なくしたものは・・

何もない事が、当たり前のように過ぎていく。
平凡という名の人生に、いつしか慣れていった。
若い頃の熱意や野心は、時とともに覚めていき
今では夢の中の別の人生として育っていく。
運命というものはいつしか突然狂う事もあり
当たり前のようにそこにあったものを
奪っていくこともある。
なくしたものは、いつもなら当然のように
そこにあり、
言葉がなくても心が通っていた、
そんな事さえ、今頃僕は気付いた。
なくしたものは僕の心に
ぽっかり穴を開けていった。
なくしたものは僕に
涙というものを蘇らせた。

ぽっかり開いた胸の空洞の先には何も見えず
過去へ過去へと戻りたがる自分がいて
現実を受け容れられない僕の心は
目の前のコーヒーが冷めているのも忘れさせている。
平凡だけがあればいいと、いつから思うようになったのか
ぬるま湯に浸かったままで
そばにいて当たり前の君をのんびり眺めているのが好きだった。
なくしたものは僕に向かって笑った笑顔
なくしたものは僕のために泣いた涙
なくしたものは、なくしたものは、なくしたものは・・・
未来に向かって生きる気力