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成程話:オーナーシップのある人

2016年08月25日 23:54

富士フイルムホールディングス会長、古森重隆氏の心に響く言葉


20代の若手社員のころ、忘れられない経験がある。
印刷材料の営業担当だったときのことだ。
当時は当社にも品質競争力の低い製品があり、市場で競合に売り負けていた。
ある大手の印刷会社に営業活動に行ったとき、その会社の技術系の常務から、
「君の会社の印刷用製版フィルムは性能がよくない。だからうちはコダックを使っているんだ」とさんざんに批判されたことがあった。
当然、商談は成立しなかった。
そのとき私は思った。
開発部門や生産部門がよい製品を作ってくれないことには、営業マンは勝負のしようがない。これではコダックに負けても仕方がない」と。
そんなある日、当時の平田九州男(くすお)社長と話が出来る機会が訪れた。
社長とある会合で同席することになったとき、若輩にもかかわらず私は、平田社長に訴えた。
「我が部の製品コダックに比べて明らかに劣っています。なかなか勝てません。研究所や工場の人間に、もっと製品品質を上げるように社長から言っていただけませんか」
すると社長は、「わかった。それは研究所や工場の人間に言っておこう」と答えたあと、こうつけ加えた。
「ただ、君はそのために何をしたのかね?」
ハッとさせられるひと言だった。
社長の問いに対して、私は何も答えることが出来なかった。
私は、自分の立場で何が出来るのか突き詰める前に、「製品が悪い」「研究所や工場の人間が悪い」と、人のせいにしていたからだ。
そんな私の姿勢を、ずばりと突いたひと言だった。
私はこのとき、オーナーシップとは何かが、本当の意味でわかった。
製品が売れないときに、「工場が悪い」「品質が悪い」と文句を言うのは簡単だ。
しかし文句を言ったところで、状況は何も変わらない。
それなら状況を変えるべく、自ら動けばいいのだ。
誰が悪いのではなく、自分がそれを解決する努力をしないのが悪いのだ。
お客さまが会社の製品のどこに不満を抱いているのかをいちばん知っているのは、現場で働いている営業マンである。
そこで営業マンは、研究所や工場技術者に営業現場の状況をしっかりと伝え、
「私もお客さまからニーズを聞き出してくるから、ぜひお客さまに満足していただける製品を一緒に作っていこう」と、彼らに訴えかけることが大事になる。
また技術者にも営業の現場に同行してもらい、お客さまの声を直に聞いてもらう機会を作ることも重要だろう。
先程の印刷会社の技術常務のところに、すぐ技術者を連れていった。
常務からこてんぱんに批判された技術者は、人材を集め、それから改良に本腰を入れるようになった。
出来ることは、たくさんあるはずなのだ。
つまり製品が売れなかったのは、「製品が悪い」からだけでも「研究所や工場の人間が悪い」からだけでもなかった。
自分の立場で出来ることを考え抜けば、私自身にやるべきことがあったのだ。
社長のひと言で、私はそのことに気づいたのである。

『君は、どう生きるのか 心の持ち方で人生は変えられる』三笠書房


工場の文句ばかり言っている営業の責任者工場責任者にしたところ、今度は営業の文句を言い始めた、という話がある。
工場で作る製品品質が悪いから売れないのだ、と営業はいう。
営業がちゃんと売ってこないから売上が上がらないのだ、と工場はいう。
人のせいにする人間は、立場が入れ替わったとしても、またそこで人のせいにする。
オーナーシップとは、与えられた仕事を、「我がこと」、「自分の問題」と捉える当事者意識のことをいう。
オーナーシップがある人は、人のせいにはしない。
それぞれの自分の立場で、人のせいにせず、今できることをベストを尽くしとことんやる…
オーナーシップのある人になりたい。

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