- 名前
- ヴォーゲル
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- 年齢
- 73歳
- 住所
- 海外
- 自己紹介
- もう海外在住29年、定年もそろそろ始まり、人生のソフト・ランディング、心に浮かぶこと...
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春はこんな乗り物でやって来るのか 本文
2009年02月08日 08:38
土曜の青空マーケットを歩いていて八百屋の前に停めてある自転車を道行く人が指を指して笑いながら通り過ぎてゆく。 なるほど普通の婦人用の変速機つきのきっちりとした自転車で、後部座席の両側にはどちらかといえば高級感溢れるモダンなふりわけ袋とでもいうような荷物入れがぶら下がっている。 普通のものは黒の分厚いカンバスでこのような「モダン」なものをつけていると人は一目置く。 それに加えて座席に被せてあるカバーが派手だ。 原色の花柄で青、赤、黄色の組み合わせが熱帯だ。
しかし、それだけだったら人はそれを指差して笑うことはない。 ハンドルの周りから車体、後ろの泥除けあたりまで緑に生い茂るよくできたプラスチックの蔦のなかに咲く青い朝顔があちこちに散りばってなかなか面白い。 多分、人が笑うのはその春を告げるような華やかで派手な自転車の飾りだけではないと思う。
時々若いものが古い自転車を原色に塗ったりいろいろなものをつけて時にはパンクの格好をした男女がそのゆがんだタイヤをゆらゆらと揺れさせて走っているのを見ることがあるのだが、また他の人たちも車体にいろいろな飾りとつけているのをみることがある。 大抵は若者とか学生が古い自転車にそんな飾りをつけているのが普通なのだし、そういうものであれば人は微笑むもののあまり指差すようなことはしない。
オランダ人は自転車には敏感だ。 車で持ち主の性格、収入を測るように自転車もそのように見るだろう。 ただし、古くぼろぼろのものに乗ってもいてもそれはそれでイキにみえるのか20前後から40歳ぐらいまでは別段それでも不思議ではないのだし、町の古い映画館の持ち主のように着るものに頓着せず髭だらけ髪はぼさぼさの大男がのっそりとぼろぼろの自転車を走らせていてもそれはそれで様になる。
ここで皆が面白く思うのは飾りと自転車のアンバランスの加減だろう。 まだ比較的新しく、多分40歳から60歳ぐらいの女性の乗り物と思しく、そういう人が「高級感」ただようバッグをぶら下げ、トロピカルなサドルカバーをつけてこの朝顔のつるまきだ。 おまけにハンドルについたベルが真っ赤なトマトよろしくアクセントが利いている。 それを感じて人はどんなオバサンがのっているのかねえ、と興味本位なのだが、しばらく見ていてもオバサンは戻ってくる様子はない。
わたしも暢気にオバサンが戻ってくるまで待つつもりもなくそのまま買い物袋をぶら下げて人の流れの中に混ざるのだがこういうもので春はやってくるのかもしれない。 いや、その持ち主はこの2週間ほどのぐずぐずした天気に少々鬱陶しくなって気分を高揚させるためにこんな飾りをつけて陽気に町中を走る気持ちになったのかもしれない。
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