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放浪ゲーム11-終焉

2009年08月28日 00:06

放浪ゲーム11-終焉

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夏も終わりに近づいた頃

わたしはこの生活を

終わらせる頃合を感じた

日に日に何か異質なものに

変わっていく結衣に

不安を感じていた

そして わたし自身も 

放っておいたなら

この生活を完全に受け入れてしまいそうだった

「潮時じゃないか?」

「やっぱり そう思ってたのね」

「うん」

「出来るなら あなたとずっとこうしていたかったわ」

「ずっとは出来ないやろな」

「それはわかってる」

「続けるんやな?」

「あたしは いけるとこまで行くわ」

「そうか」

「ただ約束してくれる?」

「何を?」

「どんなにみっともなくてもいいから生き抜いてね」

「え?」

「ここから ちゃんとした世界に戻るんだから

絶対 生き抜いてね」

「って あんた死ぬ気なんかよ」

「違うわ そんな気はないのよ ただ後悔したくないだけ」

「後悔って?」

「今 あなたと一緒に戻ればよかったって

後悔は絶対しないわ

だから あなたもしないで生きてね それに」

「それに?」

「滅びたがってるのは あなたでしょ」

その言葉は わたしの核心をついた

「あなたが滅ぶかは別にして 

ここは骨をうずめる世界じゃなかった、

そういうことだと思うわ」

その言葉でわたしはわかった

そう ここはわたしがいる世界じゃない

そして わたしは まだ 終われない

いつか終わるときまでは

しかし この時のわたしの出した答えは間違っていた

それに気づくのは まだ十五年以上も後のことだった

わたしは 結衣を抱き寄せた

キスもすることなく 数時間 

ただ 寄り添っていた

「楽しかったよね」

「楽しかったやね」

「もっと早く合えればよかったのかな」

「もっと早かったら こうはならんやろ」

わたし達はキスをした

軽く口が触れるだけのキス

思えば結衣とこんなキスは初めてだった

それは結衣も思ったようだった

「逆やな」

わたしは笑った

「そんな顔出来たのね」

結衣は言った

始まりがあって行き着くところがある

わたしらは 行き着くとこから始まって 

終わりに始まりだった

「じゃあ 行くわ」

わたしは 立ち上がり 

振り向かずに歩き出した

「さよなら」

その声に どんな顔をしてるか振り向きたかったが

わたしは振り向かなかった

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