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6th Haneda Part 1 まだバブル。

2017年12月16日 18:16

6th   Haneda  Part 1  まだバブル。

まだバブル
かりそめの好景気に日本が涌きかえっていた頃だった。
九州に買い出しに行きたい、と言う妻を送って
まだ改装に着手したばかりの羽田空港へと向かった。
たまの休暇をとっていたから
また、明日「お迎え」に来るまではゆっくりと時間が流れる筈だった。
ゲートまで妻を見送ればもう今日の予定は終了。
何もすることがないので
空港ビルの屋上、見学デッキに向かった。
飛行機青空に飛び立ってゆく姿を久しぶりに眺めようと思ったからだ。
殺風景な金網の向こうには、青や赤やレインボーカラーの機体が
轟音とともに飛び立ち、着陸する。
いささかくたびれた望遠鏡が並んでいるが
実際にのぞき込んでいるのは、子供や飛行機マニアなど
少数の人たちだけだった。
ふとふり返ると一番近くの望遠鏡台に
およそ場違いパステルカラーが張りついていた。
20代なかばだろうか。
長い髪がすらりとした肢体を強調するかのように
風になびいている。
白いシルクマニッシュブラウス
うすいブルーのジャケットとタイトスカート
どうやらのぞむ角度に望遠鏡が首を振ってくれないらしく
腕に力を込めてはいるがほとんど蟷螂の斧だ。
困ったように、すがるようにこちらを見つめる大きな瞳が
驚くほどきれいだった。
思わず歩み寄って「どうしたの?」と聞いたが
この時は当然、下心など全くなかった。
「動かないんですよ。」と不服そうに言う声はアルト
少し、かすれ気味で甘えた感じが心地よく耳を打つ。
ごく自然にアイピースから離れない彼女の後ろに立つと
抱きしめるような形になってしまった。
腕を伸ばして望遠鏡を振ろうとしたが
台座に不具合でもあるのか、確かに重い。
「どっちの方向?」と聞きながら。
のぞみの方角に振ろうと腕に力を込めると
思わず身体が密着してしまった。
爽やかなオーデトワレの香り。
なびく髪の間から覗く白いうなじ
鑑賞する暇もあらばこそ、懸命になって力むと
タイトミニの腰の部分に
こちらの局部があたる形になってしまう。
あまりにも気まずいので腰を引いたとき
彼女は思ってもみない行動をとった。
「ふう」というため息とともに
お尻を追いかけるようにつき出したのだ。
おかげで密着の度合いが高まってしまう。
「うん?」と思った時は、もう反応して硬度が増していた。
と、それを確かめるように、さらに腰をつき出す。
事態の進展について行けず、思わず
「ごめん」と謝ると
今度は微妙に腰を揺すりだして、
さらに硬くなったペニスにこすりつけてくる。
すでに息づかいが荒くなっていた。
突然、首をねじってこちらを向くと
じっと見つめてくる。
あくまで美しいのだが、すでに雌特有の表情になっている。
まるでフェロモンの強風を
たたきつけられたような気がした。
いささかうろたえたためか
月並みな言葉しかでなかった。
「どう?お茶でも。」
こっくりとうなずく彼女を見ていると
どうも夢でも見てるんじゃないのかなと思ってしまう。
それでも見学デッキの階段を下り、
エレベーターに乗り、
駐車場から車を引き出す頃には
「何という幸運」と思い始めていた。
きっと鼻の下が伸びきっていたに違いない。

当時の羽田にはメインビルから少し離れたところにTホテルがあった。
そこの1階にはパイロットやスチュワデスたちがよくつかう
国籍不明の、だがそれなりに雰囲気がある、しかも安いレストランがあった。
車の乗り降り、
ドアを先に入ってゆく態度、
ふわりと席に着くしぐさ、
どれをとってもひどくさまになっている。
それが証拠にエアラインの男たちの視線がそれとなく注がれている。
昼にはまだ少し早いので、誘いの言葉どおりにお茶を飲む。
まさに沈黙のあいまをぬっての会話だった。
もとより時間はたっぷりあるので焦る必要はないのだが
なぜかするりと逃げていってしまうような気がするのと
あまりにミステリアスな事態とでつい
直接的な質問が口をつく。
それでも、名前も年も聞かなかったのは
言いたくないと察していたからだろう。
そして、わかった事は
長年つきあっていた彼氏地方に赴任して
久しぶりに上京してくること。
でも、地方で女をつくってしまった彼とは別れることにして、
それを告げるために羽田に迎えに来ていたこと。
最後の行為に思いっきり没我しようと思っていたのに
彼氏は現れなかったこと。
などであった。
美しい女性の口から
別れのセックスを思いっきり楽しみたかった…
と聞かされた時には正直驚いたが
次の言葉にはもっと驚ろかされた。
「だから、抱いてください。欲しいんです。」
美しい顔・身体。
全身からあふれる知的な雰囲気
セックスに飢えてせっぱ詰まっているような様子など
少しもないのに明らかに雌の香りを漂わせている。
「いったい何者?」と思うのだが、
その好奇心は押し込めていた方がよさそうだった。

(続く)

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