考えれば、考えのない

お気楽な旅だったが、
若い頃の旅は...

学食で食費を浮かし、
バイトもしては
いくらかは、
その費用に充てたが、

旅費、遊興費の
大半は、
形を変え名目を変えた
仕送りの転用
親がかりの旅に過ぎなかった.....

そういうのも気にせずに、予定を立て
時刻表を眺め
駅のホームに立つのが
若者の特権...

旅先の市場で、食堂で
そこで生活する人達の
姿を見るにつけ、
後ろめたさを感じた事も
ないではなかったが、

そんな事も帳消しにする
自然の素晴らしさ、
何の気に病む事もない
青春の
身体の軽さ、
足取りの軽さ、
生きている事の

喜びは、
それが親がかりだったとか自分で働いて稼いで来た旅であったとかそういう問題を越えて

いた...

若い時だけに
感じとれる物があり、
若い時だけに
行ける旅がある...

大学で
遊んでいたかも知れない
その蔭に
親だけの知り得る
苦労、せつなさの
あったとは思う

人はすねかじり、
親に対しては
不義理な者...

でしかない
受けたものだけを
受けて、

例えば人が一人前になる
二十歳まで
育てあげるに
かかった費用を
誰が親に返せるか...

その不義理
すまないと思う気持ちが
あれば、
子供を育て
返してゆくことだ

決して
返す事の出来ない
人間存在の
根本的不義理
罪といえば罪
育てるといえば育てる
親の義務...

度忘れしたが
法隆寺の謎を書いた
先生の説...

考えれば、
考えのない青春の
多分それでよかった
決して
返す事の出来ない事の
それでも
返そうとする
その気持ちの...

何の考えもなく、
遊び得たからこそ