Episode 4

自棄の憂さ晴らしに鎌倉まで走った。
まだあるか分からなかった小さなバーを訪ねてみる。
10人も入ればいっぱいになるそれは、みんな、マスターご自慢のローストビーフ目当てで･･･。
年季の入ったトランペットはマスターのものと、古い常連が教えてくれる。
ここのフレッシュな、ソルティドッグが好きで飲み干していると、
隣の人がペースダウンしなさいと注意する･･･。
カチンとして無視して飲んでいる私に、フランス産のビールの話しなどし始める、サッパリ分からない？（1人で来るんじゃなかったと頭によぎる）
愛想話の筈が好きなクルマの話しをされ、ペースにはまる････。
ワインに誘われ、招かれた部屋にはグランドピアノ･･･？何者
ランプのホヤのようなグラスを回して、芳醇な香りをいっぱいに吸い込む。
立ったまま、ピアノに寄りかかりグラスを重ね、１瓶開けるのに時間は掛からない。
葡萄の匂いが男の匂いに入れ替わっていたのは言うまでもない。
前後不覚に始まって、前後不覚に終わったらしい･･･
ベランダからの日差しに１人で起きて、勝手にシャワールームを使う。
帰ると告げて出た外は正面に湘南の海があった。
したたかに酒の残った頭でクルマを走らせる、仕事に間に合わせるため･･･
海の方向だけを頼りに国道を探し東京へ向かう
回れ右をしてももうもどれまい、それでいい、名前も尋ねなかったのだから
２日酔いに苦笑しながら、面影すら薄れていく、昨夜のことなのに･･･。