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あなたが見えない・・・その20

2016年09月13日 03:52

いつも雪子が通っている喫茶店裕子が愛奈と話をしている頃
直美はどこかの広い駐車場で一人昨日の京子との会話を思い出していた

別に私には関係ないといえば関係のない事なんだけどさ
でもね~そうはいってもまた京子から聞かされるんだろうし・・・夏樹さんの悪口

しかし昨日は正直言って焦ったわ・・・マジで
まさか夏樹さんが雪子さんと抱き合うなんて思ってもみなかったし
ましてや昼間よ昼間、まだ辺りが明るい昼間だっていうのに抱き合っちゃうんだもん
幸いにも京子がそれを目撃しなかったからよかったものの
もし夏樹さんと雪子さんが抱き合ってるところなんて見た日にゃ私はなんて言い訳したらいいのか

でも、京子はどうしてあんなにも夏樹さんに執着するのかしら?

直美は夏樹が雪子と別れて病院の駐車場を後にしたのを確認してから京子に訊いてみた

「やっぱりもう夏樹さんの事は忘れた方がいいと思うわよ?」

「な~に?私があの人を忘れなきゃいけない事情か何かでもあるの?」

「別にそういうわけじゃないけど、京子だっていつまでも夏樹さんの悪口ばかり言っててもしょうがないじゃない?」

「別にそんなに言ってないわよ」

「そうかしら・・・?」

「そりゃまあ~少しは言うかもしれないけどさ」

「夏樹さんとは離婚してもう10年でしょ?」

「そうね・・・まだ10年よね・・」

まだ・・・?

「それにさ、京子には少し酷な事かもしれないけど夏樹さんには夏樹さんの人生だってあるんだし」

「別にあの人の人生なんて私には関係ないし邪魔もしてないでしょ?」

「それじゃ夏樹さんが誰か他の人と付き合ってもいいって事?」

「別に構わないわよそんなの・・・あの人以外だったらだけどね」

「あの人って・・・?もしかして雪子さんの事?」

「そんなの当たり前でしょ・・・?」

「当たり前でしょ?って、どうして雪子さんはダメなの?」

「ダメっていうより・・・だって許せないじゃないそれっていくらなんでもあんまりでしょ?」

「それって雪子さんが夏樹さんの昔の恋人だったからって事?」

「そうじゃないわよ・・・そういう事じゃないのよ」

「それじゃいったいどういう事なの?」

「あの人が雪子さんと付き合ってそして雪子さんと別れてそして私と付き合って私と結婚してそして私と離婚したらまた雪子さんとって、それじゃ私っていったい何んなの?それじゃ私の20年ってまるで雪子さんの身代わりみたいじゃない?」

「そうかしら・・・?」

「でしょ・・・?違う・・・?」

やっぱり夏樹さんの言ってた通りだったわ・・・
さすがにこの時ばかりは私も返す言葉が見つからなかったものね
京子が夏樹さんの事をそんな風に思っている限り夏樹さんが何を言っても無駄だと思うし

夏樹さんはどこまでも京子一人だけを愛しながら生きてきたのに
京子はどこまでも自分は雪子さんには勝てないと思いこんでいるのだから
お互いがお互いを愛したいと願いながら20年という月日を生きてきたはずなのに
夏樹さんの想いも京子の想いも届く事がないまま終わりをむかえてしまうなんてなんか悲しいわよね

でも、どうして夏樹さんは雪子さんを抱きしめたりしたのかしら?
正直、私も驚いたわ、だって雪子さんはまだ人妻なのよ?
それを真昼間から人目も気にしないで堂々と抱き合うなんてちょっと信じられない

直美が京子との会話を思い出している頃、そして裕子が愛奈と話をしている頃
雪子は誰もいない家の中でパソコンが置いてある机に座りながらクマのぬいぐるみに話しかけていた

「クマさんはどう思うでありますか?」

クマのぬいぐるみを机の上に座らせながら会話するのはいつもの雪子の会話の仕方である

「ふーちゃんの家には沢山のぬいぐるみさんたちがいたでありますよ」

「縁側にもお部屋の中にもいろんな所にぬいぐるみさんたちが沢山いたのにいないのであります」

「誰がって・・・?」

雪子はクマのぬいぐるみの両手をつかみながら自分の膝の上に乗せる

「ふーちゃんがいないの・・・あの家にはふーちゃんがいないの・・・」

「私ね、探したの、ふーちゃんを探したの、縁側もお部屋の中も廊下も台所も全部全部探したのに」

「私の事を抱きしめてくれたのは私の知ってるふーちゃんじゃなかった・・・」

「ねえクマさん?私を抱きしめてくれたふーちゃんはいったい誰なの?・・・で、ありますか?」

クマのぬいぐるみを相手に夏樹の前でだけ使う言葉でいつものようにおどけて見せても
その言葉は誰にも届かないまま一文字ずつ消えていく静かな時間の中でぽつりと言葉を落とす

「ふーちゃん・・・あなたが見えない・・・」・・・そうつぶやきながら美雪はクマのぬいぐるみを抱きしめた

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