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Moment No.26

2017年11月04日 23:10

Moment  No.26

…誠side…


よし、切り抜けた。
僕はそう思った。
ホテルを後にして別れを告げる。

「じゃあ、またね、連絡するから」

「誠さん、あの…」

「何?」

と言いながら手を握り、とびきりの笑みを見せた。


「ありがとう、楽しかったわ」

「僕もだよ、またね」

美穂さんは泣きそうな顔を隠し微笑み、小さく手を振った。
僕は逆に元気に笑って手を振った。

辛いのは分かる…
好きになればなる程辛くなる。

僕だってそうなんだから…


寒さが突き刺さる真冬の夜、現実がヒタヒタと僕の胸に突き刺さった。
僕はまだこの時、美穂さんの本当の気持ちを知らなかった。
いや、聞こうとしなかっただけだった。

家に着き暫くすると、美穂さんからメールがきた。

恐る恐る、それを開ける。



『誠さん

さっきはありがとう。

あなたと過ごす時間はまるで夢のようであっと言う間。

居心地が良くてずっと一緒にいたくなる。


だけど…現実に戻る時がきました。』


この時点で、僕は身体が震え出した。
胃を押されるような思いで先を読む。

『私はあなたが好きです。

好きだけど一緒に過ごすわけにはいかないし、生活する事もない。
最初はほんの少しの許された時間だけを楽しめば良いと思ってました。

あなたの癒やしになればと…
だけど恋とは貪欲であなたを思えば思う程、私はあなたを欲しくなる。

心は嘘はつけない。

実は離婚を考えてました。』



正直、離婚という言葉に驚いた。


『でも、あなたの息子さんの怪我であなたには大切な家族がいるって改めて感じたんです。
私達はどんなに惹かれ合ってもほんの少しの時間を共に過ごす事しか出来ない。
あなたの生活に入り込む事も関わる事も出来ない。
これが現実
この先も接点なんてない。

実は年末から主人が心臓があまり良くなくて入院したりして…改めて家族の大切さを感じました。
今、主人を一人には出来ない。
私が支える相手はやっぱり主人なんです。
今日話そうと思いましたが優しいあなたを見るとやっぱり言えなかった。
ごめんなさい。』


僕はバカだ…

美穂さんはこれが言いたかったんだ。

更に続きがあった。



『誠さん、お互い家族の所に戻りましょう。
誰も傷つかないうちに、終わりにしなくちゃ。
私は十分過ぎる程あなたに愛をもらいました。
いい夢をみました。そろそろ目を覚まさなきゃね。
これからはそれだけを胸に秘め、現実で生きていきます。


本当にありがとう。

あなたのお店の成功を祈ります。
そしてあなたの幸せを誰よりも願っています。
さようなら、誠さん 』


さようならの文字がドスンと頭に落ちた。

初めて、美穂さんの向こう側の苦しみを知った。
僕が目を背けていた現実に美穂さんは独りで苦しんでいたんだ。

情けないヤツだ。
自分のベッドにドスンと座って頭を抱えてしまった。


ああ…僕は振り出しだ。


何にも変わっちゃいない。

いつもこの小さな部屋で一人なんだ。


美穂さんはご主人の所に戻ったんだ。
僕じゃなく彼を選んだ。
そして僕も彼女を受け止める器ではない。
そうしたくても出来ないんだ。


悔しくて

もどかしくて

悲しくて

切なくて

寂しくて


やっぱり悔しくて…



でもいつかこうなる事は分かってた。
分かってたけど、今日とは思わなかった。
先のない恋の結末は、誰だって分かる。

たとえバカな僕でも…


でも、まだ…


美穂さん…


僕はあなたが愛しい。



イヤだよ!


僕は美穂さんが必要なんだ。
たとえ、一緒にいる時間がほんの僅かでも、僕にとっては一番安らぐ時間だった。
美穂さんが笑ってくれるから、優しく言葉をくれるから、
僕にこたえてくれるから、僕は頑張れるんだ。


生きていけるんだ。


イヤだ、イヤだ、イヤだ!


その晩は駄々っ子の子供のように荒れ狂っていた。





翌日最悪な顔で迎えた。
慌てて美穂さんにメールする。


『美穂さんおはよう!
昨日のメールで美穂さんの気持ちは分かりました。
ご主人が大変なのは知らずにごめん。
あなたがこんなに苦しんでいたなんて気付けず自分が情けない。

だけどやっぱり会って話し合おうよ。
決めるのはそれからでも良くない?

僕にはあなたが必要だ。
あなたが僕の生活に入り込めなくても、あなたはもう僕の生活の一部だ。
心はあなたを中心に動いている。
だから…今日は無理でも日を改めてに会えないかな?
ちゃんと、ちゃんと納得行くまで話そうよ』



二回読み直して送信した。





すると暫くして、返事がきた。


『誠さん、これ以上苦しめないで。会ったら、やっと決意した気持ちが揺らいでしまう。
だから、お願い、このまま…さようならを言わせて下さい。
身勝手な私をどうか許してね 』


どういうことだよっ!


こんな一方的な別れ方ってあるかよっ。
行き先のない僕の気持ち。


腹立たしくて、テーブルを拳で思い切り叩いた。


いてっ、


テーブルに亀裂が入り、拳から血が滲んでた。


僕の胸はもっと血が滲んでる筈だ。


パパ~」


雪が呼んでる。


「ああ、起きたよ」


聞こえるように叫んだ。
我が家は何事もなく一日を迎える。
僕のこの拳と胸の内以外は…



美穂さんとはその後、電話もメールも繋がらず、そのまま輸入高級スーパー開店となった。


店内は活気に満ち、上々だ。


あんなに愛し合っていたのにさようならのメールで終わりだなんて、なんだかキツネに抓まれた気分でスッキリしない。
こんな晴々しい日なのに、僕はモヤモヤとしていた。
店の前には沢山の祝いの花が並んでいる。

その花の中に、馴染みない店の名前があった。


セレクトショップシアン


ん?


「おい、裕司の知り合いの店か?」


「いや、知らないなあ」



僕はピンときた。
美穂さんだ。間違いない!
慌てて、携帯でその店をチェックした。

セレクトショップで働いてるのは聞いていたが、場所は曖昧だった。
でも、居ても立っても居られなかった。


ここに行けば、美穂さんが居る。

会えるんだ!


場所を確認したら自転車で行ける距離だ。
都内を走るならタクシーよりこっちの方が早い。


「裕司、悪い、ちょっと出掛ける」


「はあ?」


裕司の返事も聞かないで、事務所所有の自転車に跨った。


「すぐ戻るから」


僕は美穂さんの店に向かい漕ぎ出した。

美穂さん、僕はこのままお別れなんてイヤだ。


必ず会って話しをしなきゃ、納得いかない。


逸る気持ちを抑えながら、美穂さんの店に辿り着いた。










このウラログへのコメント

  • 里織. 2017年11月04日 23:19

    ホントに別れちゃったのかな…

    メールで一方的は淋しすぎます…

  • Maz 2017年11月05日 02:20

    メールで一方的に別れを告げる…
    10年付き合って別れも告げられ無かった私…
    どちらがいいのか考えてしまいました。
    一方的でも告げられた方が後々前に進める気がしますね。
    本当に別れてしまうのかな?切ない

  • おりんさん 2017年11月05日 05:23

    婚外恋愛の成就を願うのはパートナーや家族の不幸を望むと言うことだし、どちらも苦しいですね

    それでも二人には幸せになってもらいたいですが…

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