週末　少女　2題

・・歯科医院で

土曜の朝早く、小さな歯科医院にいくと
待合室に少女が座っていた。

目をつむり、イヤホンで音楽を聴くうちに
腕があがり、手がなめらかに表情ゆたかに動き出した。

バレエ？体操？スケート？？？？

医師の妻が私ではない名を呼んだ。

彼女の目の前で手を振って、少女に知らせた。

イヤホンをはずし、
バッグを持って診療室へむかう少女が
私を振り返って微笑んだ。

一瞬、彼女が片足を後ろに下げて膝を折ってお辞儀をするのではと思ったけど、

ブリッジをした歯でこぼれる笑みと結い上げた髪の細いうなじの記憶だけ残して彼女は診察室に消えた。


・・公園で

公園を横切ろうとすると、
隅の木陰にしゃがんだ若い女性が
笑いをこらえながら向こうを
うかがっている。

歩み続けると、
小さな少女が公園中央の物陰を
走りながら覗いている。。
半べそになる寸前で、

先ほどの女性の視線を背中でさえぎって、
少女に小声で告げた。

「あっち！おかあさんあっちに隠れてる」

背中で少女が走る足音と、
歓声、、それから泣き声に
母親の笑い声がからまった。。。

日曜の夕暮れ。