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【愛してる。愛してた。】

2006年08月04日 13:01

 「ねぇ……類、今日は学校に行くんでしょ?そ

うやって呑気にしてていいの?」

 部屋の片隅で下着を着けながら、Barの常連

客のナナが話かけてきた。

 「そろそろ用意する…」

 裸のままでベッドにうつ伏せになっていたオレ

は、服を着ようと起き上がってベッドに腰掛た。


するとオレの背後からナナがベッドに飛び乗り、

背中へと張り付いてきた。

 「…………どした?」

 「ふふ……類の背中って、いつも冷たくって気

持ちいいんだもん」

 ナナはそう言いながらオレの胸元へと両手を回

し、頬を背中に摺り寄せた。真っ黒の長い髪が

邪魔な様子で、頭を回すように首を振っている。

すると彼女がいつも付けているローズ香水

香りが、オレの周りに漂ってきた。

 「ねぇ、ホントに学園祭について行ってもいい

の?昨日カオリも行くって言い張ってたわよ。一

度でいいから、キャンパスに足を踏み入れて大学

生気分を味わいたいって…」

 「学校までならかまわないよ。ただし、中に入

ったら同行できないぜ。…それでもいいのか?」

 オレがソファーに掛けておいた服を着ながら言

うと、ナナはオレの背中から離れ、飛び跳ねるよ

うにベッドを降りた。そしてオレの正面へと笑顔

で歩み寄って来た。

 「大丈夫!学校の中からは、カオリと2人で回る

からっ!・・それよりも類、今日は早くお店に顔出

してよ!!」

 ナナはそう言って、心配そうにオレの顔を覗き

込む。オレが「………努力するよ。」と答える

と、ナナは「あーっ、酷い言い方ぁ!!」と、甘

い声でオレを笑って批難した。

 そしてオレが服を着終えて上着のボタンに手を

かけていると、ナナはオレの首に両手を回した。

 「ねぇ……キスして」

 「ん」

 オレは短く返事して、顔だけを動かし、ナナに

キスしようと唇を近づけた。彼女と唇が触れそう

になった瞬間、オレは思わず動きを止めた。

------------- 愛してる……これからもずっ

と……愛してるから……。

 突然、頭の中にさくらの声が蘇ってきた。

 「……類?……どうしたの?」

 ナナが不思議そうな顔をして、オレを見てい

る。オレは無理矢理、笑顔を作って首を振り、ナ

ナの唇にキスをした。

---------彼女とのことは全て忘れることにしたん

だ。思い出さない方がいい。

 目を閉じオレとのキスに集中するナナの顔を見

つめながら、オレは自分に言い聞かせた。オレが

ゆっくりと唇を離すと、ナナは首にあった手をオ

レの頬へと移動させた。

 「私ね、類のことではカオルにはもちろん……

誰にも負けたくないの…」

 ナナの指は次第に、オレの唇へと近づいていっ

た。

 「好きよ、類。」

 そう言ってオレから手を離すと、ナナは窓際に

歩いて行き、カーテンを開けた。朝陽がすっと射

し込み部屋の中が突然明るくなる。オレはベッド

から立ち上がってナナに背を向け、思わず呟い

た。

 「…本気で好きなら『好き』だなんてこと、そ

う易々とは言えないもんだぜ?」

 「………ねぇ、何か言った?」

 ナナがこちらを振り返る。

 「何でもないよ。独り言。」と言いながら、オ

レは笑ってごまかした。



 やっとのことで身支度が終わり、出かけようと

ナナと一緒に部屋を出た。一階まで下り、店前に


出ると、そこには膨れっ面のカオリが立ってい

た。

 「遅い!!いつまで待たせる気よ!まった

く!!」

 カオリはオレの部屋からオレとナナが一緒に出

て来たことが、気に入らなかったらしい。急いで

いたせいもあって、オレはカオリを宥める暇もな

く、二人を連れて学校へと向かった。




 

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