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生の最中:〈なま〉の〈もなか〉は〈せい〉の〈さなか〉・・

2016年08月01日 00:23

生の最中:〈なま〉の〈もなか〉は〈せい〉の〈さなか〉・・

生の最中

頂き物があった。〈最中〉だった。
・・・きっと、大切な取引先が饅頭屋だったのだろう・・・。
それはそれでいい。冷菓でなくたって、いただけるだけでありがたいことだ。
それは横においておいて、
〈最中〉で思い出したことがあり、その事がこの数日ずっと頭の中にあったので、
ここで喋ってしまおうと思う。


大学時代、後輩がやってきて言った。
「先輩、小説を書いたので読んでください!」
・・・タイトルには、〔生の最中〕・・・とある。
「なまの、もなか・・・美味しそうなタイトルだね。食文化の何かがテーマなの?」
「違いますよ、先輩! これは、せい(生)のさなか(最中)って読むんです!
一生懸命に生きている男の物語なんです!」
・・・生(せい)の最中(さなか)、か・・・。

生(せい)の最中(さなか)・・・。 副題をつけたらよくわかるのにね。
〔生の最中・・・トライアスロンに挑んだ70才の男の物語〕とか、
〔生の最中・・・女で一人、育てた子供は5人、その半生〕とか・・・。
〔生の最中・・・グランドにかける9人の青春〕とか・・・。

そこで思った。
〔生の最中〕があるのなら、〔恋の最中(さなか)〕は、いったいどんな感じだろう・・・。
〔恋の最中〕は恋の真っ最中ということなのだから・・・
副題をつけるとしたら、

〔恋の最中・・・見つめ合う二人〕とか、
〔恋の最中・・・離れられない二人〕とか、
〔恋の最中・・・今日も**でランデブー〕とか、

ならば、〔愛の最中(さなか)〕はどうだろう・・・。

〔愛の最中・・・白いシーツのしわ 第1話〕とか、
〔愛の最中・・・絶頂の喘ぎ 終わりのないピストン〕とか・・・。
これじゃあ、エロビデオか。
じゃあ、
〔愛の最中・・・永遠の契り〕とか・・・・。

とまれ。
話は最中(もなか)から始めた。饅頭の話だ。

生(なま)の最中(もなか)があるのなら、
〈恋の最中〉という最中(もなか)があってよさそうだ。
表の皮はきれいな薄い桃色。
中の餡は桜色。甘さが先にくるけど、後から少しだけ酸味がきいてくる。
香りは、満開の桜の木の下にたたずみ、深呼吸をした時のような香りだ。

最中は「もなか」にも「さなか」にも「さいちゅう」にも読めるから、
お客様の多様な価値観に応えられて客層は広がり、売れるかもしれない。!

ならば、〈愛の最中(もなか)〉だってあっていい。
表の皮の色は、濃い桃色。
そして、中の餡は紅色。めちゃくちゃ甘い。無条件で甘い。
でも、品のある、しとやかな甘さだ。


 饅頭屋では、化粧箱に八角形の箱を用意した。
 真ん中に〈生の最中〉をひとつ。
 そのまわり、〈恋の最中〉と〈愛の最中〉を三個づつ互い違いに並べてある。
 箱の中の最中は、全部で七個。
 それぞれ、生、恋、愛、という文字が浮き出ている。

 おっ! ふたに何かくっついている。
 「おじさん、この小さな袋はなんですか?」
 「これかい、これは、おみくじさ。恋占いのね」
 「なーるほど。恋を待ち望んでいる人にはいいですね。
 それに、恋は成就していても、不安はつきまとうかもしれないしね」
 「みんな、大吉だよ。ハッピーハッピー・・・」
 と、店のおやじさんは、細い目をさらにほそくして、ククククククと微笑んだ。

 あっ、こっちの箱にもなんか入っている。
 「おじさん、これも、おまけ?」
 「ああ、これは、コンドームさ。しかも特別のね」
 「エエェエエエエエ! コ、コンドーム? のおまけ? 饅頭なのに!?」

 「恋も愛も重なりあうから、愛する二人には性愛も大切だろ、ねえ、だんな。
 思う存分に愛しあってもらうための、これはさ、特別のコンドーム
 「と、とくべつって・・・?」

 「摩擦を加えると温かくなるジェルを、たーっぷり塗ってあるんだ。
 これを使えば、だんなの彼女あそこは、ポッカポカ。・・・いつもよりイキやすくなりますぜ!」

 「お、男のほうは・・・?」
 「もちろん、だんなのアレだって、ポッカポカ。カチカチのビンビンだ! 
 だけどね、だんな。あんたが先にイッちゃあいけないよ。
 彼女が最低でも5回はイってからでっせ、だんながイクのは」
 「まあ、それは、いつものことだけど・・」
 「その慢心がいけないね。それに、本当の恋なら、そんな冷静でいられるのかい、だんな?」

 「おじさん、冷静とかその反対の興奮とか、そういう物差しだけじゃあ人の深さは量れないな。
 愛情だよ。彼女への愛情がさ、自分の満足を後回しにさせるのさ。
 彼女の満足無くして、自分の満足は有り得ないことだからね」
 「おお、だんなの中じゃあ、愛情性愛恋心とが三つ編みのようになっているんだね」
 店のおやじは、またククククククと微笑んだ。

