ヘルス嬢

俺には子種が無いと思っていた。
結婚して５年間子供が出来なかった。
３０歳過ぎてできなかったら、そういう人生だ
と思う事にしようと嫁さんとも話していた。

ところが、３０歳に二人ともなった途端に
俺たち夫婦に子供が出来た。


店でその事をルミに話した。
来るなと言われていた店だが
その事だけは早く言わないといけない
気がしていた。

ルミは一瞬えっという顔をしたが
直ぐ俺をシャワーに入れた。

シャワーを浴びながら、ルミは
「よかったじゃんか、ハル君も
お父さんか．．．」
と笑顔で俺の身体を撫でていた。

その後は無言になってしまった。

シャワーを浴び、二人でベッドに座った。
俺は沈黙に耐え切れず、ごめんと言った。

ルミは聞こえないふりなのか、俺の飲み物を
用意している手を休めない。

暫く沈黙してしまった。

ジュースを俺に手渡しながら、じっと俺の顔を
見てルミはこう切り出した。
「ハル君、もう店も部屋も来ちゃだめだよ。」

なんで？俺は逢いたいよ！と言うと、

「いいから。来ちゃ駄目！」と俺を睨みつけた。

寂しいじゃんか、そんな言い方、と俺。
ルミは
「アタシの時には出来なかったのにね。
生だったのに。本妻の強みか？」
と言った後
「ハル君のこと本気になりそうだったけど
ギリギリセーフ！」
と大袈裟にはしゃいだ。
はしゃいだ後、泣いた。
俺も泣いた。
泣いて抱き合って、料金分の時間は終わった。

２週間後、約束を破ってルミに逢いに行くと
ルミは在籍していなかった。
２週間前に止めたとの事。
店長は、止める理由が判らない程好待遇だったのに
と不満気だった。

マンションも引っ越した後だった。

それから、ルミには１度も逢っていない。