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素敵話:両陛下から学んだこと

2013年06月07日 22:17

侍従長、渡邉充氏の心に響く言葉より

平成8年12月から平成19年6月までの10年半、私は侍従長として天皇皇后陛下にお仕えしてきました。
侍従長とは皇居の中でのお仕事は勿論のこと、国内の行幸啓や外国ご訪問の際にいつも両陛下のお側にいて、庶務を執り行う。
言うなれば、両陛下に仕える執事秘書役といったところでしょう。
そのような仕事を10年半もの間務めさせて頂いたことは大変有り難いことでありましたし、私の77年の人生の中で最も大切な時間であったと思います。
陛下がお出ましになる大きな行事や式典は休日や祝日に行われることが多いため、5日働いて2日休むという生活のリズムもないのです。
そこまでしてご公務に邁進(まいしん)される陛下根底にあるもの…それは「国民の為に」という思いにほかなりません。
陛下のその思いが1つの形として具現化される場が「宮中祭祀」です。
宮中祭祀とは陛下が国家国民の安寧と繁栄をお祈りになる儀式のこと。
陛下の1年は元旦朝5時半から執り行われる「四方拝」で始まります。
外は真っ暗、しんしんと冷えている中、白い装束を身にまとい、神嘉殿(しんかでん)の前庭に敷かれた畳の上に正座され、伊勢神宮をはじめ四方の神々に拝礼される。
陛下が執り行われる宮中祭祀は年間20回程度ありますが、その中で最も重要とされる祭祀が11月23日の「新嘗祭(にいなめさい)」です。
その年に収穫された農作物海産物を神々にお供えになり、神恩を感謝された後、陛下も自らもお召し上がりになる。
夜6時から8時までと夜11時から深夜1時までの2回、計4時間にわたって執り行われ、その間、陛下はずっと正座で儀式に臨まれます。
我われも陛下がいらっしゃるお部屋の外側で、同じように2時間正座を続けるのですが、これは慣れている人でも難儀なことです。
私は毎年夏を過ぎると正座の練習を始めていました。
ある時、陛下のもとに伺うと、居間で正座をしながらテレビをご覧になっていたことがありました。
やはり陛下も練習をなさっているのかと思ったのですが、後からお聞きしてみると、陛下はこうおっしゃったのです。
「足が痺れるとか痛いと思うことは一種の雑念であって、神様と向き合っている時に雑念が入るのはよくない。澄んだ心で神様にお祈りする為に、普段から正座で過ごしている」
その取り組み方1つとっても、もっぱら肉体的苦痛を避けたいと思っていた私とはまるで次元が違うと感服した瞬間でした。
宮中祭祀の多くは国民の祝日に行われています。
つまり、私達が休んでいる時に陛下国民幸福をお祈りされているのです。
そのことを私達は忘れてはなりません。
私が10年半お仕えしてきた中で、両陛下生き方から数多くのことを学ばせて頂きましたが、特にここでは2つのことを挙げたいと思います。
1つは、決して物事を蔑(ないがし)ろにしたり、いい加減にしたりなさらないということです。
昭和62年、両陛下皇太子皇太子妃の時にアメリカをご訪問されました。
そこで両陛下のお世話をしたアメリカの儀典長が後に出版した自身の回想録の中で、次のように書いています。
「両殿下はレセプションではゆっくりと人々の間を歩かれて、顔を合わせた人と表面的な挨拶ではなく本物の会話をなさっていました。質問をしてはその答えに実際に聞き入っておられ、人々が群れ寄ってくるのにも気がつかれないようでした」
ワシントンホスピスで妃殿下が老人の一人ひとりに示された優しさに心を打たれました。実はこの時だけは仕事中に涙が出て、止めるのに苦労しました」
常に本気で質問をなさり、本気で話を聞いておられる。
もう1つは、非常に勤勉でいらっしゃるということです。
那須の御用邸にご静養に行かれても、必ず近くの農家を見に行くとおっしゃって、農家の人々を激励されています。
どこに行ってもぼんやり休むということは決してありません。
日本国憲法で、天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であると想定されています。この想定と、国民の幸せを常に願っていた天皇の歴史に思いを致し、国と国民のために尽くすことが天皇の務めであると思っています」
これは平成10年天皇誕生日での記者会見の席で、天皇の務めは何かという質問に対して陛下がおっしゃったお言葉です。
その上で「象徴として最も相応しくある為にはどうすればいいかということを日々模索しながら今日までやってきた。私に言えることはそれだけだ」ということもおっしゃっています。
こうして、常に国家国民の真の幸福を願われ、絶え間なく働かれている両陛下のご日常は正に道場だといえるのではないでしょうか。
私はこのような両陛下がいらっしゃることは日本国にとって非常に幸せなことだと思うのです。
そして、私達は両陛下生き方に一歩でも近づくべく、人格を磨き高めていかなければなりません。
そのことを心に据えて、私自身これから残りの人生を全うしていきたいと思っています。

月刊致知 2013年7月号』致知出版社


森信三先生はこう語っている。「休息は睡眠以外には不要…という人間になること。全てはそこから始まるのです」(月刊致知7月号・巻頭の言葉より)

正に両陛下こそ、そんな厳しい生き方を日常片時も忘れずに実戦されている。
そして、自分のことは一切考えず、ただひたすら国や国民の幸せを願っている。
陛下をお手本にし、我々にもできることはある。
それは例えば自分の職業を通じて人の幸せを願うこと。
レストランなら「この料理を食べて、お客様が健康で幸せになりますように」と、願いを込めて料理を作り、運ぶ。
病院なら「患者さんの健康と回復と幸せ」、製造の仕事なら「それを使ってくれた人の幸せ」を。
又、宅急便郵便の配達の方に、感謝の言葉とともに「貴方に幸せが訪れますように」と心で願いを込めて受け取る。
車で走行中、間をあけて車を入れてくれた人に「貴方によきことが雪崩のように起きますように」と願いを込める。
どんな時でも人の幸せを願う人でありたいな

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