 「だんな、いいかい、説明しておくよ。
 このホットジェルはね、アソコアソコがにゅるにゅるになって、もう何回いたしても、
 いつも二人を絶頂に導いてくれるんだ。気持ちいいですぜ!」
 「お、おじさん・・・、おじさんは、ま、饅頭屋で、ここは、饅頭屋ですよね?」
 「おっと、そうだった、少し言いすぎたかな」

 薄桃色の化粧箱。
 そこに敷かれた濃い桃色の和紙が、箱から四方にはみ出している。
 その真ん中に〈生の最中〉がひとつ。
 その周りに薄桃色の〈恋の最中〉と濃桃色の〈愛の最中〉が互い違いに並んでいる。
 きれいだった。
 生きることも、恋をすることも、愛を奏でることも、
 この最中が手助けしてくれて、人生を豊かにしてくれそうな気がした。

 「それじゃあ、おじさん、こっちの方、ひとつください。いくらですか?」
 「一万円」
 「ええ? たった七個入りなのに一万円? おじさん、ボッている?」
 「本当に欲しているお客様にしか、必要はないからね・・・」
 店のおやじは、またククククククと微笑んだ。

 「だんな、これをラブホテル彼女と一緒に味わいながら、
 このコンドームで交わろうって魂胆ですかい?」
 「・・・・魂胆っていうのは下種だな。そうじゃあないですよ.。
 それにそのコンドームが欲しいわけじゃあないです。
 ただ、おみくじよりは実用的なだけですよ」
 「まあ、言い方はいろいろあるから、いいんですがね」

 「気に入ったのは、真ん中に生きるという文字があり、
 それを恋と愛という文字で囲んでいるところです。生きることは、つまり、
 恋と愛の中にあるっていう、それはとてもロマンチックなことだと思うんです」

 「だんなは、けっこう慣れているようにみえて、本当は不器用なんですかい?
 それとも、けっこう純粋なんですかね?」
 「真摯でいたいだけですよ」
 「まっ、いいや。・・・それよりも、だんな、
 恋は成就しちゃいけないって、それは恋愛論の定石じゃあないんですか?
 成就する手前にいつもいることが、人生をウキウキイキイキとさせるって・・・、
 だんなの年なら、もうわかっていらっしゃるだろうに・・・」

 「いろんな人がいろいろな本に書いているけど、恋をするのは本人だからね。
 恋は十人十色、千差万別でいいんじゃあないですか?
 思うに、
 生きているっていうことは、苦しい悲しいことも、そりゃあるけど、
 恋をする心は全てのハードルを越えさせてくれますからね。
 そして、生きる〈生〉は、愛しあう〈性〉を含んでいる。
 だから、この化粧箱の〈生の最中〉は〈性の最中〉でもあるし、もちろん同時に〈生の最中〉でもある。
 〈恋の最中〉と〈愛の最中〉に囲まれた生と性の最中・・・素晴らしいよ、おじさん!」

 「ふーん・・・。じゃあ、どこまでも恋を求めるんだね、だんなは」
 「うん」
 「あっ、そうだ、だんな。
 最初に真ん中を食べちゃあいけませんぜ。
 真ん中は最後に・・・」
 「うん、わかってる」

 店のおやじは、ニコニコしながら紙幣レジにおさめた。


頭の中にあることをこうやって文字にしたら、
今しばらくは、最中が並んでいる店先で、
生(なま)の最中(もなか)なのか、生(せい)の最中(さなか)なのか、
頭の中がぐるぐる回りそうな・・・、
今日は真夏の一日でした。

このウラログへのコメント

  • Good Luck 2016年08月09日 23:09

    コメありがとうございます
    その淡い桜色のハート型の中は
    透き通った甘い桃色のゼリーにサクランボとレモンの皮。
    貴女と二人で一口ずつ食べて
    最後はキッス!
    いかがですか風優香さん
    絡める舌も甘い恋の味

  • 琴乃♪ 2016年09月01日 17:02

    なまのさなか…





    ウラっぽぃ(*´艸`)

  • eri 2016年10月17日 22:43

    「愛の最中」はね、後味に苦みが残るオトナの味だと思うよ

  • Good Luck 2016年10月19日 21:46

    > 琴乃♪さん
    こめんとありがとう
    スキンをつけない〔なま〕は幸せの最中ですね
    愛しあう二人が子供を欲しがっているわけだから。
    そういう時が少しでもあったのなら、それでよしとしたいですね
    感謝です。

  • Good Luck 2016年10月19日 21:49

    > eriさん
    コメントありがとう。
    う~ん、苦みが残る・・
    甘いまま死にたいね。

    だから恋は食べちゃあダメ!
    成就したらダメ!

    なーんて思いながら、一方で煩悩はまっしぐらかも、ですね。

  • masago 2016年11月12日 22:08

    お返し訪問参りました

    確かに、真夏に最中は・・・
    今くらいの季節なら熱い日本茶と一緒に美味しく頂けます

  • Good Luck 2016年11月12日 23:43

    > masagoさん
    ありがとうございます
    人生の最中にあって、その時々に相応しい出会いと味わいがあるのでしょうね
    それを味わえるか否かは自由闊達な心にかかっていると思います
    心も季節も廻りますね。

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