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代償No.10

2018年04月09日 02:39

代償No.10






温かいシャワーで躰に新たな息吹を吹き込む。

躰を洗おうとボディーソープを手に取り腕に刷り込む。

少しずつ体が白い泡に包まれて、昨夜の情事を包み隠す。

細かくあちこちに掌を這わせ、チェアーに座って

足の指を1本ずつ洗っていると、あの人の上目使いの瞳を思い出す。

イヤらしく1本1本美味しそうに指を頬張るその艶やかな表情に、

身震いさえした。


躰の疼きが戻ってきて、そこから蜜が溢れるのを感じて…

蕾に指を添えてみる。

せっかくきれいにしたのに、躰がまだちょっとした妄想

反応してしまう…

そんな何でもないことに欲情してしまう淫乱な自分がとても嫌いだった。


思い切って指先をその厭らしい口に挿し込んでみると、

そこは泡の感じとは違ってぬるぬるとしていた。

瞼を閉じてそっと入口をなぞってみると、

クプクプと疼く躰は蜜を垂れ流す。


私はそのまま反対の手でシャワーを探り、

蜜の止まらないそこに向かって勢いよくかけた。


サ―っという音と共に、泡も蜜も何もかも流れ、

膨らんで顔を出した蕾に直接刺激を送り込む。

じりじりと心地よい痺れと共に、

「あぁあ~…」

という嬌声が漏れた。


あの人の艶やかな瞳を瞼の裏に思い浮かべながら…

その場で果てた。



瞳を閉じたまま背をタイルにもたれかける。

浴室でクチュクチュと蜜音を響かせながら

私は熱心に何度も何度も弄んだ。

「んんいやぁ~…

んあっ…

やぁんっ」

弄れば弄る程、どこを触ればいいのかわかってきて、

昨夜の情事を反芻しながら何度も何度も震え、達し続けた。

それでも飽くことなく私は悦楽を欲するままに貪る。


指で…

シャワーで…

あの人がそこにいると思いながら、自分の躰を極限まで苛めに苛め抜いた。


昇り詰めるような快感が続き、躰が生理的な刺激にビクビクと震える。

止めればゆっくりと躰から心地いい痺れが波のように引いていく。

ドロドロになりながらも、それでもまだ足りなかった。


もっともっと欲しくて…

もっと気持ちよくなりたくて…

もっと満たされたくて…

その行為にただ耽った。


今まで自分で慰めることは知っていても、

そんなこと恥ずかしくてできなかったのに…


でも結局、躰中に何度も何度も快感の刺激を送り込んでみても、

それは所詮己の作り出すまがいものでしかなく、

心まで満足できるわけもなく…

こんな快感に身を震わせながらそれでも止められない自分を、

嘲笑うしかなかった。



それは、自然にしてしまった自慰行為によって

自分があまりにも愚かで馬鹿な女だったことを改めて

思い知らされたからで…

涙も出ない。

さっき快感で流れた涙に自分への愚かさを嘲笑う色はなかった。


躰がどんなに快感でうち震えても、蜜がどんなに止めどなく溢れても、

それは所詮表面上のもの…

生理的に感じる場所に刺激さえ与えれば女は濡れるしイケる。

それは誰よりもイイのがどこか、自分が一番よく知っているからで、

突き抜けるような痺れと心地よさは手に入れることができても

本当に欲しいのはそんなものじゃないのに…


目の前に広がる苦しい現実に疲れ果てている。

それでも私は…

1人ではないから…

守るべきものがあるから…

走り続けなければならない。


だから、ほんのひと時でもいいから誰かに優しく愛されたかった。

無条件に受け入れられたかった。

ただ甘やかされて、包み込んで欲しかった…


渇いた躰は、虚しいはずのその快感だけをいくらでも欲しがる。

達した時の何もかも真っ白になるようなあの恍惚感が

どうしても忘れられなくて…

虚しく辛い心とは裏腹に、躰はその秘め事に堕ちていった…



フロントの前を素知らぬ顔で通り抜け、ホテルの外に出た。

眩しい太陽が降り注ぐ。手にはあの人がくれた1万円。

でもそれを使う気にはなれなくて…

半分に折ったまま大切なもののように

スケジュール帳の後ろの方に無造作に挟む。

それから私は顔を上げまっすぐに前を向き歩きはじめた。


ホテルは駅近くだが、少し奥まったところにあった。

いくつか路地を曲がると、小さな雑貨を扱ったショップが目に飛び込む。

店先に並べられた、ヘアアクセの可愛さについ足が止まった。

目で全体の色合いを眺めてから、一つずつに目をやる。


