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beloved

2018年09月30日 09:57

beloved




開店して間もないデパートの屋上。
そこには小さな子供が遊ぶ為のミニ遊園地がある。
休みの日などは賑わうのだろうが、
平日に当たる今日は、人も少なく、ただ、乗り物の音楽が流れているだけで、寂しい風景になっていた。


天気も曇り空。
やや、グレーの景色に包まれ、
今にも落ちてきそうな雨の心配もする。
すっかり涼しくなり、秋の気配を感じさせる今日この頃。


彼女とここで落ち合う。

ミニ遊園地の乗り物近くのベンチで待つ彼女

『あの場所に居ます』
とメールが入る。


彼女と会うのは10年ぶり。
別れてから10年の月日が流れていた。



彼女との想い出を頭の中で回想しながら、
この場所にやって来た。

彼女の指定した場所は、
俺たちの思い出の場所だった。


あの日を振り返ると、
幸せな気持ちにもなるな…

もう、すっかり日が暮れて夜を迎える頃だった。
ミニ遊園地には、子供の姿もなく、
係員は、背中を向けて閉園前の片付けをしていた。

季節はちょうど今頃。
涼しい風が吹き始め、
短めの彼女ワンピースから見える、健康的な脚にドキッとしたもんだ。
細すぎず、太すぎず、筋肉のつき方も程よい。

あのベンチに二人で並んで腰掛けて、
夜景を眺めた。

夜景といっても、ビルが立ち並ぶ都会の見飽きた景色。
灯りがともり始め、まぁ、それなりのイルミネーション代わりにはなった。

ただ、この景色を彼女と見る事に意味を感じた。

初めて会った彼女に、既に心奪われていた。
ムードのある場所を探したら、
ここに辿り着いた。

歩いていて、今日の最後に夜景を見ようなんてノリだったし、彼女が帰る時刻も迫っていたから、行き当たりばったり的な選択に過ぎなかったが…

あわよくばキスがしたいなどと、
下心もあった。


俺は、スーツ上着を脱いで彼女の膝にかけた。
彼女はびっくりしながらも微笑み、

「あったかい」
一言呟いた。

大分、肌寒くなってきたから。
それに、見えちゃうぞ。
蛍の脚、誰にも見せたくない」

「うは…やだぁ…哲朗さん。
優しいね」

彼女は照れ臭そうに笑った。

「男は変なとこで嫉妬するんだ」

こんな気持ちも久しぶりだった。
隣に居る彼女(蛍ほたる)に愛しい気持ちがこみ上げた。

「嬉しいな。
嫉妬されるの、久しぶり」

そんな可愛い返しをしたから、
唇を奪った。

フワッと伝わる柔らかい感触。
さっき食べたチーズケーキの残り香なのか?
その唇に甘さを残していた。
蛍もその時を待っていたかのように、
キスに応じる。

唇が触れるだけの、
チュっという、ニュアンス的なキスなのに、
ドキドキしたんだ。

蛍との初めてキスを交わした場所。
別れてからも、この時のあの光景は忘れたことなどない。

きっと、蛍もそうだったんだよな?



あの日から、俺は蛍の唇の虜になった。
蛍は、全体的に彫りも深く、目、鼻、口とパーツがしっかりとした顔立ちをしている。

黙っていたら、キツイ女のイメージなのに、
くっきりとした二重瞼に大きな口で、
ニコッと笑う可愛い感じの女だった。

例えるなら、上品になりきれないペルシャ猫。
穏やかな口調で話すし、トーンも柔らかい。
せっかちな男だったら、焦れったくなるかもしれない程、ゆっくり話すマイペース型。

