お花

家の近くにとっても可愛い猫がいました。その子のお家はマンションの一階の隅の段ボールでした。その中には毛布が敷いてあり、中にはおもちゃのぬいぐるみも入っていました。
ちょっといかつい感じの管理人さんに毎日ご飯をもらっていたり、天気のいい日には、マンションの住人のバイクのサドルでひなたぼっこをしたり、向かいのラーメン屋さんのアルバイトのお兄ちゃんに体中なでられて、ちょっぴり迷惑そうな顔をしながらもじっとしているような人なつっこいみんなのアイドルでした。

その子が一昨日死んでしまいました。

管理人さんがしたであろう張り紙には一昨々日死んだということと、短い間でしたがたくさんの愛をありがとうという感謝の言葉が綴られていました。
段ボールがあった場所はきれいに片づけられていて、まるで最初から猫なんていないと言わんばかりの空虚な空間になっていました。


今朝、段ボールがあった場所にきれいな花束が置いてありました。新しい張り紙には「お花をありがとう。天国であの子もきっと喜んでいます」と書いてありました。

昨日は空虚な場所であったところに、あの子がいた時と同じような暖かく優しい空気が漂っていて、心に明かりがぽっと灯ったような気がしました。