美容室

暮れに髪の毛をカットしてから、忙しさと生来の怠け者の気持ちが合わさって、伸ばし放題に伸ばした髪の毛をこの休みにようやく切りに出かけた。
予約を入れてみたが、いつもの店が一杯で二駅向こうの以前から気になっていた店に行ってみた。
木の扉を手前に引くとカウベルが”カラン、カラン”となり、一斉に店内の注目が集まる。
”いらっしゃいませ”の言葉とともに女性が現れる。
指名もなく、手の空いてる若い女性がカットしてくれたのだが、兎も角よく喋る。というより根掘り葉掘り色々と聞いてくる。
何処から来たのか、職業は何か、休みは何をしているのか、etc…
”はあ”、”ええ”、”いいえ”位しか返す言葉がなかった。
一生懸命、接客をしてくれているのは分かるけど、少しばかり五月蝿く感じた。
カットにも少し気に入らないところはあったけど、初めての店だし、これ以上話もされたくなかったので”いかがですか？”の問いに”良いです”と代金を支払い店を出た。
何はともあれ、髪をきるという目的は終えた。
軽くなった髪で少し歩いてみたくなって、雨の上がった線路沿いを住んでいる駅に向かって歩き出した。
普段は電車の窓から見る景色だが、徒歩で歩くと同じ景色とは思えないほど色々なことが見えてくる。
芽吹いている春を木々にも、道端の草花にも、歩いている人の服装にも…
およそ40分位で風は未だ冷たかったけど、予定外の楽しい時間だった。