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祇園交遊録 4 【 祇園にイトと言う女がいた・・・・3】

2017年09月03日 00:31

「イト、トイレに立て籠もる」・・・・・その1


今日は仕事が順調に進み早く帰れそうである。

ここ数日、仕事繁忙の為に祇園にも遊びに出ていない。

久しぶりに出かけてみることにした。


『イトか』

「は~ぃ♪」

『もう、晩飯は食べたか?』

「今日はちゃんと食べたよ。さっき、コンビニ行ってミニ肉まん買うてきて食べてん♪」

『ミニ? で、そのミニ肉まん1個だけか?』

「うん」

『ったく~ほなどっか食べに行くか?』

「は~ぃ♪今日あたりおにいちゃんから電話あるぅ思ぅててん♪」

(イトは私の事を他の人がいれば夢さんと呼ぶが二人の時にはおにいちゃんかニイニイと呼んでいる)

「あんな~ イト、禊川に行ってみたいねん」

『禊川か?』

「うん、前ねお客さんが禊川に行ったって言うてはったんや」

「で、カウンターで食べたんやて」

「お座敷ちゃうん?って聞いたら【アホか、お座敷に上がれるんは国会議員とかよっぽど偉い人しか上がれんわ】って言うてはったし」

「で、イトもいっぺん行ってみたいねん」

『わかった、7時に迎えに行くわ』

「は~ぃ♪」


禊川は先斗町にあるフランス料理のお店で古い町家改装したような作りになっている。

お座敷に上がるのに国会議員や偉い人しか上がれないって事は無い。

きっとイトはからかわれたのであろう。


イトを迎え禊川へと向かった。

禊川とは鴨川と並行して流れる川幅が狭い川で多分店名もこの川からとったのであろう。

先斗町の通りは車が入れないので先斗町歌舞練場近くでタクシーを降りた。

歌舞練場から南へと行くと禊川がある。

入口はと言うと注意深く見ていかないと見過ごしてしまうほどこじんまりとあっさりした入口となっている。

店内は町家独特の作りで細い廊下と細くて急な階段を登り2階の座敷に案内された。

部屋は八畳程の広さで川側にはシーズンになると禊川を跨ぐように床が立つ作りになっていた。


(途中ですが従業員の呼び名はフランス料理店式に書きました。中居さんとかじゃ合わないし・・・気障だと取らないでください。)


暫くするとセルヴールがやってきた

手頃な値段のコースを頼みワインもお願いすることにした。

セルヴールが出て行くのと入れ替わりにワインの相談をする為にシェフが入ってきた。

あのソムリエ独特のいでたちでは無く背の高いトックを被っておりシェフ・ド・キュイジーヌかスー・シェフであろう。

型通りの挨拶を済ませると

ワインをとのことですが・・・・」

ワイン選びの相談にはいった。

『うん、今日の料理に合うワインが欲しいんですが』

『できればカルフォルニアワインの白で比較的辛口が強いやつを・・・2万円ぐらいで』

「でしたらこちらのワインはいかがでしょうか・・・・」

リストを広げながらおすすめワインの説明をしだした。

一通り説明が終わったので

『じゃぁ、それでお願いします』

『あと、エチケットもお願いしますね』

「はい、かいこまりました」

と深々と頭を下げ部屋を出て行った。


イトと話をしようとしたら

今度はディレクトールが入ってきた。

「失礼します」

「本日も・・・・・」

型通りの挨拶をした。

私はイトのことを

『富井さん、この子は私の妹や』

「そうですか、全然似てらっしゃいませんね」

『うん、腹違いで種違いの妹やし』

「夢さん・・・・・それって他人とちゃいますの?」

『やっぱりそーか。まぁ、そーいうこっちゃ』

『私が妹同然に可愛がってる子で祇園ママしてるんや』

彼はイトに

「これからも宜しくお願い致します」

名刺を差し出した。



「では、ごゆっくりとごつぐろき下さい」

『ゆっくりしてエエんかいな ほな、5~6時間ほどノンビリさせてもらうわ』

と冗談を言うと

「はい、そこからの鴨川の景色も綺麗ですし・・・・」

時間制限があるとも言わずに返してくるあたりは流石だ。

『じゃぁ、食後にひと寝入りさせてもらってから帰るわ』

「はい、ではごゆっくり・・・・」

彼は微笑みを浮かべながら出て行った。



運ばれてきた料理はどれも美しく小鉢に盛られ日本料理の会席風となっている。

もちろん盛られた器も趣向が凝らされており料理と合わさり芸術品を見ているようである。

ススメられたワインをいただきながら美味しく箸をすすめた。



イトの携帯が鳴り出した。

(スッチャラチャラチャラスチャンチャン~)

