くろ助と事務長の話。②

くろ助:好きに悩む三十路。よく流されるタイプ。

事務長:９月いっぱいで退職する。前回くろ助に告白してきたダークホース……使い方合ってるのかな。

木村:お隣部署の仕事真面目マン。話が難しくて時々ついていけない。んで「聞いてないでしょ？」ってつつかれる。最近くろ助を雑に扱ってると思う。出会った頃は向こうがびくびくしてたのにな。今回はくろ助の相談役。




『ラブレターの話』

９月２５日。
日直の日から…事務長に告白されたあの日から約２週間が経過した。

あれから事務長からのアクションは何もない。

(やっぱり冗談だったのかな…)

辞めちゃう前のどっきり的な…あーくろ助騙されたわー。

今日も元気に居残りしよう。なんか仕事が終わらないし。
隣には木村さんが同じ様に仕事してる。会議録とか作ってるとき木村さんがいると分からないところとか教えてくれるからいると安心する。

くろ助「木村さん、前の会議なんだけど、他重要なこと検討したっけ？」

木村「んー？いや、ちゃんと書いてあるし大丈夫だよ。くろ助さんって基本言われたこと全部書くよね」

くろ助「すみませんね、見易いように纏めれなくて」

木村「違うよ、細かい方が振り返るとき便利でしょ」

きっと違う。もっと文章力あれば、言葉を知っていればかっこよく書けるのにな。

木村さんは別にかっこよさとかなくていいよ。下手に言葉纏めると違う意味合いになることあるでしょ？って言ってくれるけども……んー！頭良くなれ！

くろ助「よし、これで今日の会議録終わり！コピーしよ」

木村「事務所行くよね？ついでにシュレッダーかけてきてよ」

くろ助「立ってるなら親でも使え精神だ。はいはい、いってきますよ」

木村さんは基本書類は破って捨てない。くろ助は個人名とか入ってなかったら破ってゴミ箱なんだけどな…神経質なのかな？

くろ助「失礼しまーす。コピー借りました。ついでにシュレッダーも借ります」

くろ助の部署と木村さんの部署、厨房は基本事務所のコピー機と繋がっているのでここまで来なければならない。

(あ、誰もいないや。間違えて会議録挟むといけないから先にシュレッダーやろ)

コピー機に先程印刷した紙がちらつくがシュレッダーを優先する。電源ボタンを押すと警告の赤ランプがついていた。

(紙クズがいっぱいなのかな？でも表示は違うし…)

そんな所に事務員が現れた。

事務長「くろ助さん、これ」

これ、というのは事務長が持っている封筒で。咄嗟に受け取ってしまった。

くろ助「あ、はい」

事務長「開けてみて？」

くろ助「え？今ですか？」

事務長「違う違う。シュレッダーだよ。よくこのランプ点くんだ」

くろ助「あぁ…びっくりした」

事務長「俺もびっくりした。後で読んで」

そういって事務長室に戻って行った。
シュレッダーは無事に運転してくれた。

ポケットにしまった手紙の違和感に思わず手で触れる。

(何が書いてあるんだろ…)

日直の日は驚かせてごめん。
ちょっと最後にからかってみたくて。
くろ助さんの困った顔が面白かったよ。


なーんてね。


想像しながら部署に戻る。

木村「おかえり」

くろ助「ただいま。ちゃんとシュレッダーかけてきたよ」

木村「ありがとう。ところで会議録は？」


くろ助「あ………忘れてきた」








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なんとか仕事を終えて駐車場までの帰り道。木村さんと二人で歩く。

くろ助「事務長から手紙貰った」

木村「え？いつ？！」

くろ助「会議録のコピー取りに行くとき」

木村「なんて？」

くろ助「まだ読んでないけど多分ラブレターじゃない？」

木村「そう…どうするの？付き合うの？」

テンションの低い木村さん。ヤキモチやくんだよなぁ。妻子持ちとか彼女いる人には何も心配しないくせに、こういう所ですぐ拗ねる。

くろ助「さぁねー。でも付き合う想像は出来ないんだよね」

事務長とくろ助とか凸凹してる感じがする。よく話するけど約２０歳離れてるから話の内容も時々分からない時がある……そしたら事務長は楽しいと思うのだろうか。

(……うーん…ないよね、ない)




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家でこっそり読んだ手紙の内容は本当に真面目なことが書いてあって。
くろ助のことを全部好きと言ってくれた意味や、いつから好きだったとか…少し涙ぐんでしまった。元々涙脆いんだけどね。

………誠意は誠意で返したい。

棚から便箋を取り出して早速返事を書こうとするけど、言葉が浮かばない。

ログだったら簡単に書けるのにな。


「……難しい…」


事務長の退職まであと４日。

伝えたい言葉が見つかるかな…。





えんど。

ねくすと→『好きの話』




おまけ。

翌日

木村「返事書いたの？」

くろ助「まだ…なんか何をどう伝えればいいのか分からなくて。でも返事早めにした方がいいよね。待たせるのって悪いと思うし早く渡したいんだけど」

木村「それはやめた方がいいと思うよ。渡すなら最後にしな」

くろ助「え、なんで？」

木村「だって、まだ３日あるから事務長が返事書いちゃうかもしれないでしょ」

くろ助「……木村さんの考え方にびっくりだわぁ」

斜め上の発言に驚くくろ助でした。