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情事No.21

2018年01月23日 23:14

情事No.21




八朔さんとはそれっきり、会うことはなかった。
LINEアカウントは連絡不能となり、それ以外の連絡手段をぼくは持たなかった。






東京に帰ったぼくは、東京彼女ともう少し上手く付き合おうと思った。もっと心を開いてSEXできるよう、努力しようと。

そんなぼくの変化を彼女は敏感に察知した。
そんな風にしないで、とある時ベッドの中で言われた。誰かの影を私に求めないで、と言って彼女は背中を向けて泣いた。

ぼくは何をどうしたらいいのかわからなくなった。
わからなくて、朝方の人気ない街を何日も何日も何日も歩いた。
いつかばったり、あのひとに会えるのではないか、と思いながら。
しかしそんなことは起こる訳もなく、ぼくは途方にくれた。

そうしていつしか彼女の傷は癒え、その笑顔が戻った。ぼくらはまた、以前のように穏やかに交わっていた。とりたてて語ることのない、静かなSEXをした。

ぼくたちが別れたのは、それから半年ほどしてからのことだった。



こんなことをしていては、いけない。


頭の中ではすっかり分かっていた。


いつか危ない目にあうかもしれないし、取り返しのつかないことになるかもしれない。


仕事だって失うかもしれないし、何より、あの温かな家庭を壊してしまうことになるかもしれない。


これきりにしなきゃ、これで最後にしなきゃ。


何度もそう思った。


でも、よくある話のように。


その日が来るまで、私はしっかりと、それを理解出来ていなかった。


その日が来るまで、それに痛みが伴うことを忘れていた。


私は世間知らずの愚かな女だった。


ヤバい女だな、というのが第一印象だった。
こうして目隠しをして、大人しく椅子に座らせても、その印象は変わらない。

ヤバい女だ。

「上着を脱ぎなさい」

「…はい」

ブラウスボタンを、上から順に、外しなさい」

「…」

「返事は?」


目隠しの顔を俯かせて、その女は首をちいさく、縦に振った。

「口で返事をしなさい」

「…はい」

もう、声がかすれていた。
いちばん上のボタンが外れていた上品な白いブラウスボタンを、女は自分で外してゆく。
上から順に、ふたつ目、みっつ目。そこで指が止まるから、

「全部外すんだよ。言わなきゃわからないのか?」

すこし声に苛立ちを交えてそう言った。

「…」


下唇をかみしめて、女はボタンをはずしてゆく。
ブラウスのすき間から、紺色のブラジャーが見える。それは白いブラウスの上からでも透けて見えていた。一部の女は、こうして透けるのを承知で、薄い色のシャツの下に濃い色の下着をつける。そのくせ、タイトスカートヒップパンティーのラインが見えるのを嫌って、Tバックをはく。
大いなる矛盾だ。


「脱ぎなさい。ボタンを全部外したら…」


私は女の前に立ったまま、そう告げた。

「…でも」


女は口答えする。

「でも、なんだ?」

「…」

女は答えない。

「嫌なら、いますぐここから帰りなさい。私はそれで、一向に構わない。試してみたいといったのは君だ。自分で決めなさい」


目かしくされたままの女は俯いて、ブラウスを肩から外した。
白く、細い肩が現れた。

「脱いだものは、床に捨てなさい」

「…はい」


グレイのタイトスカートストッキング上半身は紺のブラジャー姿となった女。
小ぶりな乳房くびれウェスト。長い手足。
私は黙って、その姿の女を見た。

「椅子から立ち上がりなさい」

「…はい」

「そのまま、スカートのホックをはずすんだ」

「…」


下唇を強く噛みしめる女。その唇が、奇妙な形に変形している。

「同じことを、二度、言わせるつもりか?」

「…いえ」


女はスカートのホックをはずすと、すとん、とスカートは床に落ちた。
中からは、ブラジャーと同じ紺色の、サイドがひも状になった華奢なショーツが現れた。
ショーツからは、アンダーヘアがはみ出していない。


ヘアの手入れはしているようだ。
それは私を満足させた。
私は、自分の飼っている女たちはすべて、アンダーヘア永久脱毛させていた。単に好みの問題として。

適度にエア・コンディションされた部屋の温度。
しかしこのようなことになると見越して、すこしだけ室温を上げておいた。
だから女は寒くないはずだ。

このようなプレイをするとき、そういう細かい気づかいが極めて重要になることを、私は経験から学んでいた。

余計な夾雑物に気を捉われて、集中が途切れることがないように。
大切なことだ。

「もう一度、椅子に腰かけなさい」

「はい…」

女はゆっくりと、着座した。
左右にひじ掛けのついた、ひとりがけのソファーだ。


窓の外には、札幌夜景
居心地の良いホテルだ。
私は撮影でここにしばらく滞在することとなり、制作会社にこのホテルアレンジしてもらった。
スウィートと呼ぶほど格式高くはないが、ある程度の連泊を想定したしつらえが、部屋全体になされている。