笑点テーマソングである。

なんとまぁ、持ち主に合わせた気が抜ける曲である。


「は~ぃ♪」

軽いノリで出たイトの顔が一瞬にして険しくなった

「うん・・・・うん・・・そやさかい・・・・」

込み入った話のようである。

珍しくイトの顔も真顔だ。

「ちゃうやん・・・もぉ~・・・・今、夢さんと食事中やし後でかけなおすわ」

そー言うと電話を切った。

『なんや?ややこしい話か?』

「うん、ユリエちゃんなんやけど」

「この前、お客さんを連れて店にきてくれはったんやけど」

「その時の売上のバックの割合についてなんやかやと朝から何遍もゆーてきはるねん」

ユリエちゃんはそないな子とちゃうんやけどな・・・・」

「きっとパパが後ろから言わせてるんやと思うわ」

『うん?パパユリエにパパがおるんか?』

「うん、パパゆーても若い子で祇園黒服してるわ」

『へえ~そうなんや、ってそれってパパって言うか?彼氏とちゃうんかいな』

『で、イトにはパパはおらへんのか?』

「なにゆーてんの イトのパパはおにいちゃんやんか~」

『アホぬかせ!イトみたいなわけのわからん不良娘を持った覚えはないわ!』

「なんやて~~~」

イトは思いっきり頬を膨らませ私を睨みつけたと思ったら

尖らせた口からブブブっと笑い出した。

『ッゲ!汚いやろ~唾が顔にかかったやろ~が!』

二人で大笑いをした。


禊川の勘定も済ませエチケットを受け取り店を出た。

先斗町の道すがら一軒の占いの店の前を通り過ぎると

「おにいちゃん、イト手相観てきてもらってもかまへん?」

『うん、かまへん』

『じゃぁ、私はそこのタバコ屋の前で一服しとくさかい行っておいで』

「はぁ~い」


タバコ屋の前の灰皿で一服をしイトを待っていた

暫くするとイトが暗い顔をして出てきた。

並んで歩いているとイトが

「あかんわ・・・・」

とポツンと呟いた。

『何があかんのや?』

「うん、あんな 今占い師さんに2番目の男とよりを戻すって言われてん」

「あかんのや・・・2番目の男言うたら2000万いかれてしもうたんや」

「あんな男と二度と顔合わせとないわ」

『そっか~』

『まぁ、占いやし 悪いことは聞かへん事にして良い事だけ聞いとけばエエんとちゃうか?』

「うん、そやね♪ そうするわ」

立ち直りの早いやっちゃ(笑)


三条通りでタクシーをつかまえイトの店へと向かった


花見新橋にあるイトの店で水割りを数杯飲み次の店へ移動することにした。

『さちか?今、イトの店におるさかい迎えに来てくれ』

コートダジュールのさちに電話をした。

コートダジュールからはいつもの如く3~4軒の店を回ってた。

1時前ぐらいに大林くんからの電話が鳴った

「あっ!夢さん?」

お前、私に電話してきてるんやろ~

で、「夢さん?」はないやろ(笑)

「今どこにいてはります?」

『苑にいてるけど』

『店を片付けたら来るか?』

「はい♪ちゃっちゃっと片付けてすぐに行きま~す♪」

「って、ちゃうんです!」

「イトママトイレに閉じ篭ってもう30分も出てけーへんのですわ!」

『そっか、そりゃ長いウンコやな~』

「そやねんー、この間からママ便秘やゆーてはりましたから中できばってはるんやわ・・・・・」

「って、ちゃうゆーてますやん!」

相変わらずノリツッコミのおもろい男や(笑)

「葵がドアに耳を当てて様子みたら・・・・中でイビキかいて寝てますねん」

『そうなん?・・・そりゃあかんわ、ほな風邪ひかんように毛布でも掛けてやりや~』

「毛布は無いけどタオルケットならあるさかいそれでええやろか?」

『エエんちゃうか』

「だ~か~ら~~~ちゃうって!」

「中から鍵をかけてるさかいどないもこないもでけんのですわ」

私は可笑しさで大林君の真剣な声にも耐えられなかった。

『わかった、とりあえずそっちに行ってみるわ』


【 次回に続く 】

ここが禊側のHPです。

http://www.misogui.jp/

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