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代償No.13

2018年04月15日 10:32

代償No.13



やっぱり私は強欲な女だ。強欲で醜い女。

そして、何より躰の欲に溺れる愚かで弱い女…

あの人が欲しい。あの人の躰が欲しい。

いや、何より…

本当はあの人の…

心が、想いが欲しい。

いろいろ考えていたら、躰が火照り始めてしまって…

今夜はもうこれ以上は無理だろうと思った。


座ったまま手を伸ばして明かりを絞り、辺りを薄暗くする。

それからチェアーを回転させ、デスクに背を向け、両足を少し開き…

目を閉じて天を仰いだ。


両手を横にだらりと垂らして瞳を閉じれば、

いやがおうにも自分の感覚と…

躰と…

向き合わざるおえなくなる。


風に震える窓。ほんの微かに動く空気の流れに…

躰全体を愛撫されている感覚に陥る。

下半身無意識なのにじわじわと溢れる蜜を感じて…

思わず自分をせせら笑う。


実はあの人なんてどうでもいい時もある…

蜜が流れるのを感じながら、それでも何もできなかった。


本当は働かずに楽に生活がしたいし、

できることなら娘と私を愛してくれる普通の人と結ばれて

平凡でも穏やかに安心したそんな暮らしを送りたいと思ってる。


でも、こんな状況から抜け出せない今の私には…

そのどちらも叶うことはない。

でも…

願うくらいいいじゃない。

願うくらいはタダじゃない。


私は完ぺきな人間じゃない。

それどころか今…

それをしてはいけないとわかっていても

やめられないことは人間誰しもある。

煙草ギャンブルお酒だって…

そうだ。


意を決して垂らしていた左手を服の裾から忍ばせ、

自分の胸のふくらみに伸ばした…

小さなふくらみ、その中心にそっと指を添わす。


強い薬にまで手を出せば、憎い人を殺してしまえば、誰かをさらえば、

それは法に触れるが、誰だって何かしらの道徳は犯している。

私だって、良くないとわかっていても、あの人に溺れている。

あの人のくれる快感の虜になっている。


戸惑いがちに右手に力を込める。

下着を這うようにゆっくりと降りていき、

布越しに感じる湿り気に中指と人差し指をあてがう。


それはあの人を心から愛してしまったからと

勘違いしているだけなのだろうか?

親に隠れてマッチを擦って火遊びする子どものように

ばれなければ何をしてもいい。

わからなければなんでもしてしまう…

そんな訳はないのに、後先考えずのめり込む自分。


そこまできて、両方の手が止まる。

こんな虚しいだけの事…

したくない。

でも今夜は、せめてこんな事ででも慰めなければ…

おそらく…

眠る事すら叶わないだろう。

意を決して…

諦めて私は指を動かし始めた。


やっぱり私は強欲な女だ。

強欲で…

醜い女。







彼女が自ら俺の掌に堕ちてきて1年が過ぎた。


最初にああなって…

それっきりで終わりのつもりだったはずなのに…

再び飛び込んできた彼女を、結局拒否することができなくって…

ずるずると続いている。

それまでの3年の間、出勤し、仕事で関わるたびに感じていたの苦痛は、

今では違う苦痛にすりかえられていた。


昔の亡霊に苛まれるこんな生活をいつまで続けられるのだろうかと思う。

彼女を見ればどうしてもその後ろにカノジョの姿を見てしまう自分を

どうしたらいいのか持て余していた。


この地に来てもう4年。

転勤族である俺には、いつ異動の辞令が出てもおかしくない…


「お疲れ様でした…」

その声を耳にして今日も定時が来たことを知る。

彼女は家庭の事情で基本的には定時に帰る。


さあ~、一服してから目の前のモノをとりあえずやっつけてしまおう。

やっと集中して仕事ができる…

とつい思ってしまう自分を嘲笑した。

日中もやっていないわけじゃない。

もちろん進めていかないと仕事にはならないのだが、

でも、どうしても同じ空間にいる彼女のことを

つい変に意識している自分がいる。

だから息抜きという名の現実逃避喫煙ルームに逃げ込む回数が

以前いた所のときより必然的に増えている現実に、

つい最近気が付いてから、余計そのことを意識するようになってしまった…



シャワーだけでも…」


3度目の逢瀬で、ドアを入った途端その手を握り、

引きずるように中に連れ込む俺に、

脅えた目を向ける彼女の懇願の言葉を事もなげに握りつぶし、

腕の中に閉じ込めてただむさぼるように首筋に噛みついた。


その肌の甘さにはっとして顔を上げると、その目に飛び込んできたのは

かおるが感じた時と同じ顔。

瞼を閉じて眉根を寄せ、唇を結ぶちょっと苦しそうな

あの何とも言えない表情…


この女といると今がいつなのか…

ここがどこなのか…

目の前の女がいったい誰なのかわからなくなる。


あんなに大切な女だったはずなのに、

いなくなってからも結局意地を張って探さなかった。

そんな愚かな自分をその度に思い出し、

込み上げてくる苦いものを無理やりに飲み下す。

それでも苦いものは腹の中で渦巻き続けて…


彼女をむさぼるたびに湧き上がるこの感覚はなんなんだろう?

