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成程話:第一級の政治家

2013年07月25日 23:39

加瀬俊一氏の心に響く言葉より

純真に皇室を崇敬していた吉田茂は、戦後伊勢神宮を参拝した最初の首相であり、引退後には神宮皇學館を再興して現にその総長になっている。
又、駐英大使の頃は日英関係は険悪だったのに、結構ロンドンの生活を楽しんでいた。
英国の貴族雰囲気が肌に合ったからだろう。
洋服はヘンリープール製に限り、帽子はもとより、手袋から靴下まで好みがやかましい。
眼鏡をかけロールスロイスに乗る。
ところが、英国の代表的スポーツであるゴルフはやらぬ。
短気なせいもあろうが、猫も杓子もゴルフに熱中すると、そこが生来の天の邪鬼だから「棒ちぎれを振り回して何が面白い」とうそぶく。
短気だから、碁・将棋カルタも嗜まない。
寺内元帥に「どうじゃ、総理大臣秘書官をやらんか」と勧誘され「総理大臣なら勤まるかも知れませんが、秘書官はとても勤まりません」と断ったことがある。
全く怖いもの知らずである。
秘書官は勤勉でなくてはならぬ。
吉田さんには向かぬ。
吉田さんは良い意味での怠け者である。
だから、週末には必ず遊んだ。
遊ぶのではなくて思索したのだが、遊ぶふりをしていた。
これも英国流なのである。
不世出の外交官といわれたタレイランの金言パ・トロ・ド・ゼール(ムキになるな)を好んで引用する。
つまり、宰相たるものは些事(さじ)に超然として、常に余裕綽々(しゃくしゃく)でなくてはならぬ、と戒めるのである。
確か総領事時代のことである。
代議士が来訪したが、会いたくないので居留守を使った。
ところが運悪く、その直後にパッタリと廊下で顔を合わせてしまった。
代議士が「けしからんではないか」と憤慨して食ってかかると、吉田さんは平然として「総領事は不在だ。本人がいないと言っているのだから、これ程確かなことはあるまい」と答えた。
人を食った話である。
人を食うといえば、先頃ある訪客が「閣下はいつも御血色がよろしいが、何を召しあがるのですか」とうやうやしくたずねたところ、吉田さんは言下に「人を食ってるからですよ」と答えた。
彼にはこういう機知(ウィット)がある。
同じような逸話は多数あるが、横紙破りで痛快なので、大衆の共感を呼ぶのである。
実は、吉田茂貴族的趣味を裏返すと、意外にも庶民的気質がひそんでいる。
落語が好きである。
テレビ捕物帖を見る。
ターザン映画なら決して飽きない。
庶民的な一面があればこそだろう。
由来、大衆は本能的に真贋(しんがん)を見分けるものである。
吉田茂は純金である。
鍍金(めっき)ではない。
特に、愛国情熱は純の純なるものである。
この愛国の信念と、千万人といえどもわれ征かん、という不屈の勇気は大衆に強く訴えるものがある。
吉田茂が「尊敬する政治家」のアンケートにおいて第一位を占めるのは偶然ではない。

『「男の生き方」四〇選 上』“城山三郎編”文藝春秋


吉田茂敗戦国日本の首相として五次にわたって内閣組閣憲法改正農地改革を実施。
昭和26年9月サンフランシスコ講和会議に首席全権委員として出席し、講和条約日米安保条約を締結。
昭和日本を代表する第一級の政治家。終戦の年、敗戦必至の形勢を説いた内奏文が憲兵に押収され、投獄の憂目をみた。
(以上、同書より)

一国の宰相に限らず、リーダーは大事件や難問に対しては余裕を持って対しなければ判断を誤る。
つまり「ムキになってはいけない」ということ。
ましてや、危急存亡の時に現場で必死に戦っている人達を労いこそすれ、怒鳴り散らしたり、滅茶苦茶な指示を出して混乱させるなら、最低の指揮官といわざるをえない。
切羽詰った場面であればある程ユーモアや、人を食ったようなふてぶてしさが必要。
それが、余裕につながり、冷静な大人の対応となる。
同時に、第一級の政治家愛国の信念と不屈の勇気を持っている

このウラログへのコメント

  • azamino 2013年07月26日 02:51

    城山三郎の文でしたか懐かしい
    何年も前に読み感動
    切羽詰まった場面で怒鳴り散らした元首相
    除名かな

  • なな♪ 2013年07月26日 09:44

    azaminoさん:ですねトップはどっしり構えてないと

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