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情事No.24

2018年02月02日 11:13

情事No.24





私は振り返ると、何も言わずに女の手を取り、ベッドに押し倒した。
そしてズボンを脱ぎ、下着を下ろした。

何も言わなかったのは他意があるわけではなかった。文字通り、何かを言う、必要がなかったからだ。あるいは言葉にできないことがあった、と言うべきか。

上に着たシャツも脱がないまま、ベッドに仰向けになってい女の太ももを両手で開いた。
そして、自らの硬く勃起した性器を片手で支え、女の性器の裂け目の中に、ゆっくり挿入した。

女は身を硬くし、いや、とかだめとかの、形ながらの拒絶の言葉を口にしていた。いや。口にしていた気がする。なに、構うものか。私は私を守ることに忙しいのだ。

女の膣中(なか)は、ずいぶん使っていないにもかかわらず、よく濡れていた。私を一息に奥まで受け入れて、こちらの腰の動き従順に反応した。

鋭い快感が、ペニスを伝って走ってくる。
亀頭くびれは、女の膣壁をかきむしった。
女は快感絶望の入り混じった声を上げていた。
私はその声をシャットアウトした。
自分のペニスの声だけを聞くよう、務めた。


やがて射精タイミングが近づいてきた。
おそるべき速さで、私は絶頂を迎えようとしていた。
普段なら考えられない速さだ。
しかし私は、急いでいた。
少しでも早く、この状況から脱出したかった。

中は、中はダメーー。


遠くでそんな声が聞こえた。
何を言っている?
何の話だろう。

私は激しく腰を振り、女の性器をきびしく打ち据えた。
頭の中ではなぜかワグナーの行進曲が流れていた。二頭立ての騎馬車を駆って、地獄の業火をすり抜けて行く。

早く、早く。


そして、私は絶頂した。
脳裏にスパークが走り、目が眩んだ。
東京に残してきた女たちが、目蓋に浮かんだ。

すまん、綾。
すまない、歩美。


私はこの見知らぬ女の膣の中に、激しく射精した。
それが正しいことなのかどうかは、私のあずかり知らぬことだった。

女は私の下で組み敷かれたまま、表情のない目をしていた。
見るまい、と思いながらその目を見た。
涙の雫がゆっくりと膨らみ表面張力の限界で弾けると、そのまま顔の脇をゆっくり滑り下りていった。


私はシャワー室に歩き去った。
時間をかけて丁寧に、身体に残った女の気配を洗い流した。
部屋に戻った時、案の定、女の姿はなかった。


それ以降、女から連絡はない。
職業柄、私が女の連絡先を知らなくても、女は私にコンタクトできるはずだった。
例えば妊娠した場合など、だ。

それ以降、女から連絡はない。
私は東京のふたりの女に詫びを入れ、ふたりを解き放った。そして一方の女に結婚を申し入れた。人生3度目の結婚ではあったが。その提案は却下された。

俳優業は順調だった。ある映画に出演した際、「どんなコミカル演技をしても、目の笑っていない稀有な俳優」という寸評をもらった。
言い得て妙だな、と思った。

もう、あの女を待つのは止めよう、と思う。
それ以降、女から連絡はない。

やれやれ





あれから10日後。


鈍い下腹部の痛み。


そして倦怠感。


やがてシャワーを浴びながら経血の赤い筋が、太腿の白い肌を流れていった。


私の混乱と不安は、それとともに静かに流れ去った。


スマホカレンダーで日数を確かめながら、私はゆっくりと心を決めていった。


もう迷わない。


季節は巡り、潮の満ち引きが繰り返されるように。


私の戸惑いと過(あやま)ちと痛みは交互に現れ、やがて去っていった。


踏み出す時だ、と思った。

ただ、最初の一歩をどうしたらいいのかは、全くわからなかったけれど。


小田桐くん、ね…そっちへ行ってもいい?」


なっちゃんがそう声をかけてきた時、ぼくには断る理由がなかった。
ん、と頷くと、なっちゃんはこちらの布団に入ってきた。

「あったかいね、小田桐くんのお布団」


なっちゃんはそう言って、こちらの肩のあたりに鼻先を埋めてきた。普段と違うシャンプーの香りがする。

浴衣、ゴワゴワしない?」

「そういうもんじゃない?田舎民宿浴衣なんて、たいがい糊が効きすぎてるんだよ」

「うん」


なっちゃんはそれからしばらく口を開かなかった。
ぼくはその背中に手を回した。いつもながらの細い背中。その手を、ゆっくり腰の方へ下ろしていった。腰を抱いて、少し隙間のあったふたりの間を詰めた。