もっともっと…

ただ手に入れたい、ホシイと衝動的に思い、

彼女の意思を無視して食い散らかすばかりの自分。


密室で会えば、こんな衝動的な野獣と成り下がる自分に戸惑う。

俺はこんなにも強欲で自分勝手衝動的なのに…


それなのに、彼女は…

ほとんど何も求めてこない。


その躰を腕に閉じ込めたまま、頬をすり寄せてギュッと強く抱きしめる。

彼女の中に、又かおるを見つけてしまった動揺を隠し、

俺自身のもやもやとした気持ちを誤魔化すための行為。


「浴びたいか…?」

耳元に唇を寄せ、チュッと耳たぶに口づけてから低い声色でそっと囁いた。

抱き締めた躰がぞくっと震える。それから少し間があって…

頭が縦に1度下がった。


「一緒なら…

いいがな!!」

耳元にある俺の口角が上がる。さあ、どう返してくる?


予想通り首を何度も左右に振って俺の胸を押し、もがき始めた…


そういう行為が、余計に男の欲情に火をつけるって

お前はわかってるのか?

無意識ならこの女は本当に…

クククッとほくそえみながら、俺はそのまま彼女を抱きかかえ

肩に乗せた。


「行くぞ?」

それは疑問ではなく決定。

腕力で俺にかなうはずない彼女なのに、

それでもバスルームのドアの前まで肩の上で足をバタつかせ続けた。


腕で彼女を押さえつけながら、歩く。

彼女といると…

苦しみと喜びが混ざり合って一度に起こる。


彼女は俺にとってびっくり箱のような女…

でもこの関係はあくまでもひと時の情事でしかない。

何よりもそのことが…


考えるのをやめバタつく彼女を抱えたまままバスルームのドアを開けた。


その次の飲み会のときは…

本当にごたごたと色々あった。


前日、それまでのように確認のメールをして、

『了解』と味気のない返信があった。


それでも、明日の夜は久々に会える…

躰がその快感を思い出してぞわっとする。

年甲斐もなく期待に胸が高鳴った。


その日は俺だけ取引先と接待があり、彼女たち同僚とは別だった。

それもすべて終わらせて、相手をタクシーに乗せ、

頭を下げたとたんにポケットの携帯が震えた。


初めて一緒じゃないところから落ち合うことに…

なんとなく不安があった。


何かあったのかもしれない…

言い知れないもやもやを飲み込んで

携帯を取り出して画面に指を触れた。

そして、その画面を見たとたんに固まる。


ああ…

そうか。そうだったな。

たぶんもうじきそんな時期だったからだろう…

普段は感じることない自分を縛る棘の鎖が、

突然現れてじわじわと心を締め付ける。


でも、よりによって今週じゃなくてもいいだろうに…

思い通りにならないわが身を呪い、恨めしい気持ちでメールを開くと、


『そのままタクシーでこちらにお帰りください。

家でお待ちしております』

と予想できるような内容だった。



それは俺にとっては拒否権のない召集令状

絶対に従わなければいけない命令…

どんな約束よりも、ある意味仕事よりも優先しなければならない

拘束力の強いおんな(妻)からの忌々しい帰宅を乞う便り。


普段は単身赴任で自由にさせてもらっている。色々な意味で…

しかし、ひとたび呼び出されれば、

例え夜中であっても帰らなければいけない。

これが俺とおんな(妻)が

スキルアップのために家を出た時の取り決めだった。


しばらくの間、遠い目をして暗闇を見つめる。

ため息も出ないくらい落胆したが、

俺のスケジュールはおそらく把握されているのだろう。

支払いも済ませていないので、いつまでもぐずぐずしてはいられない…

仕方がなく指で返事を入力をした。

『了解。今終わったから支払いが済んだらすぐそちらに向かう』

思うようにならない人生。

送信ボタンを押しながら、苦虫をつぶしたような気分になった。


彼女に帰りのタクシーでメールをするしかなかった。

『すまない。急用ができて行けない。

翌朝モーニングを頼んでおいたからそれを食べてから帰ってくれ。』


それから目を閉じ車に揺られながら返信を待ったが、

自宅に着いてもそれはなかった…


「お帰りなさい」

にこやかにドアを開け迎えるおんな(妻)の顔を見て、

改めて彼女が恋しくなった。

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