優奈に似あうかしら…


ゴムにピン止めにバレッタシュシュ

女の子はこういうものをたくさん持っている。

いくつ持っていても、その日の気分で、その日の洋服に合わせて

色々楽しめる。


つい何を見ても聞いても、娘たちの事を思ってしまう…

考えてしまう…


気になった1つを手に取ってみた。

その横に色違いのものも見つけて、両方を右の掌に乗せる。

星と花をモチーフにしたバレッタで、花の色が水色とピンク


欲しいな…

そう思いその2つを掌に握って、他の商品を見た。


そうやって店先の商品をゆっくりと見ていると

いつの間にか隣りに若いカップルが立っていた。


「これかわいい。ねぇ~買って…」

「いいよ。なら、こっちのも似合うから

これも一緒に買ったらどっちも使ってくれる?」

「うん。ありがとう。でも、妹に見つかったら、これどこのお店の?

って羨ましがられるかも…」

2人はそのまま楽しそうにいちゃつき笑いながら、店の奥に入って行った。

いつもならそんな他人の様子なんて気にも留めないのに…

その日の私は少しナーバスだったのか、

掌にバレッタを握ったまましばらくその場に佇んでしまった。


そして、掌を開いてその上に乗るバレッタを眺めながら、

憂鬱な気分になる。


これを買って帰って「どこで買ったの?」と聞かれたらどう答えるの?

このお店に連れて行ってと言われたらどうするの?


娘がこれを着けるたびに、昨夜の事を思い出すの?

何よりこの町は私の普通の生活では決して訪れない所…

こういうこと以外では訪れることのない所に…

娘達を連れてくるの?


可愛いと思っていたバレッタを元の場所に戻した。

今は早く非日常から日常に戻らなければ…

それからは寄り道することなくまっすぐ駅に向けただ歩き続けた。







今朝、躰の火照りと虚しさを心と躰の奥に抱えたまま

電車に乗って自宅まで何とかたどり着き、早々に車で娘達を迎えに行った。

彼女達にとってはいつものおばあちゃん家のお泊まり。


呼び鈴を鳴らすと、娘達は変わらず笑顔で私を迎えてくれた。

縋り付いてくる娘達を受け入れながら、

この何とも言い難い感情と躰を持て余していた。

変わってしまったのは私だけなのだろう…

その奥から出てきた母の顔を、最初まっすぐ見られなかった。


私が飲み会に行く日はこうやって預かってもらっていた。

美奈が生まれてしばらくの間は、まだ乳飲み子と幼い子どもがいるからと

断れていた飲み会

でもそれが許されていたのもしばらくの間で…

担当者からそろそろと促され、どうしようかと悩んで相談した母が、

アルコールが入った後に子どもの世話をするのも大変だろうから

「良かったら私の家に連れてきて泊まればいい」と

娘達を引き受けてくれた…


元夫がいつの間にか帰って来なくなって突然3人暮らしが始まり、

そんな生活の中で、気を緩める余裕もほとんどなかったけど…

こうやって飲み会のときはアルコールも入るので、

私なりに楽しむことにしていた。



そんな生活を惰性のように送って慣れ、結局離婚もし、

それからもただ生き延びようと躍起になっていたはずなのに…

もう何年も1人きりで娘を抱えて毎日を懸命になっていた。

そんな状態が当たり前だったはずなのに…

今、こんなことになってしまっている。


その夜、私はもちろん独りで自分のベッドに横になった。

昨夜の記憶がまだ色濃く残るこの躰で、

隣りに温もりがないことが、こんなに寂しいなんて…

そう思いながらいつの間にか眠りに堕ちていた。


一人で眠り、目覚めることがこんなにも虚しい。

でもだからって、誰でもいいわけじゃない…

どうせなら想っている人の温もりを…

肌を感じて…


ジリリリリーーー

けたたましい目覚ましが、物憂い思考を遮断するように鳴った。

朝の6時30分。私は目が覚め、月曜の朝が始まった。


私は仕事、娘達は小学校

そこに続くのは、日常の何気ない毎日のはず…

目覚ましを切って私は起き上がった。


部屋を出て顔を洗い、キッチンで時間を気にしながら食事の用意を始める。

飲み物を作るお湯を沸かして、3枚トーストを焼く。

冷蔵庫から昨夜作ったサラダを出しテーブルに並べながら、

ちらっと時計を見ると、もう5分で7時なのに、

誰も起きてくる気配がない…






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