コンドームとの初めての出会い

今度産むからね
だから「コンドーム」
コンドームを初めて
見たのは38年前
場所は居酒屋…





当時、私は東映動画直系のスタジオでアニメーターをやっていた。


NHKアニメ第2弾『キャプテン・フューチャー』、『キャンディ・キャンディ』などの動画マン。


16歳でアニメーターになって2年目の秋、社長が投資に失敗して破産した。


私たちの給料も遅配が始まる。


社長による使い込みな訳で、色々揉めたりもしたが、基本的には皆、お人好しだったりする。


頭のよゐこなら、沈みゆく船には早々に見切りをつけるだろうが、結局殆どの人間が最期の最後まで残った。


主力メンバーは大手スタジオに移れた。
だが、半数の人間は自分の進路を考えなければならなかった。


私はその頃、新聞配達とアニメーターを掛け持ちしていたので、住と食は自力で確保していた。


だが、薄給のアニメーターの皆は、中々にこれが、シビアな問題だったのだ。


進路が決まっていなかった何人かで、居酒屋で飯を喰っていた時に、色々と話したことがあった。


16歳でアニメーターになった私は、当時、漸く18歳になったばかり。


同期は勿論、全員が歳上だったが、私が2年目だから、後輩も又全員が歳上だった。


1年目の後輩の女の子Kサン、田舎に高校の同級生の恋人がいる。


アニメーターを続けるべきか、それとも田舎に帰ろうか、揺れていた。


中卒の私には、高校の同級生って時点で、もうキャパを超えていたが、口は出さずとも、話の輪には加わっていた。


「遠距離だと、男の人って難しい？」


Kサンに訊かれたのは、私とは同期の(とは云っても、6歳上だが)、Yサン。
高知の元暴走族で、地元に彼女が居る。


「俺はそんなことないけど、彼氏がどうかは、彼氏に訊いてみないと分からないよ」


「やっぱ、そうかぁー。
……Yサン、こっち(東京)で浮気とかしないの？」


「俺は、しないよ(笑)
身嗜みとしては持ってるけどね」


そう云って、Yサンが財布を開いた。
中に、コンドームがひとつ。



私が、コンドームを初めて見た瞬間♪



そもそも、昔の不良は大概は硬派。

況してや、Yサンの心根の優しさは、仕事で散々一緒に徹夜をしてきたから、とてもよ～～く知っている。

浮気とか、する男じゃない。







そうかぁ。男のたしなみ、か。







偉く、カッコよく見えた。































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