挑戦！　関節技（の描写）

私は普段。
戦士が剣を振り回したり、魔法使いが突風を起こしたり、
魔物が火を吐いたり、邪神が空に穴を空けたり、
ヒーローがヒロインを抱えて敵アジトから脱出したり、

といった、ハデな小説を描いております。
もちろん、ハデな描写がたくさん含まれているわけですが。

今回、ここで。
地味～な、しかし複雑な、関節技描写に挑戦してみようと思います。
読む人に、正確に伝えられるかどうか、いざ勝負（？）！


さて。
今回の画像上部のような状態。女性が男性に襲われる時なんかの、
定番とも言えるものだと思いますが。

そもそも。
この状態って、両手を封じられてるように見えますけど、
それは相手も同じなんですよね。このままでは、殴りつけることも、
首を絞めることも、もちろん服を脱がせたりなんかも不可能です。

なので。
まずそれを理解し、落ち着くこと。
この状態が続く限り、貴女は無事なのです。

では。
いよいよ始めますよ～。まず、五指を思いきり広げる。全力のパー。
これだけで「筋が張る」みたいになって、掴む側が少しツラくなります。

それでも。
強い力で掴まれている限り、掴まれている手首は動かせません。
なので、手首はそのままでＯＫ。動かすのは肘です。
右肘を、手首を中心にして反時計回りに大きく回します。１２時まで。

この時点で。
既に、相手の手首は捻じられ、掴む力はかなり弱まっているはずです。
そこから、肘をストンと垂直に落としてやれば（＝手首を上げれば）、
バチンと外れます。

そしたら。
右手の指をバラバラにして、ハタキかムチになったつもりで、
相手の目にピシャリと、四指の背で一発。「目打ち」といって、
相手を失明させることなく、しばらく視力を奪える技です。

ここまでくれば。
後は簡単。今の、右手の四指を、相手の右手（自分の左手首を握っている）の、
小指の下の肉厚部分に引っ掛けて、握れる限り握ります。
これは、「相手の右手が外れてしまわないように」です。

それから。
さっき、右手でやったことを、そっくりそのまま左手で繰り返します。
今度は時計回りに、左肘を１２時へ。そこからストンと肘を落とす。
但し、自分の右手でしっかり押さえて、相手の右手が外れないように。

すると……

この技はですね。
正式名称は「十字小手」、少林寺経験者間の俗称では「Ｓ字」と
言われている技なのですが。黒帯、弐段の私が知る限り、

「全ての技の中で、二番目に痛い。激痛！」「なのに、一番簡単」

……という技なのです。一番痛い技も含めて、他の技はどれも、
ちょっと角度を間違えただけでもうダメです。痛みが大幅に減ってしまい、
力任せでないと相手を倒せなくなります。相応の技術が、練習が必要です。

でも。
この技だけは例外。ちょっとやそっとヘタであっても、角度がズレていても、
とにかく上記の手順通りにやれば、とてつもない激痛を与えることができます。


どうあれ。
護身術の一つとして、知っておいて損はないと思いますので。
機会がありましたら、ご家族ご友人に頼んで、ぜひ試してみて下さい。

たーだーし！
くれぐれも、最後の肘落としは、思いっっっっきり手加減して、ゆっくりと。
でなければ、相手の人が絶叫して悶絶して七転八倒しますので。
貴女がどれほど華奢で、相手がどんなマッチョ男性でも、です。


☆☆ご覧の通り☆☆

自分から襲いかかってかける技ではなく、
自分が襲いかかられた時の、防衛用の技。
少林寺拳法は、そういう技でできています。

今回ご紹介した技も、例えば目打ちの時点で相手がビビって離れ、
後退したらかけられません。が、相手がビビって離れて後退したなら、
こちらは背を向けてスタコラ逃げれば良いのです。

それが。
スポーツではなく武術、試合ではなく実戦、というもの。
勝つ為ではなく、生き残る為に戦うのです。

もちろん。
技が完成すれば、腕をへし折るのも顔面を百発蹴るのも自由ですけど。
やってみれば解りますが、片手だけで相手を固めることができるので、
もう片方の手で１１０番しても良し。携帯電話って便利ですよね。


☆☆こういう技を☆☆

架空の立体映像・透明人間相手に、練習できるか。
かける側・かけられる側、どちらでもシミュレートできるか。
そういう想像力も、武術の修行には大切なのです。