レイン

この世に存在するものの中で嫌いなものの一つに傘がある。

断っておくけど、雨はそんなに嫌いじゃない。嫌いなのは傘の方。

まず使う理由が見当たらない。余程の大降りでなければ、必要ないんじゃないかと思う。僕は濡れて困るような高価で繊細な服を着ているわけじゃない。そういう服を着ている人にとっては不可欠なものなんでしょう。あと、濡れて困るような繊細な体質（とりわけ頭髪）の人にとっても必要か。それと風邪気味の人にも必要ですね。濡れてぶり返したらいけません。もっと話を大きくすると酸性雨の問題もあるにはあるか。でも雨の中の硫酸やら硝酸やらは人体に影響を及ぼすほど濃くはないって聞いたことあるし。

じゃあこうする。高価な服を着て、頭髪に悩み始め、風邪気味で、雨の酸性の度合いが人体に害を与えるほど濃くなったら僕は傘をさす。

で、そうじゃない今は傘をささない。というか僕は傘を持っていない。

だいたい持ってなくてもそれほど困った記憶がない。朝、家を出るときに雨が強いときは、すぐ前のコンビニに走って300円のビニール傘を買えば事足りてしまう。雨が上がればビニール傘はどこかに置いてくる（厳密に言うと忘れる）。

そんな僕の姿を見るに見かねてか、過去に傘をプレゼントされたことが何度かある。

で、これは僕の持論だけど、プレゼントされた傘はかなり高い確率で盗まれる。

プレゼントされる傘って、プレゼントの品だけあってそんなに安いものじゃない場合が多い。そういう傘を、例えばどこかのお店に入ったときに傘立てに入れておくと、大抵盗まれる。そんなとき僕は自分の傘が消えた傘立てを見て「そりゃそうだな」と思う。こんな無防備な状況って他にないもの。傘ほど盗まれ易いものってないんじゃないだろうか。よりによってプレゼントにそんなもの選ぶなんて……などと、あろうことかプレゼントしてくれた相手に対して苛立つこともしばしば。

精神衛生上とてもよくない。

だから、「何か欲しいものある？」と聞かれたら、「傘以外なら何でも」と答えることにしている。



The Beatles/Past Mastersvol.2