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beloved 2

2018年10月02日 09:36

beloved   2




この関係は、始まりも終わりも歪んだ心が行き先を決めているに過ぎない。

歪んでいても、『好き』という感情に支配され、無責任にもなれたりする。


蛍はいつも時間に追われていた。
仕事に家事に子育て
一見、子供がいるように見えないくらい、生活感のない女だったが、9歳になる女の子が居ると聞いた事がある。

「鍵を持たせたらね、
ちゃんと留守番するのよ。
大人になった気分らしいの。
私もだいぶ助かってる。
こうして、自分の時間が出来たわ」


「9歳で留守番か……
偉いな」

「偉いけど、可哀想。
可哀想だけど仕方ない。
私だって、こういう時間がないと、優しくなれない。
生き甲斐がないと…
やってらんないわ」

「蛍はよくやってるさ」

「やるしかない環境だからよ。
私が一番似合うのは専業主婦なんだけどな…」

君は珈琲を飲みながら、
愚痴と弱音を少しだけ吐く。

俺は、仕事柄、管理職を任され、来る日も来る日も部下になる者の教育をしてきた。
愚痴や弱音を吐かれても、流せる体質。

ほぼ毎日、はっぱをかけたり、怒鳴ったり、教えても成果の上がらない部下の面倒もみてきた。
時に、嫌われたり、憎まれたりしながらも…

『鬼の杉下』と陰口も叩かれているのは、知っている。


上司になれば部下に厳しくしながらでも、仕事を教えていくもんだという、使命感から鬼にだってなった。

嫌われても憎まれても仕方ない…って。
その仕方ないの諦めの心が、いつしかストレスにもなっていた。

だからかな…
せめて君の前だけは、物分かりのいい、カッコイイ男を演じていたかった。

君はどんな俺でも褒めてくれた。

「人を指導するってさ、
選ばれた人間の使命だよ。
その人達の成長は、哲朗さんの成長と飛躍も兼ねてるんだよ。
私みたいに鈍臭い部下にも、諦めないであげてね。
見捨てられたら、行き場失うから」

