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Moment No.7

2017年10月16日 00:21

Moment    No.7

目が覚めると外は真っ暗だ。


やだ、相当寝ちゃった!


私は慌てて着替えてキッチンへ向かうと進がいない。


テーブルにある携帯が点滅している。


携帯には進からのメール。


『千夏の所にいる。夕飯はいらないよ。

今日は随分楽しんだからゆっくりしなさい』


私はため息をつきキッチンへ向かった。


はあ~一人分なんて作る気しない。


私はレトルトカレーを戸棚から出し、それで簡単に一人きりの夕食を済ませた。


風呂に入り、風呂上がりの一杯を片手にパソコンを開いた。



『美穂さん

夕べはメール出来なくてすみません。

あれから会社の飲み会があって飲んだくれてました。

若干二日酔いです。


昨日のあなたとの時間が夢のようです。


僕もあなたが美穂さんで良かった。

というかずっと重ね合わせて想像してました。


素敵な美穂さんに僕の恋は走り出しています。

どうかこの想いが今日もあなたに届きますように 


誠   』


ワインを一口ゴクリと飲んで私はパソコン画面に微笑んだ。


もうそこには主婦の美穂はいない。


私はただの美穂になる。


恋する女の美穂に…










…誠side…


あれから一週間、美穂さんとは実は携帯アドレスを交換し前よりぐっと頻繁にメールしている。


頭の中は美穂さん一色だ。


パパ~」


休みだからゴロゴロしようと部屋で寛いでいた所、雪がデカい声で呼んだ。


僕はだるめな身を起こしながら返事をした。


「どした?」


ドアを開けリビングを見渡すと、雪がソファーを持ち上げようとしている。


「何やってんだ?」


「凄いゴミなの。ちょっと持ち上げてるからそこの掃除機で掛けてよ」


頑張って持ち上げてるが、掃除機が入る程ソファーは浮いていない。


「俺が持ち上げるから、雪掃除機掛けろよ」


「そう?お願い」


僕は雪と交代してソファーを持ち上げた。


雪は急いでしゃがみ込んでソファーの下のゴミ掃除機で吸った。


ジーンズの腰から色気のないボクサーパンツのゴムが見えている。


不覚にも美穂さんの下着は…とか想像してしまった。


「オッケー」


雪の声にはっとしてソファーを下ろした。


パパ、買い物行こう。ティッシュが安いんだ。車出してよ」


「はいよ…」


僕と雪は休日の買い溜めに出掛けた。


何て事ない平凡な休日だ。


ホームセンターで買い物中胸ポケットの携帯が揺れた。


僕は直感で美穂さんだと分かる。


「雪、トイレ行ってくる」


僕は雪に嘘をつき雪から離れた。


トイレの個室に入りこっそりメールを読む。


やっぱり美穂さんだ。


『誠さん、休日ですね。

今日は家族サービスかしら?

