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《陽炎》5-3

2018年02月12日 15:06

《陽炎》5-3

浅いところにいたとはいえ、膝までの深さがあったので、あわてて彼女を水の中から抱き起こした

大丈夫かい!?」
僕の問いかけには答えず、僕を見つめていた…

顔が…近い…

「あ…」っと、思った時には…
唇がふさがれていた…

そして…ゆっくりと唇を離し、目を開く…そして目尻が下がり、にっこりと微笑んでみせた…

「びっしょりだね…」
彼女の言葉に頷く


「また…お風呂はいんなきゃ…」
再び、彼女の言葉に頷く
「今度は…拒まないよね…?」
その言葉には…照れか、畏縮か…即答出来ないでいたが
彼女のちょっと不満げな表情を見た途端
何故か笑いが込み上げてしまい
苦笑いを見せて「ああ…」と応えた


僕は彼女の手を握り引き上げると、近くにプカプカ浮いている彼女帽子を拾い上げ砂浜の靴のとこまで、彼女の手を握りしめて歩きだした

先ほどまで積極的だった彼女がウソのように照れてしおらしく、握りしめられた手を見つめながらついてくる

実は結構無理してたのかもしれない…
でも何故?

彼女の態度の変貌にひとつの疑問を感じたが、些細な事…と頭から消し去った

僕らは喉が乾いていたのでバス停前の雑貨屋で飲み物を買う事にした

歩きながらポケットからたばこを取り出そうとしたが…海水でぐちゃぐちゃになっていた…

彼女は“クスッ”と笑う

あどけない笑顔
この女性はいろんな表情を見せてくれる…

艶っぽい表情も…
大人びた表情も…
そしてあどけない表情も…

同一人物とは思えないくらい…個性豊かだ

バス停前の雑貨屋はいかにも雑貨屋という感じの古びた佇まいで、当然たばこもあったが、僕が吸っているたばこ都心コンビニでも置いているところが少ないくらいなので、こんなところにあるわけもなく仕方無しに他のたばこを買った

彼女
「それでいいの?」
と尋ねてくる

僕が何故か尋ね返すと、彼女は慌てたようにあたふたしながら
「あ…さっきのと違うから…」
とだけ言って店の中を見回し
「あっ、花火♪」
と、話をはぐらかすように言った

やりたい?」
と僕が尋ねると、満面の笑みを浮かべ
「うん♪」
と答えた


僕らは飲み物とたばこ…そして花火を買って、びしょ濡れの僕らを怪訝そうに見つめる店主の目を後目にその店をでた

店を出ながらたばこの封を開けくわえる

その様子を眺めていた彼女が、また“クスッ”と笑う

「ん?」
僕が疑問に思うと彼女は首をふりながら
「クセなのかなぁ…って思って♪」
そう答えた彼女の言葉には、何か含みがあるようだった

僕が何か考えているのを察知したのか、彼女
「風邪ひいちゃうといけないからもどろ」
と僕の手を引っ張り歩き出した

木洩れ日の山道は陽が傾きはじめ、蝉時雨の山道に様変わりをしていた

僕らが旅館につくと旅館の受付にいたおばあさんがぐしょ濡れの僕達を見てあわてて出てきて
あらあら、たいへん、びっしょりねぇ…
いいからそのまま2人でお風呂に入ってらっしゃい
浴衣は用意しといてあげるから…
お客さん他にいないから今日は一緒でいいわよ」
と気を利かせて言ってくれた…

って?普段は混浴じゃない?…やっぱりさっきのは…意図的って事?

この女性の考えが全く読めない…

とりあえず2人で先ほどの露天風呂へ…

脱衣所で濡れた服を脱ぐ
先ほどは訳がわからず畏縮していてまともに彼女の方を向けなかったが、今度は改めてじっと見てみる

すると僕とは反対に、今度は彼女の方が恥ずかしそうにしている

よく聞く話しだが、会うまでは積極的だが、いざ会うと恥ずかしくなるというやつか?立場は逆転したのか?

彼女は僕の視線を気にしてかバスタオルをぐるりと巻いてしまっている

まあ、あまり刺激が強いのもこちらには問題が発生してしまうのでそのくらいの方がいいだろう


浴室に入り、海水を軽く洗い流してから一度湯船に浸かる
彼女は今回は僕の横に入ってきた
バスタオルは巻いたままで…

「さっきと、違うね?」
僕はさりげなく聞いてみる
彼女は黙ったまま、本音は語らない
ただ、返事の代わりに僕のタオルを押さえてた手の甲の上に、彼女の掌をのせてきた
僕は掌を返し、彼女の手を優しく握る…

彼女は僕を潤んだ瞳で見つめる
100年の恋が叶った…
そんな瞳で…

僕も彼女を見つめた
何か、忘れていた感情を思い出したように

そして見つめあい…
彼女の唇に、僕の唇をあわせ…彼女を抱きしめた

蝉時雨も止み、夕闇がせまる中
僕らは抱き合って木々の間から流れる風を受け、ゆっくりと貸切温泉にひたり、軽く体を流しあってから部屋に戻った


風呂上がりにフロントで、彼女との食事を僕の部屋で一緒にする事を伝えた為、2人分の食事が僕の部屋に運ばれてくる

僕らはアットホームながら美味しい食事の話しをながら食事を楽しんだが、お互いの話にはあえてふれずにいた

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