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Moment No.32

2017年11月11日 09:02

Moment  No.32

「やっぱり美穂さんだ…」


僕は可笑しくなって笑った。
美穂さんを抱き締めながら笑ったら、美穂さんも微笑んだ。

背徳感もスリルももういらない。
自由の身になった僕達は
ただ、身体で僕達の消えなかった愛を確かめるだけだ。

しばらく滑らかな美穂さんの肌を撫でながら抱き合っていた。

美穂さんの華奢な身体からのぬくもりを、もう二度と手放すまいと心に誓う。
僕の守りたい人。僕の守るべき存在。

こんなふうに以前一度だけ思った。

あれは確か十代の頃だ。

その守るべきぬくもりは手の指の隙間から零れ落ち、無くなってしまったけど、
今もう一度手に出来るなら今度こそ、今度こそ離さないようにしなくては…

キツく美穂さんを抱き締めると、美穂さんの瞳は憂いと優しさで僕を包んだ。


「美穂さん、もう離さないよ」


僕は美穂さんの唇を奪い、再びあなたを味わい始める。
愛を身体で語ろう。
僕の愛をあなたに注ごう。






…美穂side…


誠さんが再び私に覆い被さり、熱く熱く唇を寄せた。
あなたのキスはどうしてこんにも優しさが溢れているの?

泣きそうになる。

だって本物の誠さんなんだもの。

何度、あなたに抱かれる夢を見たか分からない。
あなたの薄れていく面影に縋り、あなたの口付けを思い出し、あなたの抱き方を思い起こし慰める日々はもう終わった。

今一度、あなたに抱かれるならもうこの身が滅んでも悔いはない。

誠さんの唇が耳元に辿り着く。


「ひとつになろう」


そう囁く誠さんに私は黙って頷いた。
誠さんの手がゆっくり私を艶やかに染め上げる。

蜜を含んだそこに指を滑らせ、私はいくらでもあなたの指先で昇る。

甘く漏れる吐息にあなたは満足そうに微笑む。


「誠さん…誠…もう…」


「ああ、僕も限界だ。あなたが欲しい。美穂さん…」


誠さんは私の二つの襞を開き、強く硬いそれの先をゆっくりとあてがった。
私の中はそれを呑み込もうと吸い付くように捉えた。


「凄いよ…吸い付いてくる」


「だって欲しいのっ…」


と強請ると、誠さんは一気に奥まで貫いた。


「ああっ…」


私は脳まで突き抜かれた感覚に襲われた。


「誠さっ…」



「やっと繋がった…僕達はひとつだ…」



そう言い放ち、誠さんは私の上で動き出した。

激しく熱く…

いくつもの寂しい夜を越えて…

ただ恋しくて恋しくて

忘れようとしたあなたが今ここに存在する。
その存在を示すかのように、私に再び愛を注ぐ。

終わった筈の愛がまだこんなにも互いを求めていたんだ。
出逢いは遅過ぎ、一度は過ちを犯してしまった。

だけどこの愛は本物だから…


偽りはないから…


離したくない。


私の中がキツくあなたのをまとわり、締め上げた。
あなたの顔が歪み、快楽に耐える。
耐える事はない。
あなたはただ、私に愛を注ぐだけ。

あなたのが私の中で更に強く膨張した。


私ももう限界だ。


昇る、昇る、あなたとの最高の楽園はすぐそこよ。


「美穂さっ…、イくっ…」


「私もっ…」

私達は境目が無くなる程深く結びつき、同時に楽園に飛んだ。

充分な愛を放った誠さん…
私の上で崩れ私は汗ばんだ誠さんの身体を思い切り抱き締めた。
愛し、愛された互いの身体がこの上なく愛しく貴い気持ちで満たされていた。
こんな極上の日が私の人生に再び来るなんて…
諦めていた人生がまた輝きを取り戻し始めていた。

