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濠の泥攫え

2009年01月28日 11:34

濠の泥攫え

散歩の途中濠に沿って自転車を走らせていたら向こうにキャタピラのついた大きな腕をもつ掘削機というかパワーシャベルというようなものが動いていてその長い腕の先についた深さ1mほど横幅2m弱の鉄の箱を水面下に潜らせ手前においでおいでをするような動きで泥を掻き取り直ぐ横の細長い箱だけの船にそれを流し込んでいる。

そこに近づいていくに従ってそういえば10年ほど前にもここで同じようなことをやっていたのを思い出した。 10年ほど前には寒い冬があって水面に厚さ15cmほどの氷が張り、私はまだ小さかった頃の子供達をつれてきてスケートをさせたし元気のいい若い者達は氷上でバイクを走らせてもいた。 今年もそのような氷が張ることを期待したのだがそうはならなかった。 あと20日ほどそのチャンスは無きにしも非ずだが多分今年はもうそういうことはないだろう。

私の興味はいったいこの20mほどの幅の濠がどのくらいの深さなのかということで、そこでちょっと自転車を停めてしばらく眺めていた。 ちょうどそこには小さな雑種の犬を散歩させている老人も眺めていて、10年前のときは春か秋の時期で掬い上げた泥を岸の芝生の上に盛り上げて匂うわ2ヶ月ほどここも生乾きのセメントのようなもので被われて散歩も出来ずひどかったけど、今回はちゃんと箱舟に積んでどこかに持っていくようだという。 なるほど、当時はそういうこともあり、泥臭いものの下水は流れ込んでいず、化学薬品臭もなく自然の泥で、今、5℃前後の気温では泥のにおいも殆どなく、そのときは長靴を履いた男たちが杖のような棒と金属探知機で少々臭う泥の中をあちこちをほじくりかき回して昔のガラクタ捜していたことも思い出した。 掘り当てたいくつが博物館に収蔵されたり骨董オークションハウで取引されたということをあとで聞いたことがあるけれど今回はそのようなことは出来なさそうだ。

この濠は星型に旧市街を取り囲んでいて外敵を防ぐように14、15世紀から掘られたもので16世紀にはスペイン軍からの攻撃を防いだという実績があるくらいだ。 それも昔のことで第二次大戦ドイツに占領されたときにはこの濠など何の役にも立っていない。 今は静かで年に一度この濠の周りを走るマラソン大会で一日に何千人もが息を切らせて走るのだがそれが一番混雑する機会だ。 けれど私の興味は昔、外敵を防ぐ濠として効果があったかどうかで、今、浚渫する機械をみてその深さに興味が行ったのだ。

私がもう40年ほど前に通った高校大阪南部の城下町にあって今はかなり知られた荒っぽい秋祭りの、そのクライマックスにダンジリが沢山宮参りにくる神社が敷地の隣にある。 向かいには濠のある城があってその城も濠も学校の敷地内にあるということを聞いていた。 体育の授業ではよく濠の周りを走らされたものだが、冬の小春日和の時などは緑に濁った濠の水面から突き出た枯れ木に登って日向ぼっこをする亀を眺めたりそれに小石を投げたりしたものだが、あるとき教師が、鬱陶しくなってここに飛び込んでも無駄だぞ、溺れることはないからな、というのを聞いたと誰かがいうのだ。 それまで石垣から1mほどの水面下7,8mぐらいは深さがあるものと思っていたものが緑色に濁っているのに惑わされたのかと驚いた。 それじゃ飛び込んでも溺れるどころか打撲傷かと笑ったのだが、でもそれを知っていれば高い石垣のそびえる向かいの城の端から飛び込めば願いが叶うと馬鹿なこともいいあった。

高さ1mほどのアームの先に付いた鉄の箱が水面下に沈んで行きその上のアームが1m以上水をくぐっている。 だからそこは大体一番深くて3m程でそこを掬っているということなのだろう。 浚渫するのだったら堅い底をさらっても意味はなく、この10年ほどで溜まった泥だけを掬い取るのが目的なのだ。 するとその上に1mほど柔らかく溜まった泥を掬い取るということになって水面から2mほどのところから下に泥の沈積が始まるということなのだろう。 だから垂直に手を伸ばして水に入ったとすると足が泥に触れるころにはまだ上に伸ばした手は水面から出ているということなのだが勿論そのまま立てるわけではないだろう。 そのままズブズブと泥にもぐりこみ泥に絡まれるということになるだろう。 すると16世紀に馬に乗り甲冑に守られたスペイン軍兵士はここをそのままでは渡れないのだからその機能は果たせただろうが厳しい冬が来たときには敵は氷の上を難なく渡って攻めてくるリスクもある。

うちの前の運河は大型の運搬船が行き交いするかなり広いもので運河の中心線あたりは4,5mは充分なほどの深さがありほとんど泥もないと聞いてたが端のほうはそうでもない。 もう15年ほど前にある晩にジョギング姿の一人の男が家のドアを叩いて警察に通報してくれ、車が運河に飛び込んだ、といったのでその通り通報して受話器を置くか置かぬかの間にパトカー救急車クレーン車、フロッグマンが到着、岸に近い所にまだヘッドライトの光の筋が真っ暗な水の中で薄っすらとみえるところに潜ってドライバーか誰かが居ないか捜していたのだが落ちた本人が直ぐ水から上がって一番近い家に飛び込んで電話をしたから一群の車の到着が早かったのだと分ったのだが、フロッグマンも捜索の途中で運転していた男が濡れた体にタオルを巻いて岸に立っているのを知らされたらしく、それから車の屋根の上に立つと膝から上が出た。 シュノーケルをつけたままクレーン車から太いバンドを何本か受けとり再度潜って車体の下をくぐらせまだヘッドライトが付いたままの車を引き上げ、水をあらから流しだしたあとトラックに乗せどこかに去った。 我々野次馬もこの夜の小さなドラマをみて岸の深がこんなもんかと確認してそれぞれ家に戻った。 この一部始終が大体40分ぐらいだっただろうか。

大きい運河の端がこれぐらいだからこの濠は岸から1mぐらい離れたところではどうだろうか。 胸のあたりかそれぐらいだろうと思うけれどあちこちに蘆の茂ったところや水草の群れたところもあるから泥もかなりあるだろうから油断はできない。

夏にはこの環濠を町の細長くて底の浅い遊覧船がオランダの別の街からきた観光客を乗せて自転車スピードよりすこし早いぐらいで過ぎていくのをよく見る。 アムステルダムとは違い、アムステルダムよりは古いまちではあるけれどローカルだから国外の観光客も少なく日本からの団体が細長い遊覧船に乗っているのを見たこともないし、ましてやこの数年、どこへ行っても沢山見かける中国人観光客も見かけない。

今年の春から、買い物帰りに自転車でここをのんびり走るときにそれに平行して進む周遊船の底から何メートルぐらい下のところに濠の底があるかを想像することにしよう。 しかし、だからといってそれがなんだ、といわれても困る。 たんなる好奇心でしかないのだから。

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