「忙しそうだったね、このところ」


そう、声をかけた。
うん、と声を出さずになっちゃんはぼくの肩で頷いた。

「少しは落ち着いたの?」


穏やかに問いかけるその声を無視して、彼女はこちらにさらに身を寄せた。ずっと馴染んだ妻の身体のうねりと熱が、そっとこちらに伝わってきた。


ぼくの右手はなっちゃんお尻に届く。
小さくてまろやかなヒップを包み込み、久しぶりのその感触を味わった。
くるくると、昔よくしたようになっちゃんお尻を撫でていると、自分のアレがゆっくり硬くなって行った。
ヤベ。


なるべく頭の中で、エロいことを考えないようにして、ただやさしく、妻の身体を包むことだけに集中する。

と。

なっちゃんの手が、ぼくの浴衣越しに、それにそっと触れた。
ヤバい。
いい雰囲気だったのに、ブチ壊しになっちゃう。
そう思って腰が引けた。
するとなっちゃんは、今度はしっかりと、ぼくの勃起に触れてきた。

あぁっ…。

声こそ出なかったものの、ぼくは恥ずかしさに身体を硬くした。
すると妻は、それをやさしく撫で始めた。

「……なっちゃん


こんなの、ずいぶん久しぶりだった。
ビール日本酒のほのかな酔い心地が、ぼくたちの緊張をほぐしたのか。
彼女の手は、積極的にそこを撫で回した。

あぁ…。

小さなため息が出る。


したいの、なっちゃん…?

その言葉が喉の奥に詰まって、出てこない。
しようか、久しぶりに。
軽く、そう言えたら。
けれどぼくの言葉は、喉から出て行く前にみんなカチコチに凍ってしまい、何も伝えることが出来ないでいた。

妻の手が、ぼくの勃起をやさしくマッサージする。
目を閉じて、身体の力を抜いた。
だんだんモノが考えられなくなってゆく。
妻の手は、いつしか他の誰かの手になっていくような。

任せてしまおう。
このまま、流れのまま。
そう、思った。

なっちゃんの手が、浴衣の前を割って、中に入ってきた…。


ぼくたちはその時、週末だけの小旅行に来ていた。
伊豆のひなびた漁港網元が経営する小さな旅館。
ふたりで食べきれないほどの刺身の舟盛り。タイ、ヒラメ、ブリにアジ。そして揚げ物のエビ、イカ。名物のキンメの煮付けに、伊勢海老ステーキ
キリリとしたビールと爽やかな冷酒でふたりしてその絶品料理を堪能した。

そもそもこの小旅行を提案したのはなっちゃんだった。
互いに忙しい仕事をしていて、家でもすれ違いが続き、あまつさえぼくの海外学会出席などのイベントがあり、この秋はすこしものんびり出来なかった。


ーーーーーー

小田桐くん、帰国したら久しぶりに、伊豆のあの旅館に泊まりに行こう。

ーーーーーー


ボストンホテルの部屋でLINEしてた時、なっちゃんからそんな誘いがあった。
あたしがアレンジしとくから、と彼女は言った。


学生時代に知り合った時のまま、互いの呼び名をそのままに、長い友達時代が経て、我々が結婚して四年。

たがいに三十代に突入し、仕事も増え、たがいの社会ではそれなりの立場になった。
製薬会社マーケティング担当である妻と、物理学者のぼく。

昔から、対外的なあれこれは、妻の方がぼくより遥かにやりくり上手だった。
ぼくはマイペースで自分の殻に閉じこもりがちで、なっちゃんに言わせれば、『学者になれなければ社会不適合者』だということになる。

それでもぼくら夫婦は、互いの足りないところを補い合い、それなりに楽しくやってきた。
稼ぎは外資系なっちゃんの方が多かったけれど、彼女はそれを少しも鼻にかけることもなく、またぼくも(社会不適合者なりに)そのことは少しも気にならなかった。

勤務時間が出鱈目なぼくの仕事柄、家事は出来る時に出来る方がやる、ということになっており、たがいが多忙になると、我が家下着さえもクリーニングに出すような状態になっていた。


同年代の子どもがいて、真っ当に暮らしている夫婦からすれば、ぼくらの暮らしはママゴトのように見えたかもしれない。
きっとぼくが院を卒業してからずっと同じキャンパスに通っているせいで、いつまでも大人になれないコトが原因なんだろう。

でも。
それでもぼくらにとってこの家庭は、かけがえのないホームだ。
ぼくらはここで一日の疲れを癒し、互いを慈しみ合い、静かに暮らしていた。







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