ピクシー

名古屋グランパスと横浜Ｍの某試合にて


　後半４０分、サイドラインを割り、足元に転がったボールを、ストイコビッチ監督がけり返すと、ボールはきれいな弧を描いて、ワンバウンドで横浜Ｍゴールに吸い込まれた。スタンドからは、見事に決まった４０メートル弾に、大きな拍手が沸き起こり、ピクシー監督も両手を振って、歓声に応えた。

　この行為が異議と取られ、就任以来初の退席処分が下った。「選手に、こうやってスコアするんだとデモンストレーションをしただけ。ただ、審判が厳格でジョークが通じなかった」とピクシー監督は苦笑した。

　「誰かに不快な思いをさせてしまったのなら本意ではないが、みんな喜んでくれていた」。ゴール前の混戦で倒れた選手の治療のため、ＧＫが大きくけり出して生まれた一瞬の空白でのエンターテインメント。この試合で１番沸いた場面だった。“ゴール”を決められた横浜ＭのＧＫ榎本が、「怒りを通り越して感心した。革靴で、でしょう」と驚いていたくらいだ。

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