多分、俺はそのギャップにやられたんだ。
元々、好みの顔だった。

会う前に、メールアドレスも交換し、互いの写メなども交換した。

会うに等しくない場合は、この交換で返信を辞めていただろう。

ドキドキしながらの交換だったが、互いに写真上は気に入ったみたいだ。

むしろ、互いに好みなどといい、会いたい気持ちが加速してしまったんだ。

イメージを覆されるのが怖かったが、
実際に会ってみたら、益々、惹かれてしまうほど魅力的な女だった。


ヤバイ…


そう思ってしまうのは、俺達の出会いは、決して綺麗なもんじゃないから。

汚く言えば、不倫相手を探す、出会い系サイトのネットでの出会い

要するに、そういう相手をお互いに探していた。


言い訳をするなら、熱心に探していたわけでもない。
ピントの合う、相手に巡り会えたらいいなくらいの感覚。

俺は、プラトニックな関係でも十分楽しめた。
息抜きに異性とメールでも交換するのもよし、セックスをして男女の関係になるのもよし。

ただ、それが楽しめる女という、拘りだけを持ち続け、妻が居るのにそういう事を繰り返す、俗にいう、ろくでなし男の典型が俺。


不倫の相手を選ぶにもさ、
やっぱり、好みを裏切らない女がいい。

いつしか、そんな風に現実逃避を繰り返しながら、そういう女を求めた。

この広い世界で、妥協して、アッチの方だけ楽しむなんていうのも、虚しさを感じる。

『抱きたくなるほどの女』じゃないと、
つまらないとすら思う。


すっかり擦れてしまった心に、
癒しを求めた。
本気の恋は出来ない中で、
淡い思いを取り戻したくなった。
妻を裏切り、最低な男に成り下がって、
罪悪感と嘘で塗り固めた世界の中で、
『それでもいい』って思える程の逃げ道が欲しかった。

不倫をする人間は最低だと非難されても、
それを承知でする人間は沢山居る。

人それぞれの言い訳を抱えて、
伴侶裏切りながらも、その世界にのめり込む狡さを蓄えながらしたたかに生きる。

その狡さを知らない人間の方が、よっぽど幸せに生きているはずだ。

知らなくていい世界など、
興味本位で足を踏み入れるもんではない。


踏み入れたら、もっと狡くなる。
そして、最低な人間の一歩を踏み出す。
疚しい関係だからこそ、山ほどの言い訳を考えるのだから…

蛍と会っている間は、自分が男だという事に再確認出来た。

淡い思いで胸をいっぱいにして、してもしても足りない程、唇を求めた。

その先の期待を胸にしまい込んで、唇を重ねて罪悪感を吹き飛ばした。


名残惜しくても、
こういう関係には、お互いに許された時間という、制限がある。

独身の男女とは違い、そういう時間があるからこそ、切なさを一途を辿り、のめり込んでしまうのかもしれない。

現実逃避している癖に、より現実的にお互いの立場を理解しながらでしか、この関係は成り立たないのだから。

東京駅発、19時20分に乗らないと」

「駅まで送ってくよ」

「有難う」

キスで盛り上がっても、夢の時間はいつか終わる。

「楽しかった」

「俺も。
また、近いうちに時間を作ろう」

「えぇ」

手を繋ぎエレベーターに乗って、下へと下り、帰る時間を気にし始め、夢の世界から現実に帰る寂しさが募る。

エレベーターの中は、ラッキーな事に二人きりとなった。時間を惜しむように、唇を求め合った。

こんな情熱的なキスすら、蛍に出会うまで、忘れ掛けていた。

だからかな…

また、君に会えるというのに、懐かしい思いが巡るばかりだ。

心は、君と重ねた想い出を遡ってドキドキが止まらなくなる…



君と別れてからは、
いつもに戻っただけだった。

君との思い出も、
頭の片隅に追いやった。

それでいいと、
自分に言い聞かせ、納得させた。


蛍、

君は太陽のような女だった。

近づくと身も心も焼け尽くすような熱さを、外見では微塵も見せず、それを心の中でフツフツと燃やし続けているようなリスキーな部分も兼ね備えていた。

あのままだったら、いつか俺は君に焼き焦がされてしまっただろう。

それが怖くなったんだ。

だからだね…
君を思い出すと胸が熱くなる。



そんな君にもうすぐ会える。


会いたいと思ったから、
今日、ここに来たんだ。






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