それは紛れも無く誠さんというあなたの存在によって…








…誠side…


しっかりと僕を抱きとめるあなたの腕の中。
僕のはまだ美穂さんの中に留まったままだった。

トクントクンとまるで脈打つかのように美穂さんの中は動いている。
その振動に僕のは刺激され、快楽の余韻に浸った。

そっと身体を離し横になると、美穂さんはしがみついてきた。
可愛い人だ。
僕の腕は美穂さんの下を潜り、しっかりと抱き寄せた。

「もう美穂さんはやめる。あなたはもう僕だけのものだから。
美穂…愛してる。 一緒に僕と一緒に生きよう」


「嬉しい…今生まれてきて一番嬉しい…
誠さん…ううん、誠…愛してるわ」



僕は美穂に甘く優しくキスをした。

最高に幸せな瞬間だった。




僕らはFREE BIRDからまたツガイになる。
人生は後、半分はある。

後半の僕の人生をあなたに…

あなたと共に…


新しい鳥籠を用意しよう。
僕とあなたと愛の詰まった鳥籠を…








…美穂side…


えっと、カップはどこにしたかしら?
ああ、もう梱包しちゃったんだ…

コンビニで買ってきた、ペットボトル紅茶をそのまま飲み、ガランとしたリビングを見渡した。

目を閉じると結婚当初の若い私と元気だった頃の進が笑っていた。
あの頃の私は未来なんてなんの不安もなく笑っていた。
愛と幸せは一緒に私と進にあるんだって信じて疑わなかった。

人は必ずしも自分の描いていた未来予想図通りにはいかない事がある。
沢山、笑って、迷って、泣いて、選んだ予想外の今。

正しいとか正しくないとか

悪いとか悪くないとか

悩んだ事もあったけど、私の心にはそんなモラルは通用しなかった。
今はただ…自分の気持ちに正直に生きてみようと思う。


ねえ、進…

私幸せになってもいいよね?

テーブルに置かれた、進の位牌を手に取り問いかけてみる。

進は当然返事はしない。



ピンポーンとインターホンが鳴った。


「ごめんね~、遅くなっちゃって」


千夏ちゃんが、娘、心と一緒にアタフタとやってきた。


大丈夫よ」


「心のお教室があってさ…それにしてもこの家随分傷んでたのねえ、よく売れたわ」


千夏ちゃんは何もなくなったこのリビングをしみじみ眺めて言った。
心ちゃんは私をジッと見ていた。
心ちゃんはもう10歳になり、ほんの少し進に目元が似ていた。


「ほとんど土地代だけよ」


「そうよねえ」


共通点の進という存在がいなくなった今、私達には大した話はない。


「あ、それね」


私の持っていた、進の位牌に千夏ちゃんは気づいた。


「あ、うん、待って、包むわ」


私はテーブルにあったハンカチを広げ進の位牌を丁寧に包んだ。


「はい、あなたのお父さん、お返しします」


「ありがとう…美穂さん…お幸せに」


千夏ちゃんは進の位牌を受け取りニッコリと笑ってくれた。
目元がやっぱり進に似ていた。


「ありがとう、千夏ちゃんも心ちゃんも元気でね」


「ええ、じゃあもう行くね」


「うん、気をつけて…」


千夏ちゃんは心ちゃんの手を引き進の位牌と共にこの家から出て行った。


私が玄関で見送ると、

心ちゃんが一度だけ振り返り「さようなら」と言った。


「さようなら!」


私は大きく手を振った。



さようなら、進


私、幸せになるよ!




天気は良いが風がひんやりとして、巻いていたニットストールを巻き直し、ブルっと少し身震いした。
玄関先の楓が色付き秋本番だ。
この先の私の未来予想図はもう描かない。

だけど人生の折り返し地点で私は新しい道を歩こうと思っている。


それは、一人ではなく…



彼と二人で…歩いて行く。



秋空が気持ち良く澄み渡り、私の都合の良い神様が微笑んでくれてるような気持ちの良い日だ。


さて、私もこの家にさよならしよう。


パタンと玄関を閉め、一度だけ深く空気を吸い込んだ。


私の家の匂いを深く嗅いだ。


最後の我が家の香りがした。








このウラログへのコメント

  • 里織. 2017年11月11日 09:24

    美穂は誠と幸せになれるのね!
    まさかこれから…?
    このまま幸せにしてあげてくださいね

  • 吾朗 2017年11月11日 09:27

    > 里織.さん

    はい
    大丈夫ですよ

    いつもありがとう
    里織さん

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