日本が軍隊を持つ日も近い

「ハーバード白熱教室」が、ＮＨＫ教育で放送されたのが２０１０年４月だった。それ以後、日本国内においてあのマイケル・サンデル教授が日本で授業を行いそれが放送された。３・１１のあとと２０１２年２月の「お金で買えるもの買えないもの」である。
　ハーバード大学の講義と日本でのものとは、質的に異なる。受講者の反応が違うのがその大きな原因である。日本のではどうも反応が遅い。いくつも答えを用意し、失敗をおそれているように見える。それが反応を遅らせ、議論を深化させない原因のように見える。　放送された１０回分をベースに本なった『これからの「正義」の話をしよう』にも出てくる軍隊の話がある。軍隊を維持するため兵隊が必要である。この兵隊を確保するためには、徴兵、志願兵、傭兵のどれかの手段が必要である。たぶんサンデル教授はここに持っていこうとして、古田敦元ヤクルト監督に振ったのだと思う。「あなたの子どもを軍隊にださなければならなくなったときどうするか」と。しかし、古田氏はこの問題を、日常的でなく想像しにくいと答えた。その時、猪瀬東京都副知事が「福島原発事故があったが、現場に行くという問題と同じではないか」と例えをだした。しかし、自分の子どもをだすかどうかについては言及しなかった。
　古田氏の荒唐無稽で答えられないとした態度にも不満であったが、猪瀬氏の例えをだしながら自分はこう思うと発言しなかったことにも、逃げていると感じて釈然としなかった。なぜなら彼は、領土問題でも多くを発言しているからである。
　２月２４日だったかのＡＢＣ放送のモーニングバードという番組で、沖縄の基地問題を取り上げていた。日本にある米軍基地のうち沖縄にあるのは７０％。そのうち、陸、海、空、海兵隊のうち、攻撃専門の部隊である海兵隊が８０％を占めているという。この海兵隊を、対中国政策としてグアム島等に分散するのが最近のアメリカの戦略だという。そして驚くべき事に、決定権のあるアメリカ議会は、世界一危険な普天間から、辺野古への移転は無理と考えているというのだ。では、日米政府が、辺野古への移転で一致しているというのは本当なのか。同番組のテーマはここにあった。
　２月２６日、のだ総理大臣が沖縄入りする。それに先立ち沖縄の知事経験者が琉球新報のインタービューに答えている。大田昌秀氏は、在沖米海兵隊の岩国移転が報じられた際の政府の対応について「岩国が反対すると日本政府はすぐに引っ込めた。しかし沖縄がいくら反対しても基地を押し付ける。構造的差別だ」と政府の不当性を非難し、「県民感情を軽く見たら安保そのものが危うくなる」と指摘した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120226-00000000-ryu-oki
　日本政府は、日本に海兵隊がいて欲しいと思っている。軍隊を持たないが故に、アメリカの核の傘のもと、海兵隊を抑止力として利用したいのだ。アメリカ政府は、思いやり予算として金が入るから悪くないと思っている。両者はそういう関係だったのだろう。
　２月の始めに、米軍再編修正を模索＝グアム、普天間切り離し協議か、というニュースが流れたとき、何か変だと思ったが、こういう事だったのかと妙に納得できた。日本政府の独り相撲なのだ。国防・安全と言うことで日米が一致しているのではなく、日本は国防・安全であっても、アメリカはマネーだったという事である。
　さて問題はここからである。アメリカにその気がないのであれば、いよいよ日本は我が身を自前の軍事力で守らねばならなくなる。軍隊を持つということであるし、憲法の改正である。古田氏の荒唐無稽というような事ではない。勇ましいことをいう人が多いが、軍隊が我が身に迫っていることが判っているのだろうか。古田氏のような人があのように発言するのだから、国民の多くは殆ど気付いてはいないのでないだろうか。
　憲法を改正し、軍隊を持ったとき、兵力をどのように調達するのか。雇用を創出するために軍隊は便利である。志願兵制度をとっているアメリカでは、職にあぶれた人・シングルマザーが戦地に行っているという。日本も、職のない若者が志願する確率は高い。貧困層であるが故に、生命の危険にさらされるのであるから、それは一種の差別である。
　誰が何を守るために血を流さねばならないのか。流すだけにとどまらず、命を絶たねばならぬ事になる。話しが飛躍しすぎというなかれ、世の中はいけいけどんどんのトレンドにあることが恐ろしい。