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声が聞こえない・・・その1

2016年09月16日 02:38

暑い日差しの中で夏が今年の残暑はどうしようか?とでも考えているのだろうか?
いくら夏が自分はまだまだとは思っていても8月に入るともうすぐお盆がやってくる
暑さの変わり目が初夏、真夏から残暑へと移り変わろうとしている景色を眺めながら
裕子は走る車の後部座席から雪子との待ち合わせ場所であるいつもの温泉旅館へと向かっていた

裕子は雪子とは毎年の恒例である年に2回の温泉旅行なのだが
というより温泉に宿泊して半年分のストレスを発散すると言った方がしっくりくるかもしれない
なにせ、年に2回の温泉宿泊はいつも決まって同じ温泉なのだから
何かの違いがあるとすれは日帰りお喋り会の喫茶店と宿泊お喋り会の違いくらいだろう

とはいえ、今回の夏の温泉宿泊はいつもと少し違っていた
いや、突き詰めて言えば去年の秋の温泉宿泊から何かが少しずつ変わり始めていたのかもしれない
裕子のメールの相手が昔の恋人である夏樹だと知った時にはまだ何も変わり始めてはいなかったはず
ただ単に、メールの相手が女性だと思っていたらオカマだった・・・もとい昔の恋人だった

その昔の恋人オカマ(夏樹本人は否定しているが)広い意味で女性になっていたくらいで
それ自体は驚きこそすれ、そこで止まっているだけのただの昔の思い出の相手とメル友になった
ただそれだけの出来事だったはず・・・そのメールの相手を雪子に教えるまでは・・・

でも、今年の夏の温泉宿泊はタイミング的に良かったわね
今回の温泉宿泊は雪子がお父さんのお見舞いに行ってから1週間くらいだし
愛奈ちゃんと話をしたのもちょうど1週間前だったからいいタイミングだわ

でも、まさか愛奈ちゃんが雪子を疑っていたなんてね、正直ちょっと驚いたけど
もっと驚いたのは雪子の事を疑い始めたのが中学1年の頃だったって言うんだから
それでもさすがに雪子の娘って言った方がいいのかしら?
その事を誰にも言わないで今までずっと心の中に留めていたなんて
そういうところって何となく雪子に似てるのかもしれないわね

私なんか全然気がつなかったわ・・・
雪子が結婚してからも毎週のように二人で会って色んな会話をしてたっていうのに
それに年に2回の温泉宿泊だって雪子と毎年欠かさなかったっていうのに

しかし愛奈ちゃんが雪子を疑い始めるきっかけになったのがクマのぬいぐるみって言うんだから
何ともまあお粗末っていうのか面白いっていうのか、ふふっそんなところって雪子らしいわね

「でも、どうしてクマのぬいぐるみが疑うきっかけになったの?」

「やっぱりお母さんに好きな人がいるんですね?」

「いる・・・じゃなくて、いた、の方よ」

「いた・・・?過去形・・・ですか?」

「そりゃそうよ、雪子にしても私にしても今の旦那が初めて好きになった相手なわけがないでしょ?」

裕子さんは旦那さんを好きになって結婚したんですか?」

「あら?変な事を訊くのね?」

「あっ・・・すみません」

「ふふっ・・・いいわよ別に謝らなくても・・・」

「あっ・・・はい・・・」

「それに、愛奈ちゃんの言葉もまんざら間違っていないかもしれないしね」

「えっ・・・?」

「愛奈ちゃんもそのうち歳を取れば分かってくると思うけど好きになると結婚するとは違うのよ」

「違う・・・のですか?」

「そうよ、お互いの事が本当に好きで一緒になれる人たちってけっこう少ないと思うわよ」

「はあ・・・」

「そこには、そろそろ誰かと結婚しなきゃみたいな妥協やあきらめとかがあるもんなのよ」

「妥協とあきらめ・・・?でも、あきらめはちょっと違いますよね?」

「そうね、妥協はどこか、まあこの人でもいっか?みたいな世間の流れ的なものがあるんだろうけど」

「それじゃ、あきらめというのは?」

「自分は一生好きな人とは一緒にはなれない、まあ一種の絶望感に似てるのかもしれないわね」

裕子さんはどっちだったんですか?」

「あら?きつい事を訊くのね?」

「あっ・・・すみません」

「ふふっ、いいわよ謝らなくても、愛奈ちゃんはどっちだと思うの?」

「私ですか?妥協の方・・・ですか?」

「う~ん・・・あきらめの方って言って欲しかったんだけどな~」

「えっ・・・あきらめの方だったんですか?」

「ううん・・・私の場合はきっと妥協・・・」

そこまで言うと裕子は少し苦い笑みを浮かべながら遠い記憶を思い出すように視線を閉じると

「・・・だった・・・のかもしれない」・・・と、少し遅れて言葉を続けた

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