君は自分に言い聞かせてるみたいだった。
君は自分を不器用と言う。
不器用ながらにも、一生懸命な可愛げのある女に見えた。

「蛍が部下だったら、
少しは楽しくなるかな?
俺、仕事嫌いだし、部署の異動願いを出しても、希望も通らない。
毎日、何してんだろ?って思ったりするんだ」

「私が部下だったら、
甘えるよ。
退屈しないくらいにね。
あなたが鬼になる暇を与えない」


「仕事じゃ、甘えさせないけど…
仕事が終わったら、思いきり甘えさせちゃうかな?
エッチになったりね」

「して欲しいかな。
仕事では鬼でも、私の前では…」

君のそんな言葉に癒されたりした。
鬼にも休息が必要だった。

あの日、ベッドで裸になった君を、もっともっと好きになってしまっていたんだ。



あの日は…
君が見たいと言っていた博物館に行った帰り道、昼飯に少し有名なラーメン店に並んで、君と隣り合わせで食べた。

「汗かきなの。
だから、私は冷やしつけ麺にする。
汗かいて、お化粧落ちた顔は見せたくない」

そんな君は、食事の後に、本当の素顔を見せてくれた。

行き着く先は、ホテルだった。
ただ、並んで手を繋いで歩いても、
俺は、そういう事で頭がいっぱいだった。
だから、勇気を出して君を誘ったんだ。


「蛍…二人っきりになりたい」

蛍は俯いて、顔を赤らめた。
君の返事は分かっていたよ。


不倫の恋の落ち着く場所の行き先なんて…
決まってるもんな。

そこが一番安心出来て、
素直に曝け出す場所になってしまうんだ。

落ち着きたかったよ。
人目なんて気にせずに、君を好きって言える場所に。

暫くは、ソファに座ったまま、世間話をしていた。

緊張もしていたし、いきなり押し倒すほどゲスな男でもない。

そういう関係になるのに、今更焦らなくても良かった。

不倫もお互い、初めてではない。
それも、会う前のやり取りで話した。


「なんかさ、張り合いが欲しいんだよね。
毎日、退屈に生きてるんじゃなくて、
この人が居るから、イヤな事も乗り切れるみたいな?
まぁ、心の支え的なもん」

蛍もそんなものを求めていた。

出会い系でのプロフィールも、
目を惹くものがあった。


ヤリ目とか興味なし。
私がヤリたくなるくらいの男と出会いたい。
ガツガツしているなら、他を当たってね。
こっちがガツガツしたくなるような人を募集中

まずは、メールなどのやり取りが出来る人。
会いたい気持ちになってから、会える人。
すぐにガッツキの品のない人は不可。
こういう関係にも礼儀はあって欲しいから。
太めの方もご遠慮します。

強気メッセージと条件が書き込まれていた。



「会ってみて、すぐ帰りたくなる人だったら、お互いに無駄な時間になってしまうわ。
あんなプロフィールなのに、哲朗さんはよく私を見つけてくれたわ」

最初に会った日、蛍はそう言いながら笑った。

「数打ちゃ当たるくらいで、男はメッセージを送るんじゃないの?」

「かもね」

「俺は蛍と一緒。
この広い世界に、たった一人でいい。
俺が、会いたいと思える女に、出会えたらいいな?くらいの期待しかなかった。
数を打っていたわけでもなく、そこまで飢えてもいない。
登録したら、日課みたいに見るじゃん。
蛍にメッセージを送った時は、インスピレーションが赴くまま行動に移しただけ。
そしたら、出会えた」


多分、同じ気持ちだったから、
引き合わされた。

そんな縁だってあるさ。


博物館、一緒に行けて良かった」

丁度、古代遺跡恐竜展が開催されていて、蛍が行きたいと言っていたから、二度目のデートに誘う口実にしたんだよなぁ…

「うん」

「哲朗さんと行きたかった」

「あぁ、俺、そういう系好きだよ」

古代の神秘に憧れちゃうわ。
恐竜が好きなの。
なぜか分からないけど、小さな頃から。
図鑑とかよく見ていたわ」

へぇー」

「何で、滅びたか?
って、いろんな説があるわ。
隕石が落ちただの、氷河期がきたからだの。
でもね、便秘説もあるのよ」

「マジ?」

「マジです。
草木がなくなって、恐竜便秘になって死んでいった説」

「嘘っぽい」

隕石氷河期も、実際には、確証ないわけじゃない。
なら、いろんな説があっても面白いわ」

「まぁね」

「私が解明したかった」

「えっ?」

「もっと頭が良かったら、考古学を勉強して、世界中恐竜の発掘をして、謎を解明する研究をするわ。
地味に、ずっと掘り続けるの。
そしたら、無意味なものに興味を持たなくなるわ」

「意外な事、言うんだな」

「頭が悪かったから、今の人生が巡ったのよ。
今を生きる為に、這い蹲る人生がね」


蛍は、言葉に重みのある女だった。

簡単に言えば、
『今を満足してません』
とでも言いたかったのだろう…

不思議ちゃんぽいところも、また彼女の魅力だった。


「じゃあ、俺を解明してく?」

「哲朗さんを発掘しちゃう?」

バカだな…
こんなやり取りも楽しかった。

キスは不意打ちがいい。
蛍の不思議ワールドに流される前に、
ちゃんと、此処に来た目的を果たさないと…

照れる蛍を抱き寄せ、
唇を重ねた。

この唇にキスがしたくて、
沢山したくて…此処に来たのだから…

目を閉じて応じる蛍の唇を割って、舌を差し込み、大人のキスに発展させる。

「うっ…うん」
短い喘ぎと共に応じる蛍。

フワッとした唇の感触を何度も味わう。

キスをこんなにしたのは…
どれくらいぶりだろう?

既婚者浮気に走る奴の言い訳の一つには、こういうキスに飢えてしまったからじゃないのか?

なんて、頭の中でぼんやりとそんな事を考えたりもした。






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