私も主人と銀座ランチしています 

鱈がとても美味しいわ』


銀座ランチか…セレブだな。


と思いながらも、僕だって美穂さんとランチしたいと思った。


『美穂さんこんにちは、鱈美味しそうだなあ。

僕は妻と買い出しです。

ティッシュの買い溜めですよ。

僕もあなたとランチしたいな。

良ければ来週食事に行きませんか?』


僕はついでにトイレを済ませ出ようとしたら、また携帯が揺れた。


『ええ、是非ご一緒したいわ。

またゆっくり決めましょう。

良い休日を…』


僕はニヤリと笑いながらメールを読み閉じた。


また美穂さんと会えると思っただけで浮かれた。


ヘラヘラしながら、ホームセンターで雪を探す。


目は雪を探してるくせに心ここに在らずだ。


パパ、おそ~いっ」


雪は膨れた顔してレジに並んでいた。


「悪い、腹痛くて」


僕はまた平然と嘘をつく。


小さな嘘をつく度に僕はチクリと胸がした。









…美穂side…


誠さんと来週食事に行く事になった。


場所は誠さんに任せている。


ただ土曜日になんて家を出ようか…


進につく嘘をあれこれ考えた。


そこで、知世にとうとう告白した。

仕事の合間に伝票整理でパソコン前にいる知世にさり気なくコーヒーを出す。


「ありがとう」


「うん、あのさ…」


「何?」


知世は手を休めない。


「土曜日何してる?」


「土曜日?」


知世は手を止めコーヒーカップを握り、私を見た。


一瞬ドキリとした。


「人と会いたいんだけど、知世とランチしてるって事にしていい?」


知世は全て把握した顔をした。


「いいわよ。例の彼ね。私の時もアリバイ作りよろしく」


コーヒーを一口飲みあっさり承諾。


直ぐにパソコンに向かったので拍子抜けした。


「ありがとう、よろしく」


礼を言い仕事に戻ろうとしたら…


「美穂、協力するんだから報告よろしく」


とニヤリと笑った。


私は苦笑いで返すだけだった。


その夜、進に早速土曜日は知世とランチに行くと嘘の報告。


進は何の疑いもなく二つ返事だった。


こうして、秘密逢瀬の度に嘘が重なるんだと胸が痛んだ。


それでも会いたかった。


会いたいと思う気持ちを抑える事が出来ない程、私の気持ちは恋に走り出していた。








…誠side…



今日は美穂さんに会うのは二度目。


胸の高鳴りはさっきから五月蠅いほどだ。


今日の美穂さんはどんな雰囲気だろうとあれこれ想像していたら、目の前に本人登場だ。


赤いコートに身を包みクリスマスシーズンにはピッタリの装いだった。


「お待たせしました」


「いえ、あ…なんか素敵ですね。
赤いコート似合ってます」


「ありがとう」


少し恥じらう美穂さんが格別に可愛い。


「じゃあ、行きましょう。個室予約してあります」


「楽しみ…」


僕達は雑踏の中、手は繋がず、つかず離れずの距離で歩いた。


「どうぞこちらで…」


僕達は静かな住宅街の一角にあるレストランにいる。


ここは個室があるからチョイスしたんだ。


互いに一目につきたくないのと、
話も聞かれたくないのもあったが、
何より美穂さんと二人きりになりたかった。


値段はそこそこするがランチという事でなんとかリーズナブルだ。


三畳程の個室に僕達は通された。


美穂さんが赤いコートを脱ぎ始めると、僕は急いで後ろに回り手伝った。


フワリと甘いローズの香りがする。


「ありがとう」


僕はそれをハンガーに掛け、自分のピーコートも脱いだ。


美穂さんは薄い桃色のシンプルニットアンサンブルにタイトな黒のスカートだった。


シンプルな装いが美穂さんの美しさを引き立たせていた。


僕達は向かい合って座った。


料理長オススメランチを頼み、赤のグラスワインを頼んだ。


店員がドアを閉め僕達はようやく二人きりになった。


「個室って落ち着くわ。それに素敵な雰囲気…」


窓から中庭が見える。


きっと夜ならライトアップされるだろう配線が木々に巻き付いている。


テーブルも椅子も凝ったヨーロピアンのデザインで、スタイリッシュ雰囲気だ。


普段雪達とファミレスしか行かない僕はちょっと緊張した。


個室で良かったとつくづく思った。


「そうですね…出来れば二人きりの方がいいかなって思って探しました」


美穂さんは窓から目を離し僕を見て少しはにかみながら微笑んだ。







…美穂side…


誠さんは食事をしながら話題を色々持ち掛け楽しく会話を盛り上げてくれている。


爽やかな笑顔と時折見せる真っ直ぐな眼差しに私はドキドキしっぱなしだ。


「そうだ、美穂さんこれ…良かったら聴いてみて下さい。

結構キュンキュンするんですよね~」


そう言って一枚のCDをくれた。


「僕…あんまり自由なお金ないし…でも今週はクリスマスだし」


ちょっと恥ずかしがりながら言う誠さんの気持ちが嬉しかった。


「ありがとう。聴いてみる。

私からも一応クリスマスプレゼント


私は前日にこっそり買ったプレゼントを渡した。


「うわっ、プレゼントなんて何年ぶりだろう。感激です!ありがとうございます!」


凄く喜んで受け取ってくれた。


「開けてみて」


「はい!ドキドキするな」


そう言いながらラッピングを外した。


「うわっすげえ」


私のあげたペンを手に取り感激してる。


「それなら、奥様にバレないで使えるでしょ」


「すみません…気使ってもらって…

いや、嬉しいな。感動です!

大事に使わせていただきます!」


とっても嬉しそうな笑顔で私もとても嬉しくなった。


なのに誠さんの表情が暗くなった。


「ごめん…CDなんかで…」


「ううん、嬉しい」


私が微笑むと誠さんも笑顔に変わった。


「美穂さん」


「はい…」


「手を出して」


私はテーブルの上に手を出した。


すると誠さんはギュッと私の手を握った。


私はかあっと恥ずかしくなる。


「美穂さん、僕はあなたが好きです」


「・・・・・・」


私は恥ずかしくて言葉が出ない。


「僕はもうあなたを手放したくない。

お互い既婚者同士だけど、でもこの気持ち押さえられない。

あなたの生活は絶対壊さない。

誓います。

許されたほんの少しの時間だけど僕はあなたと過ごしたい。

僕の恋人になってくれませんか?