「両脚の太ももを、左右のひじ掛けにかけなさい」


私は冷静に命令する。

「え…」

戸惑う女。

もう一度、指示を出そうか、それとももっときつい言葉で咎(とが)めようか、一瞬迷い、そして私は黙る。
目隠しされた女は、私の言葉を待っているようだった。

私はあえて、口をつむった。
女が私の予想通り賢い女であるならば、指示に従うだろう。
さもなくば、衣服を着させて部屋から追い出すだけだ、と思っていた。

目隠しされた女が全身で私の気配を探る。
私は息もせず、じっと女の次の動きを見守る。



やがて、女は腰を少し前にずらし、両脚をソファーのひじ掛けに置いた。
下着姿のまま、私の目の前で女が股間を晒していた。

私は無言でしゃがみ込んだ。
女の椅子の前の床に膝をつく。そして上体を傾け、濃紺のショーツのクロッチの部分に顔を寄せる。

女はこれからなされることに気づけない。
ただ、荒い息をしているだけ。

私は女には触れない。絶対に。
ただ、

くん…、くくん……

と、鼻息だけを立てて、女の秘部の香りを嗅いだ。

「何を…!?」

女の焦る声がする。

「黙れ」

私は静かに一喝する。

「口を、開くな」


女の脚がわずかに竦(すく)む。
一瞬、閉じかけたM字開脚を、元の姿に戻すまでの数秒。
女の中でのためらいと羞恥が、好奇心卑猥さにシフトして行く数秒。


案外、こういうプレイの最初のこの瞬間が、最も楽しいのかもしれない。私たちのような男は、この瞬間にある種のエクスタシーに達する。そしてこの後は、女を服従させるようにみせる奉仕の時間が続くだけなのかもしれない。


くん、くくん…


女の秘部の香りは、わずかな小水の酸味と、それを上回る蜜の甘酸っぱさに満ちている。女のココの匂いは顔や体型と同じように人によって千差万別であり、かつ同じ女でも生理の前後によって全く違う香りを発する。

女が腰をよじる。

目隠しされたまま、下着姿で見知らぬ男の前に股間をさらし、性器付近の匂いをかがれている、というシチュエーションに、どうしようもなく興奮し始めている。そしてそんな自分を必死で抑えようともしている。


ある種の女は、ここで羞恥心を解き放ってしまう。積極的に性の快楽に溺れ、いや、自ら飛び込み、主人に恭順する。
かつて、そういう女を何人か相手にしたことがある。そしてある時から、そういう女には全く興味を惹かれなくなった。


そのような女は目つきで分かる。
最初のアプローチの時に、無遠慮なまでにこちらの目を覗き込むのが、そういう女に共通した癖だ。

ーー目は口ほどに物を言い。


その格言の通りに、そういうあけすけな女には、こういうプレイは恐らく合わない。
精神的に未熟なのか、あるいは底が浅いのか。
いずれにせよ、これは精神の戯れなのだ。縄や道具に拘泥(こうでい)する向きもあるようだが、私はそこには全く惹かれない。


そのために大切なのは、道具ではなく、パートナーだ。

やれやれ

私はこの女の、高まってゆく秘部の匂いをかぎながら、ため息をつく。

ヤバい女だ。


本当に。


このホテルに泊まって最初の週末だった。
金曜の夜。明日は撮休だと聞いていた。
土日に休むなんて、のんびりした地方ロケはいいな、と思い久しぶりに酒を飲むことにした。
スタッフの誘いを断って、ひとり、このホテル最上階のバーだった。


「あちらの方が、ご一緒してもよろしいでしょうか?、と」


アイラドキッチンになっている最上階のバァラウンジ。そのアイランドに設(しつら)えられたバァカウンターで、ポーランドウオッカを飲んでいた。

キリリと冴えた透明な酒。
瓶の中に一本の松の葉のような長い尖った草が入っている。ハーブの効能を持つその草のおかげで、無味無臭ウオッカに程よい香りが混じる。


ウオッカという酒は、人を鎮静させる効果がある。
ま、そもそも根の暗い性格俳優の自分にとって、鎮静も何もないが。

北の街のバァで、ひとりで黙って飲む酒として、ふさわしい。
小皿に出されたナッツをつまみながら、その静かな時間を楽しんでいた。
無遠慮なその声かけがされるまで。


見ると、アイランドの向こう側から30代の女がこちらに会釈してきていた。とりたてて美人ではないが、おだやかに微笑みかけるその余裕が面白そうだった。
ひとつ頷いて、同席を許した。

「ーーさんですよね?」


と、女は私の名を呼んだ。






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