った機械みたいに繰り返しているのです。
それを困惑顔で見上げる女性たち・・・。
うん、納得がいきました。完全に憶測ですが。

ケータイでホームページにアクセスして、クーポン画面を表示。それを見せることのよって割引が受けられるというサービスがありますね。
このおじさんもクーポン画面を見せているのですが、使用期限が切れていて二人は困惑。しかしおじさんは図々しく、お姉ちゃん安くならんかい？ということなのでしょう。

そうではなく・・・。
あの店のコンパニオンは金を積めばやらせてくれるという情報がメールかなにか飛び交っているのでしょう。
おじさんはそれを見せて「いくら？」と聞いているんですよ。
いかがわしいですね。

まあ勝手な想像ですが、やり取りを聞いた限りでは否定しきれるものではありません。
実際に女性たちがうわさ通りの行為をしていたとしても、それに乗っかってしまっては買春ですよ。犯罪です。
売春もまたしかり。

売り買いといえば援助交際が思い起こされます。
いつの頃であったかは思い出せませんが一時期非常に話題に上がっていたと思います。
今は耳にもしませんが、水面下では行われているのでしょう。

以前、バイト先の後輩と話していて、経緯は忘れましたが援助交際の話になりました。
何でも中学生時代、彼女の周りでは援助交際をやっていた人が数人いたそうです。
話を聞いて、中学生の時点でそんなことやる奴がいるんだ、と面食らいました。
しかし聞いてしまったからには引き下がれません。内容はどうでもいいですが、レートについては気になります。そこも聞いてみることにしました。
さぞかしエロオヤジどもから巻き上げていたに違いありません。

とりあえず低めに見積もって探りを入れてみます。
「３万ぐらいが相場かな？」
「え、１万５千っすよ」

いちまんごせん？
安っ！！

その時の驚愕具合を特大フォントで示したいのですが、残念ながらできません。
デートだけとか、挿入禁止での値段ではありません。
本番ありでこの値段です。
頭おかしいんじゃないかと思いましたよ、もう。
大衆店のソープより安いじゃないですか。
驚きですよ。

援助交際をビジネスとして考えた場合、その価値は中高生というステータスにあります。
こればかりはどこの風俗店に行っても得ることはできません。
それ以前に得てはいけません。
ですから、援助交際は性に金を出すというよりもステータスに金を出すという意味合いのほうが強い。
非売品にプレミアがつくようなものです。
しかも非合法ですから、売る側も相応（と言ってはいけないのですが）の金額を請求できますし、買う側もそれを承知で手を出すものではないのですか？
それがなんで１万５千円なんですかね。
思わず財布の中身を確認しそうになるじゃないですか。

売買春は犯罪です。
それでもやる人はいるのです。
絶対にやるなとは言えません。俺は説教できる立場にいませんし、言ったところでやる奴はやりますから。
ただし、なめた真似するならなめた金額を要求しろ。ふざけた金額を払え。そう思います。

どうあっても立場が弱いのは女性側です。
男性は性病と発覚の心配をしていればいいのですが、女性はこれに加えて様々な暴力の危険性に晒されています。
リスクを背負うのですから、せめてもの保険策として相手に金額のリスクを課すのは当然ではないですか。
それなのに、遊ぶ金欲しさ以外にも理由はあるかもしれませんが、１万５千円は破格ですよ。
何を思ってその金額にしたのかは定かではありませんし、モラルに照らし合わせるならば嘆かわしいことです。

しかし、上手くない。
やるならもう少し要領よくやれよ、と思ったいつかの日のことでした。