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祇園交遊録 2 【 祇園にイトと言う女がいた・・・・1】

2017年09月01日 00:22

祇園交遊録 2 【 祇園にイトと言う女がいた・・・・1】

登場人物と私の関係を知って頂くためにも前回の「祇園交遊録」をお読み下さい。

祇園にイトと言う女がいた・・・


「イト常連を放置する」・・・・・1

ふと時計を見ると既に10時を回っていた。

「チェックを・・・」

と、マネージャーに言いながら『扇』のカエデママに電話を入れた。

カエデか、暇か?暇だったら今『苑』に居るから迎えに来てくれ」

私の場合は必ずママか店の子が迎えに来てくれる事になってる。

一人で祇園を歩かせるとすぐに知らない店へと飛び込んでしまう癖があるらしい・・・

だから必ず迎えに行くので呼んで下さいと約束をさせられいつのまにか慣習となっている。

一度、イトのところの大林君から
「夢さん、今まで行って二度と行かない店を全部教えてください。私が回ってボトルを回収してきます」と真顔で言われてしまった。

数分もしないうちにカエデが迎えに来てくれた。

私の横に座り水割りを一口飲み『苑』をあとにした。

カエデの店『扇』は花見新橋辰巳神社の方に入り白川沿いにある。

この『扇』にはイトのところの女の子の実のお姉さんがいる関係で行くようになった。

外見はこじんまりとした京町家だが中に入るとそこそこの広さがある。

店内には螺旋階段があり2階にも席がある
私の指定席はその2階のコーナーで他の客からは死角となっている。

さすが週中の今日は暇とみえて私の席に女の子が5人もやってきた。

そうなるとマネージャーのタカも含め8人でのじゃんけん大会となる。

私のチームとタカのチームの4対4の対抗戦
「ダー!ニコラシカを4つ持ってきてくれ」
そばを通ったボーイにグラスを頼んだ。

ごく小さなコーディアルグラスをニコラシカと呼ぶらしいが何故だかわからない。

テーブルにニコラシカが並ぶといよいよ対抗じゃんけん合戦の始まりである。

少量とは言えいっぱいに注ぎ込まれたコルドンブルーのストレートはやはりきつい。

祇園 扇で始まるタカ対夢のチーム対抗じゃんけん合戦~」
「おぉ~~~!」

じゃんけん合戦が始まったのはいいがどうも私のチームの子はじゃんけんが弱いのが集まったみたいだ。

立て続けに負けてしまい3杯も飲むはめとなってしまった。

「あかん!じゃんけん合戦はやめや、タケノコニョッキをしよう」
「いいですよ~なんか今日は負けへん気がするわ」

タカが憎らしそうな笑顔を浮かべ私の方を見た。

「よっしゃ、ドレミの歌のニョッキや!」
「ダー!水割りグラスを7個持ってきてくれ」

ドレミの歌でドからシまでに7杯の水割りを歌に合わせて一気に飲まなきゃいけない罰ゲームである。

1回でも負けるとヘロヘロになってしまう。

そんなゲームミステリーナンバーをやったりと暫らく遊んだ。

気が付くと僅か2時間ぐらいで7本のボトルが空いていた。

しかもタカはすぐに戻りますと言い残して消えてしまっている。

「ダー、タカはどこや?」
マネージャーはキャッシャーの裏で寝てます」

なんとタカは酔いつぶれてキャッシャーの裏で寝てしまっていたのである。

「起こしてこい、起きひんかったら1本はお前のおごりやでってゆぅてきてくれ」

暫らくしてダーが戻ってきた。

「1本自分が出しますから許して下さいってゆぅてはります」
ダーの顔にはおかしくて堪らないと言う笑顔で満ち溢れていた。

時計を見るともうすでに1時を回っている。

「しゃーないなぁ、カエデ チェックをしてくれ」

チェックの為にカエデは階下のキャッシャーに向かった。

「カゲさん、今日はもう家に帰りはるんですか?」
と席にいた女の子が聞いてきた。

「いや、腹が減ったから『ラポー』に行こうと思うてる」
「連れてってください♪」

と他の女の子たちも口を揃えて言ってきた。

「みんなアフターの約束はないんか?」
「そんなもん無いわ」

考えれば無い、今の今まで私と遊んでいたんだから

「じゃぁ、片付けが終わったら『ラポー』においで」
「はーぃ♪」

調子の良い声が返ってきた。

「私もご一緒させてもらってもええ?」
キャッシャーから戻ってきたカエデが計算書を差し出しながら笑顔で言ってきた。

計算書と言っても金額だけが書かれたメモである。

「うん?少ないんとちゃうか?」
その金額をみると明らかに少ない

マネージャーに1本分出させます。途中で抜けて勝手に寝たしもうてから・・・・本人が出すゆぅてるし出させたらええんちゃいますか」

カエデの顔は右半分は笑って左半分は怒ってる。

「そやな、今日は酔い潰れたタカへの罰金やな」
そう言って清算を済ませながら

「ほな、片付けが終わったら暇な子は『ラポー』においで」
そう言い残して『扇』を出た。

『扇』から『ラポー』までは目と鼻の先で途中で迷う心配もない。

辰巳神社近くまで来ると聞きなれた声がした。

しかも揉めている。

白川にかかる巽橋の上でなんとイトとイトの店の女の子アキが揉めているのである。

その傍らにイトの常連の多々良さんが呆然としていた。

「こら!お前ら何をやっとんや!」

一喝すると三人は驚いたように私の方を見た

「あっ!夢さん、ちょうどよかったわ。ママが・・・・」
アキが口を切って言い出した。

その顔は困り果て助けを求めている。

イトはと言えば私の顔を見ると下を向いて黙ってしまった。


「続きは次回」

画像の奥に微かに見えるのが巽橋です。

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