変化の時代

「どこまで行くの」と聞かれて二十歳のジュンは答える。「行くとこまで行くんだ」。横浜からナホトカへ向かう船の中である。五木寛之の「青年は荒野をめざす」は、こんな主人公の果てしない冒険を描いて若者を旅に誘(いざ)なった。
　「これはもうぐずぐずしてはいられない」と書き出して、ほとばしる漂泊の思いをつづったのは沢木耕太郎の「深夜特急」だ。インドから欧州までの乗り合いバスの旅。さあ行こう、と奮い立つ。「行けるところまで行ってみよう」。とにかく何かを見たいという情動がそこにはある。
時代が変わっても若者にはそういう精神(ハート)が宿っているはずだ。ニッポンが停滞して二十数年、この間に生まれ育った中にも、面白い輩(やから)がごろごろいる。農業や介護、医療に道を見出したりボランティアに参加したり。派手さはなくとも、そつなく「よいこと」に流せる汗は潔(いさぎ)よい。やれ草食系だ縮み志向だというのは、古い世代の見方なのかもしれない。
　とはいえ、先の見えない世の中だ。変化の時代ともいえる。旅立つ勇気を持つのは並大抵ではない。新しい出会いにさえ戸惑いを感じる。危険と不安が交錯する。しかし、だからこそ、行けるところまで。ハートに若さを呼び覚まし行ってみようじゃないか。行ける気がする平成新年度である。