くろ助と気になるあの人の話。⑦の前。

やぎ「そういえば、新年会送ってこうか？やぎ半日だし行きも帰りも出来るよ？」

そう、年が明けて１３日、金曜日。
くろ助の職場の新年会が行われる。

くろ助「あ、大丈夫。木村さんが送ってくれ」

やぎ「あのさ、木村さんって何ポジション狙ってんの？」

くろ助「……運転手かな？冗談だよ。お父さんにやってもらいます」


やぎ「………ならいいけど」




ねぇねぇ、くろ助をどんな気持ちで見てるの？






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１３日、金曜日。

１２：００

木村「くろ助さん、今日早番だよね。家帰ってどうせ風呂入るんでしょ？」

よくお分かりで。
昼の休憩時間でタイミングよく鉢合わせた木村さんから当たり前のように話し掛けてきた。

くろ助「まあ、そうだけど。あの、ほらいつも木村さんを運転手みたいに扱ってるし…今日はお父さんに頼もうかなって」

木村「いいよ。好きに使って？自分のやりたいようにやってるだけだし…少しでもくろ助さんと居たいから」

くろ助「あっそう」

…恥ずかしいやつ。
目が合わせられないし。床を見つめたままあしらうように返事をした。






無自覚だから、タチ悪い！

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１７：００


くろ助「お疲れ様ー」

いそいそと着替えて寒空に息を吐きながら車へと乗り込む。

(…本当に迎えにくるのかな…)

上がりの時に木村さんとは目も合わせなかった。言葉の１つもかけてない。

(まあ、どっちでもいいや。兎に角風呂入らなきゃ新年会行けない)

自分に言い聞かせては一人頷いてみる。
実家に寄り、父親に送り迎えを頼んでお風呂に入ってと身支度をしているとスマホが鳴った。

【近くのコンビニに居るから準備出来たら呼んで】

まじか。

慌てて服を着替えて父親に断りの声をかけた。
返信してから外に出て待っていると木村さんがきた。

くろ助「お願いします」

何度も乗った助手席。
流れるように渡されるひざ掛け。

(……本当、木村さんって出来た子だよね)

木村「あ、ウコン買っときました」

(まじで出来た子なんだけど)

くろ助「木村さんってくろ助の心でも読めるの？」

木村「くろ助さんいつも飲んでるし…いるかなぁって思った」



ポジションは舎弟かな？



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２１：００


くろ助「あーもー…眠い」

木村「だから寝ててもいいよ？東名乗って帰るんでそんな長くは寝れないかもだけど」

２時間ぴったり終わった新年会の帰り。
お酒を飲んだくろ助は半分夢の中で。
ふわふわした気分に瞼が段々下がっていく。

(……ちょっと寝よ…)





くろ助が寝てる間にいつも行くホテルの近くまで来ていて。

(…んん…やば、寝た)

木村「うわ、起きた。今からコンビニ寄るけど行く？」

くろ助「ううん、お留守番する。いってらっしゃい」

ひらひらと手を振って見送る。
購入してきたのはいつもの買う茹で玉子と期間限定や王道のメーカーのお酒。

くろ助「ん…たまご…で、ナウシカ見る。きっとまだ後半間に合う」

半分何喋ってるか分からないくらい呂律が回ってないのは元々なので木村さんは気にしてない。






ちゃんと今でもくろ助にドキドキしてくれるのかなぁ。



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２２：００


木村さんがお風呂に入ってる間にナウシカを観賞するくろ助。
ラブホのテレビは大きくて好き。
ただ、ラブホのはチャンネルが多くて機械音痴なくろ助はリモコンとの相性がとても悪い。

(下手に触るとＡＶ流れちゃうんだよね…)

前に経験済みだったりする。

くろ助「いつ見てもジブリは名作だよなぁ…」

エンドロールを見ながら沁々思っていると部屋に木村さんがシャツとパンツのラフな格好で帰って来た。寒そう。

木村「あ、ナウシカ終わってる…」

くろ助「残念だったね」

木村「自分ジブリを最後まで見たことないんだよね」

くろ助「まじか。勿体ない。名作ぞろいですよ？って話してると遅くなるからとりあえずお風呂行ってきます」

服をもって立ち上がるとすでに木村さんは買ってきたお酒を一人飲み始めていて。

くろ助「……寝ちゃやだからね？」

木村「折角来たんだし寝ないよ、待ってます」




キミはくろ助の卵の殻を剥く役目があるんですよ。




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２４：００


お風呂から上がると木村さんはベッドで寝ていた。

(……寝てる。このまま寝かしとこうかな。でも卵があるしなぁ…)

起こさないように注意を払いながら隣に寝転んで寝顔を観察してみる。最近髪を切ったから余計に男の子みたい。
短くなった髪を撫でてやるとやはり眠りは浅かったのか瞼が動いた。

くろ助「木村さんおはよ」

木村「え。寝た？今何時？」

くろ助「６時かなぁー」

木村「は？！嘘！」

くろ助「うっそー。まだ１２時です」

ニヤニヤしてたら怒られた。
ラブホって時計がないから時間が分からないときあるんだよね。

木村「焦ったぁ」

くろ助「まだまだですなぁ」

木村「もう卵剥いてあげませんよ？」

くろ助「えー…いじわる」



なんだかんだ、くろ助にからかわれてもちゃんと卵を剥いてくれる木村さんは優しい。




やっぱり剥いてもらった卵の方が倍に美味しい気がする。



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裏につづく。