夢の時間を僕と一緒に過ごしましょう」



誠さんの揺るぎない眼差しが熱く私に降り注ぐ。


私はコクリと頷いた。


すると誠さんは手を離し、私の横に座った。


「ありがとう。美穂さん…あなたを大切にします」


誠さんは私の背に腕を回し優しく抱き寄せた。


心臓の高鳴りはきっと誠さんにも聞こえてる。


「誠さん…」


言葉が出ず名前しか呼べない。


誠さんの手が私の頬を捉え、私が映る瞳が近づいてきた。


私はそっと瞼を下ろす。


次の瞬間互いの唇が重なった。


二度目の逢瀬は甘くてとってもドキドキとし素敵なデートのまま幕を閉じた。



自宅に戻り早速CDを開いてみる。


すると一枚のメモがあった。

~~~~~~~~~

美穂さん…今の僕の気持ちは『君が好き』の曲そのものです。


僕の気持ちがあなたに届きますように…


僕の最後の恋の相手はあなただけです。


~~~~~~~~~

CDを出し聞いてみる。


それは恋する気持ちを素直に歌った素敵なラブソングだった。




私はちょっぴり切なくなって涙が出た。


誠さんの想いがメロディと共に胸に染み入る。


誠さん…私も同じ気持ちです。


私はあなたが好きです。


自分の本当の気持ちに気づき切なくて涙が止まらなかった。


「ただいま~」


その時、進の声がした。


慌てて涙を拭いCDを止めた。


「おかえりなさい」


何事もなかったように私は笑顔で応えた。



私達の秘密の恋はとうとう始まった。


こっそりとメールで言葉を交わすと、会いたい気持ちが募る。


私達はもちろんクリスマスお正月も一緒には過ごせない。


誠さんは年末年始は実家の京都帰省した。


その間も律儀に暇を見つけてはメールをくれた。


あっという間にお正月が過ぎ、いつもの生活が始まった。


誠さんとなかなか時間が合わず漸く会う約束を取り付けたのは年が明けて二週間後だった。


私は三日も前から何を着ようか考える程楽しみにしていた。


サボっていたボディマッサージや、ストレッチもまた再開して、自分磨きに自然と力が入った。


なのに…当日誠さんに午前中急用が出来てしまった。


奥さん歯医者の送迎…


私は現実を突きつけられた気分になった。


お互い二番目なんだなあって…


そんな気分のまま午後に最初に行ったジャズ喫茶店で誠さんを待った。



キィーっとドアが開き誠さんはキョロキョロと私を探し気がついた。


ニコリと爽やかに私に笑顔を向けた。


その瞬間どんよりした気持ちが吹き飛んだ。


私が一番になった瞬間だ。


「すみません、お待たせしちゃって」


「ううん…」


上着を脱ぎ、向かい側に誠さんが座るとトクンと胸がなる。


恋人の時間の始まりだ。










…誠side…


美穂さんと会うのは久しぶりで少し緊張した。


美穂さんが前よりずっと美しく見えるのは気のせいだろうか?


思わずジッと見つめてしまった。


あけましておめでとうよね?」


「あっそうだ、今年もよろしくお願いします」


「こちらこそ…」


お互い照れくさくてちょっと沈黙してしまった。


「ご注文は?」


渋いマスター直々に注文を取りに来た。



「じゃ、ブレンドで」


「はい、ブレンド一つですね?」


「美穂さん、おかわりは?」


「まだ、あるわ」


美穂さんはにこっとした。


「じゃあ、一つで」


「かしこまりました」


注文を取り終えマスターがカウンターに戻っていく。


バドパウエルピアノ音色が心地良い。





「あっそうだ、美穂さんにお土産。大したもんじゃないけど」


僕はポケットから小さなお土産を出し渡した。


それは袋だけでも分かる御守りだ。


「御守りね、ありがとう。嬉しい」


そう言いながら袋から出し嬉しそうに御守りを撫でた。


その指先が妖艶でドキリとした。

「大切にする…」


「僕だと思って…」


「うん…」


お互い言葉少ないのに、僕達は今同じ気持ちだと思うだけで幸せだった。


美穂さんが御守りを閉まった時コーヒーが届いた。


二人でコーヒーを同時に飲んだ。


美穂さんがコーヒーカップを置き、手を引っ込める前に僕はその手を取った。


テーブルの上で僕の手は美穂さんの手を包み柔らかい体温に触れた。


それだけなのに僕は満足した。

最初こそ下心全開だった僕は今や完全に恋するアホだ。


でも今はこの気持ちを大切にしたい。


愛おしい、滑らかな肌を指先でそっと撫でた。



恥ずかしい…」


美穂さんが恥ずかしがって手を引き抜いた。


だけど僕が握っていた手を、もう片方の自分の手で嬉しそうに撫でた。


チラリと上目遣いで僕の方を見た瞳にはハッキリと好意を感じた。


バドパウエルピアノはまだ続いていた










このウラログへのコメント

  • 里織. 2017年10月16日 00:43

    やっぱり恋するっていいですね

    純愛って感じがします

    私もそんな恋 してますよ

  • 吾朗 2017年10月16日 00:47

    こんばんは
    里織さん

    そうですね
    愛というスパイスが何倍も快楽を倍増させますから

    羨ましいです(笑)

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